逃れられない運命
「アンドリュー様、お友達はどれくらいいらっしゃるのですか」
「いっぱいいるよ」
「好きな女の子はその中にいるのでしょう」
「うーん、女の子の友達はいるけど好きなのはアレイシアだけだから」
「あはは」
「アレイシア嬢は綺麗で優しくて強いですからね、僕でも好きになりそうですよ。はっはっは」
空気読めよーとアレイシアとマクシミリアンはフェリックス第二王子をちらっと見る。
王や后は微笑み、第一王子は『すまないねーアレイシア』という表情。
マクシミリアンはアレイシアに婚約を申し込んだ。
数日後、婚約に合意したアレイシア。
本郷が説得したからだ。
本郷はアレイシアが結婚する前にけじめをつける決意を表明した。
その際アレイシアには『人というものは必ずいつか別れを経験するものだ、このままでは自分も天国(本郷てきには地獄)に行くことが出来ない。うまくすればアレイシアが結婚する前までには悲しむことなく消え去る方法も見つかるかもしれない云々』
と説得した。
最後に本郷がいった言葉。
『マクシミリアンは必ずお嬢を幸せに出来る男だ。そして幸せになってくれ、お嬢。それが俺の望みだ』
その言葉でアレイシアはマクシミリアンと婚約を了承した。
自分は一生独り身でも良かったとも思うアレイシアを決意させたのは本郷の心からの願いと感じたからだった。
何故、急にマクシミリアンがアレイシアに婚約を申し込んだか。
これ以上アレイシアを他の貴族から迫られるのを阻止するのが無理だと判断したからだ。
四六時中アレイシアと共に居られるのは猫のタロスケだけなのだ。
猫になにができるというのか、可愛いだけじゃないかとマクシミリアンは焦った。
最強の武道家にして王や将軍から可愛がられマクシミリアンと言う許婚に近い存在がいたのでアレイシアに手を出すものなど居ないと思われていたのが逆効果であった。
自分以外にはマクシミリアンのライバルは居ないと誰もが思ったのだ。
しかも世の中には無謀で無鉄砲、自分を抑えられない人間がいるのだ。
強いが故に優しいアレイシアはそれでもまだ17歳になるかならないかである。
男女の駆け引きなど知る由もない。
なんど物陰に誘われ告白されたか分からない。
手を出そうとしたものは全てアレイシアにより痛い目にあっている。
これ以上犠牲者を出すわけにも行かない。
何よりマクシミリアンはアレイシアがずっと好きだったので他の男に取られたくない。
世の中何が起こるか分からない。
他国の王子から結婚を迫られるとも限らない。
更にマクシミリアンは正式にアレイシアと婚約しそれを公表し多くの夢見る男子に他の女性に目を向けさせたいとも願う。
このままではアレイシアはほかの令嬢から嫉妬され恨まれるのが目に見えるようだった。
事実、マクシミリアンが懸念するような出来事がある女子学生の身に起こった。
その女子学生はとても可愛い女性。
モテモテである。
その女子学生もチヤホヤする男子学生との関係はまんざらでもないと思ったのだろう、欲を出し男子学生に恋人がいるいないに係わらず粉を掛け多くの女子学生から恨まれた。
被害にあった友人の女子学生から泣きつかれたマクシミリアンとアレイシア(本郷)。
アレイシア(本郷)は女の事は女に任せてほしいとマクシミリアンに言って事態の解決に動いた。
件の女子学生の行動を調べたが別にいかがわしい事はしていない。
直接本人に何故そんなに多くの男子学生とつき合うのか聞いた。
『カッコいい男の子といるのが楽しい』
それだけだった。
彼女も夢追い人であった。
夜、アレイシア(本郷)
はその女子学生を引っ張り出し、舎弟の手引きによりある大人の社交場にコッソリ忍び込む。
女子学生はすっかり夢から覚めた。
以来、彼女へのクレームは途絶えた。
アレイシアが男子学生に粉をかけるとは思わないが誤解が生じる可能性を感じたマクシミリアンの心配は確かにあるのだ。
アレイシアとの約束を守り良い子となったアンドリュー。
今、夢見る男の子がマクシミリアンの前に巨大な壁となって立ちはだかっている。




