歌の世界も色々あります
アイドルとは何であろう。
男女の理想像、永遠の恋人、夢を紡ぐ神または女神。
アイドルは人間ではない。
だからアイドル(偶像)はある年齢に行き着くまでにタレント(能力)を身につけ人の世界に降りていく。
歌に演技に愉快なおしゃべりを磨き上げ人々の共感を得て生き長らえる。
アイドルという、人の一瞬の輝きに魅せられ次々と現れるアイドルと言う夢を追い続ける夢追い人を口さがない者はドルヲタと名付ける。
ドルヲタ、おおいに結構。
人は夢を見るから人なのだと懇々と説教された事がある本郷。
ハードロック、ヘビーメタル以外敵だと公言する神竜組組員一同の中でただ一人自分の信念を貫いた男、牧健吾。
本郷の兄貴分であり、また本郷を相棒といってくれた男の中の男。
ドルヲタから次第にメタラーに変わっていきアイドルソングに虫酸が走ってしまい悩む本郷に『今、好きなもんがお前の好きなもんなんだ。過去が過ちと思うお前を否定しない。しかし過去を消しされることでもねえ。そう思うお前は変われるってことさ。でなきゃ未来がねえじゃねえか。俺だって同じアイドルを追い続けている訳じゃねーしな。全てを受けいれて見るってえやり方もある。アイドルソングもヘビーメタルも音楽だ。そこは変わらねえってとこだけ覚えておけばいいのさ』
牧健吾はもういない。
違法薬物を売っていた外国人マフィアを潰す抗争で本郷を庇って死んだ。
人はなかなか死ぬことは無い。
牧健吾は病室で親分以下多くの子分に見送られた。
『相棒、おめーはヤクザにゃあ向かねー、堅気に・・・』
自分が甘かったせいで牧健吾という尊敬出来る兄貴分を失った本郷は修羅となった。
ある日若頭にやり過ぎだとぶんなぐられた。
『牧はお前にそんな事を望んじゃいねーとわかんねーのか!』
『・・・』
しばらくして親分から歌舞伎町の『子猫のしっぽ』を任される。
少しずつ修羅から人へ戻っていった。
牧健吾の望みを叶える事もなく結局修羅となり死んだ本郷。
そんな思い出を蘇らせた目がアレイシア(本郷)を見つめる。
目の前にいる少年は本郷から見れば間違い無くドルヲタであると確信する。
アレイシアを見る目は輝き、一挙手一投足を見逃さない。
あれは女神を崇める目だ。
少年の名はアンドリュー、王の孫である。




