少女は夢を見るのが仕事
『申し訳ありませんでした!』
心の中で土下座する本郷。
『気にするな本郷、我も楽しかったわい。かっかっか』
本郷はアレイシアが途中からノリノリになっているのを気づいていたが、引き留める訳にもいかず頭を抱えるだけだった。
アレイシアには前科が山ほどあった。
本郷から色々話を聞き出し実行したという実績がある。
なぜ、これほど本郷に話を聞きたがるかといえば、とにかく娯楽が少ないのである。
アレイシアにとって本郷の話は夢物語。
時代劇から現代ドラマ、アニメ、特撮、アイドル、任侠映画に戦争もの。
本郷も自分がいかに娯楽の多い世界で生きてきたか実感した。
ここは仕事はきついが精神的にはヒマな世界である。
特に令嬢となると学校で勉強しダンスやマナーを習い、時折刺繍をしたり詩を作ったり本を読む。
特に一般教養は本郷やアレイシアにとって禅の修行の様なものだ。
そうなるとおしゃべりしたくなるのが女の子と言うものである。
本郷も暇だったので物語を語り、服の記憶を提示したり、料理やお菓子の美味しさを解説していた。
本郷はアレイシアが女の子らしい刺繍などを始めると寝てしまう。
ある日目が覚めた本郷がみたものは鏡の前でポーズするセイラー服姿のアレイシアだった。
上半身から下半身に目を移すと長いスカートを身に付けていた。
なんだかなーと思い右手を見れば思っていたとおりヨーヨーの様なものを握っていた。
まだこれはましである。
ある時父であるアレックスに『お父さん今まで有り難う』とかいいだした。
何事かと問うアレックス。
『わたしはお父さんの子供では無いはず、産まれたとき取り替えられた子供のような気がしませんか』
いやいや、どうみても私の子供だと思うんだけどと言うと、街にでるとじっとアレイシアを見ている父と同じくらいの人がいると言う。
もしやと思うアレックスもアレックスである。
アレイシアが証明するといい街に繰り出せば確かにアレイシアを見つめるおじさんが最低12人いた。
単なるアレイシアのファンだった。
これだけでは無い。
一人の騎士の身長や手足の長さ、各部の太さを慎重に計測したあと急に鍛冶屋に入り浸るアレイシア。
ああでもないこうでもないと試行錯誤して出来上がったものは初代宇○刑○ギャ○ン。
騎士を呼び出し新作のフルプレート鎧を着せ(前が見えない)野原へ誘う。
決めポーズをさせて待機させると連れてきた友達の魔法使いに指示して騎士の100メートルくらい後ろに爆裂魔法を打ち込んでもらう。
『もうちょっと彼の近くに爆裂魔法をお願い出来るかしら』
騎士がヘルメットを外して近づくとぱこんと頭をはたかれた。
抗議する騎士にひたすら謝るアレックス。
ちなみに本郷はこのとき必死にアレイシアを止めていたのは事実である。
だが、これは騎士のために新しい鎧を作っていると言い張ってやめなかったので止められなかったのである。
アレイシアはしばらくの間外に出られなくなった。
別の意味で箱入りになったアレイシア。
更に暇になったアレイシアは本を書き始める。
本郷もさすがに本を書くのは止めなかった。
だが書いていたのは2ちゃんのスレッドたてのようなものだった。
1ページ毎に何々についてとか、これっておまえらどーよとかお題を書く。
コレは間違い無くクラスに帰ったら女子の間で回ると思った本郷は必死に止めた、さすがに命がけで止めた。
『そう言うことは淑女はしないよ』といったらやっとやめた。
そしてとうとう手書きでアニメを作り始めるアレイシア。
パラパラ漫画であるが暇なので書き込む、とにかく書き込む。
アレイシアの様子を伺いにきたマクシミリアンも巻き込んでアニメを作った。
サッカーアニメである。
出来上がったパラパラ漫画を読者に見せつつ一人で声優となり熱演。
感動的するマクシミリアンやルーク。
それからサッカーはあるセリフをきっかけに大ブームとなった。
アニメ造りに飽きると本郷から話を聞き出し小説を書き始めるアレイシア。
最初は弟だけによんでもらっていたのだがいつのまにやら家族、使用人と回し読みされみんなに誉められるようになった。
家族の誰も学校に行けと言わない。
アレイシアが優秀なのは誰もが認めている事なのだが何かおかしいような気がする本郷だったが当の本人が何の疑問も持たないで楽しんでいるので放っておいた。
こういうのは勢いが大切だと・・・。
本郷から聞いた話を自分なりにアレンジしながら書いて書いて書きまくるアレイシア。
ある日の午後、アレックスに手を引かれて外に出るアレイシア。
『娑婆の空気は最高ですね、本郷さん』
そのまま銀行に行くとアレイシアの口座には莫大なお金が入金されている事に驚く。
その後アレイシアは自身の書いた本が多く写本され出回っている事に気づく。
家に帰るとにっこり笑う紳士がいた。
出版社の社長だった。
それからアレイシアと本郷は血反吐を吐きながら原稿に向かい続ける事となった。
そう言うことを経験してきている本郷はアレイシアのスイッチが入る瞬間を掴み制してきた。
だがこういう突発的な事には歯止めが効かせられない。
いつアレイシアが月の光の作戦中にあれを言い出すか心配な本郷。
そんな本郷とは裏腹にもう少しアレイシアにつき合おうと思うライトニングであった。




