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決まりは守りましょう

山をトコトコと下る一行と言ってもライトニング、アレイシア、疾風の二人と一羽だけである。

アレイシアは人間の姿に戻ったばかりで歩きなれないライトニングに持っていた仕込み杖を渡す。


次第に緑も濃くなり小動物も見かけるようになった。


目的ははっきり言って温泉である。


アレイシアが竜に関する文献を読んでいたときにピンときた本郷がアレイシアの行動を止めなかった理由である。


ここまでくるのに6年。

アレイシアは二重三重の箱に入れられた箱入り娘である。

身体を鍛え騎士達を打ち負かし、街のチンピラを舎弟にし、冒険者と共に戦ってやっと遠くの街や山海川に行くことが叶った。


『温泉、6年振りの温泉かー』


最後にいった温泉は鳩がショーで飛び交うホテルだった。

店の慰安旅行の行き先を募ったところそこになった。

女手一つで子供を育てている従業員もいた店でそこが提案されると満場一致となった。

本郷が子供も参加OKとしていたためだ。

入れ墨が有るため風呂に入れなかったがホテルのショーを見て喜ぶ子供たちの姿を見て楽しんだ。

自分も温泉に入りたくなった本郷は新ためて正月に一人で温泉に行こうと思いネットで箱根の貸し切り風呂のある温泉宿を探したが男一人の予約はその時期はどこも受け付けていなかった。

クリスマス前に死んでしまった本郷は温泉に行くことはなかった。


『本郷さん、そう言えば私がお風呂に入っているときはどうしているのですか。私見られちゃってるのでしょうか』


『見てないよ、身内の女の子の裸を見る気はないからな』


『どうやって見ないようにするんですか』


『音楽を聴きにいった時を思い出してるんだ。アイアンメイドやレディーメタル、無頼ダルなんかの音楽家の生演奏を思い出してるのさ』


『向こうの世界の音楽家ですね、確かヘビーメタルっていう』


『ああ、お嬢が好きな音楽はハードロックなわけだが、ヘビーメタル共々若いもんはもう誰も聴かなくなっちまった。俺は聴き手じゃあ若手だったんだがなー』


しみじみと初めて行ったライブを思い出す本郷。

親分たちとライブハウス近くの路上で客の列に並んだとき場外馬券場売り場かと錯覚しそうになった。

いい年をしたオヤジがバンドTシャツを着て暴れまわり、頭の上を行き交う。

ライブが終われば近くの居酒屋で気のあった者同士ギターの音色がとかベースがどこで走ったとかバカ騒ぎ。

気がつけば組員ともまたライブで会いましょうとかいう恐いもの知らずもいたが親分達はとても楽しそうだった。

あっという間に染まったなーと思う本郷。


そんなこんなを話ながら進む一行の前に柄の悪い男たちが獣を狩ろうとしていたのが見えた。


いきなり走り始めるアレイシア。


「あなた達ここは狩猟禁止の場所よ!」


ここは国王直轄の地、竜の怒りを招かぬようにと数百年前からピクニックは出来ても狩猟は厳禁とされている。

日本でいえば国定公園のような場所である。


「うるせー、コイツを仕留めりゃ半年は遊んで暮らせる。あんちゃんや女のガキは引っ込んでいやがれ」


見れば金色の猿、ミューズに似た猿だった。

もしかしたらミューズもこういった輩に密猟されて街の商人に売られてそこから逃げ出したんだろうと本郷は思う。


密猟者は6人。

そのうちの一人がライトニングに襲いかかる。

それを庇うアレイシア。

柔道技で相手を倒したところで鳩尾に正拳突き。


「お主ら、二度とこの様な事をしないと誓うならばこの場は見逃してもよいぞ」


密猟者を諭すライトニング。


くたばりやがれ!と叫びながら密猟者が二人、三人と襲ってくる。


「ライトニング様、この様な連中を野放しにしておくことは許せません。一つお仕置きをしてもよろしいでしょうか」


「いいでしょう!アレイシア、それに疾風、やっておしまいなさい!」


疾風が襲ったところをアレイシアが次々に空手の技で正面の敵を吹き飛ばし背後からの敵は柔道技でなぎ倒す。


「もういいでしょう、アレイシア、疾風」


「はいっ!」

「ピー!」


地面に横たわる密猟者たち。


それを見渡すライトニング。


「て、テメエラなにもんだ!」


アレイシアがライトニングの前に進み出る。


「控えよ下郎ども!この方を誰と心得る。恐れ多くも竜の山の支配者であらせられるライトニング様である!ええい、控えい、控えい!」


「し、知るか!聞いたこともない。第一てめえは人間じゃねーか!ふざけるな!」


「ライトニング様、是非とも小奴らにそのご威光をおしめしください!」


「うむ!」


ライトニングの体が巨大な光に包まれ竜の姿を現す。


密猟者たちはその場に平伏しお縄になった。


「生きていれば見回りの騎士にあえるであろう、精々反省するのじゃぞ」


巨木に縛り付けられた密猟者。

いつくるか分からない見回り。


情け無用のライトニングであった。







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