微かな記憶
「では、始めます。良く見てて下さい、グレッグさん」
アレイシアが刀を構えてグレッグに向かってにっこり笑って話す。
グレッグは答える事なく頷くでもなくぼんやりアレイシアを見ているだけである。
「いやああああああ!」
アレイシアの掛け声と共に立ててあった竹のような杭が斜めに切断された。
一本、二本、三本と斬り倒されあっという間にアレイシアの回りにあった杭は数本を残し斜めの切り口をさらけ出して半分になった。
グレッグの顔に驚きの表情が表れる。
グレッグは自分の剣を構えて杭に切りかかる。
杭はただ、倒れるか切り込みを入れても剣が途中までしか食い込まない。
「見せてくれ」
アレイシアは鞘ごとグレッグに刀を渡す。
「刀を・・・剣を抜くときは絶対に刃に触れないようにしてください」
グレッグは慎重に鞘から刀を抜くとじっくりと見た。
「こんな細い物が」
「凄い切れ味なんですよ、それに使い方のコツを掴めば相手のどこでもスッパリ切れます」
「剣とはかなり違うな」
「はい、この事をわかってもらわないと試合に成りません」
「分かった」
グレッグから刀を返してもらうとギルドマスターに預け木刀を代わりに受け取る。
グレッグも木剣を手にする。
試合会場と言っても単なる野原である。
アレイシアとグレッグがあいたいする周りに冒険者たちがハラハラしながら見ている。
「おい、神の猟犬!お嬢ちゃんに怪我でも負わせたら只じゃおかねーかんな」
「お嬢ちゃん、無理しないでくれよ」
「治癒魔法師さん、頼むぜ」
「お任せ下さい、お嬢さんについた傷は全て消え失せて差し上げます!」
「猟犬!お嬢ちゃんは俺の孫みてーなもんだかんな、絶対に怪我させんじゃねーぞ!」
「なんでお前の孫なんだよ!」
「お嬢ちゃんは俺によく笑顔をくれる、だから俺の孫みてーなもんなんだよ!」
「「笑顔を向けてんのは俺の方なんだよ!お前じゃなくて俺の孫(嫁)にきまってんだろーが!」」
色々あったがアレイシアは冒険者たちから好かれていたようだ。
ワイワイ言っている冒険者たちの中に何となく小さい頃に魔物に襲われ倒れていた時、助けに来てくれた髭もじゃの冒険者が居るような気がしたアレイシアであった。




