尊い犠牲
転入生の女子二人は男子を千切っては投げ、千切っては投げる。
あらためて言おう二人は現時点において聖女である。
さすがに許嫁がいたり恋人がいる男子を横取りするような真似はしない。
そこはやはり聖職者である。
なぜこの学校に来てそんな事をしているかと言えば効率的だからだ。
ここは王都にあり多くの貴族の子女が伝統的に通う学校である。
彼女たちに残された時間は少ない。
新たな聖女資格者がかなり優秀であったため本来6ヶ月の教育期間が3ヶ月に短縮されたからだ。
しかも彼らはすっかり贅沢に慣れてしまっていた。
「もう、こうなったら子爵だろうが男爵だろうがぜいたく言ってられない!」
アレイシアの近くの席で二人がギャーギャー騒ぐ。
「そうね、あんたにはお似合いなんじゃない」
「何ですって!もういっぺん言ってみなさいよ!」
「だーかーらー、あんたには貧乏男爵がお似合いっていってんの!」
「ムキー!このツルツルの胸でよく言えるわね!」
「何ですって!ちょっと表に出なさいよ!」
何度でも言おう、聖女であると。
『ここまで言われて、ハイそうですかって言う貴族はいないよな、お嬢』
『なんといいますか、爵位と結婚するつもりなのでしょうか、本郷さん』
『お嬢は好きになった人が平民だったらどうする』
『私はレイアと同じですよ』
『いい女になれそうだ、お嬢』
『そういうオジサンみたいな事いわないでください、本郷さん』
『いやまあ、オジサンだしな。俺』
そうこうするうちにルークがとうとう捕まってしまった。
アレイシアはこういうことも有ろうかと、図書館で本を読んでいたサラを呼び出す。
彼女たちのペースを計り、ここ一週間待機してもらうように頼んでいたのだ。
「サラ、出番よ」
「かしこまりました」
サラは見事にルークの彼女を演じきった。
と言うか嬉しそうであった。
『青春かあ・・・』
ちなみにマクシミリアンはアレイシアから連絡がない限り自宅で自習していることにしている。
その後1週間でお目当ての男子が見つからずにさっさと転校するために校長室に向かう聖女たち。
たまたまそこに学校の授業が終わる頃に合わせてアレイシアに会いに来た幼き勇者アンドリュー。
今日はアレイシアから新作料理が出来たのでと食事に招待されている。
一刻も早くアレイシアに会いたかったので必死に勉強をこなし王宮を出発して来た。
当然、フェリックス第二王子もいる。
フェリックス第二王子はアンドリューのお守りを理由に仕事は部下に投げてきた。
フェリックス第二王子は国の財政を預かる部署の中間管理職員である。
当然所属する部署には上司もいれば部下もいる。
時折アレイシアの所に顔をアンドリューと共に出すのはお菓子の為でもある。
帰るときにはアレイシアから事前に頼んだお菓子を受け取る。
もちろん実費以上の対価を手渡す。
アレイシアも伯爵邸で働くみんなの分のついでに作るので助かる。
フェリックス第二王子はアレイシアのお菓子を上司、同僚、部下みんなに行き渡るようにローテーションで配る。
なので、こういう時は職場のみんなは融通を利かせてくれる。
職場では気の利く男なのだが・・・。
王族ということもあり校長室で校長と談笑しながらアレイシアを待つ幼き勇者アンドリューとフェリックス第二王子。
そこへ飛び込む聖女たち。
フェリックス第二王子は未だに独身である。
聖女たちの目がランランと輝いている。
「いやあ、僕が君たちみたいな美人の相手になるわけにはいかないよー」
相変わらず空気が読めない男である。
二人の正体を知っている校長は『そこはもう彼女がいるって言わないとヤバいですよ王子ー』と、思っているしかなかった。




