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新たなる野望 五歩目

お互い相対して臨む簡易法廷。

ルークの目の前にアレイシア、マクシミリアン。

アレイシアの脇に魔犬のユミ坂本、肩に魔鳥の疾風。


ここには裁判官の補佐人が居ないのでゴルドが直接質問を口にする。

ちなみに傍聴人はたまたまゴルドが裁判官の真似事をしていると思っている。


「確認します。ミューズの所有権者はアレイシア嬢で間違いないですね」


「はい、間違いございません」


「確認します。ミューズの飼育管理者はレイア嬢で間違いないですね」


「はい、おっしゃるとおりです」


「本来、所有権者が命名権を自然の権利として持つわけですが、レイア嬢が異議を申し立てました。レイア嬢間違いありませんね」


「は、はい・・・そのとおりでございます裁判長」


「ふむ、では何故異議を申し立てたのか発言してください」


ルークがレイアを制して立ち上がる。


「私はレイアさんの代理人弁護を請け負ったルークと言います。発言をお許しください」


「許します」


「そもそもミューズを保護したのはレイアさんです。その当時の所有権は魔物管理法によれば保護第一人者に発生します。よって所有権が移ったとしてもその名は保護第一人者の理解が得られない限り勝手に変えることは出来ないと考えられます」


「異議あり!」


ゴルドが手を上げたマクシミリアンに顔を向ける。


「私はアレイシア嬢の代理人弁護を請け負ったマクシミリアンと言います」


「発言を」


「有難うございます。レイア嬢が保護第一人者と言われましたが、それは公共の森などの場所においてということだとだと前提があります。ご確認ください」


頭には入っているがわざわざ民法書を読むふりをするゴルド。


「確認しました。その通りです」


「ミューズ、ここでは便宜上ミューズと言いますが、ミューズはアレックス・マーベリック伯爵邸で保護されていました。保護した場所という一点において既にレイア嬢はそれにあたらない。ゆえに保護第一人者の権利も有しないと判断します」


「異議あり!」


「ルーク君どうぞ」


「いつ、ミューズをこの屋敷でレイア嬢が保護したと言いましたか」


喧々諤々丁々発止の議論が続く。


勝てると思っていたマクシミリアンはルークが意外にも口達者な事に驚く。


マクシミリアンはアレイシアに代理人弁護を頼まれたとき嬉しかった。

だが、この法廷のやり取りの中でミューズが女の子だとルークに告げられ、更にそれを知った上でアレイシアがゴクウなどという男っぽい名前を着けたがっている事を知った。

『なんだかなー』と感じているが、代理人弁護を引き受けた以上クライアント側の勝利を掴むために全力を尽くそうと思っている。


白熱する議論、無言だが盛り上がっている傍聴席。


だが正直どうでもいいと思う空気の読めない男が居た。


お菓子が出ると聞いて来たアンドリューのお守りで来ていたフェリックス第二王子である。

この場では最高の権威を誇る。

ゆえに法廷管理人に指名されていた。


フェリックス第二王子が立ち上がる。


「しまった!」


ルークは議論を長引かせてしまった事に後悔した。

こんな事くらい想定していないはずがない姉。


アレイシアを見るとニヤニヤしながらユミ坂本と疾風に吉備団子のようなものをあげている。

ユミ坂本と疾風はあっという間に平らげる。


『なんだ、何を仕掛けてくるつもりだ姉さん!』


「裁判官様!よろしいでしょうか」


「発言を許可します、フェリックス第二王子」


「このまま議論を続けていても平行線のままです。そこで提案です。ミューズ、ここではあえてミューズと言いますが、そのミューズを法廷の中央に立たせアレイシア嬢とレイア嬢双方がお互いに名付けたい名で呼び、ミューズに決めさせてはいかがでしょうか」


「ふむ、確かにそうですな。お腹も空いてきましたし。良いでしょう、その方法を許可します」


フェリックス第二王子は本当に善意でみんなのために発言したのだが、法廷の開かれた時間を考えると仕組まれていたと考えざるを得ない。

しかも誰がアンドリューに今日、ここでお菓子が配られると教えたのか。


『闘いというのは、こういうものよ』と言いたそうなアレイシアの笑顔。


「大丈夫だ、レイアさんの方がミューズと長く付き合っているんだ負けるわけがない」


ミューズを抱くマリアンヌをじっと見つめるレイア。


不安な顔で腕を胸の前で組むレイアの姿は子供を奪われる母の様である。


ゴルドの目がキラリと光った。









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