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美味しいと言われて泣く鬼

王都の伯爵邸中に甘い香りが漂う。


『お母様に是非とも最初にお食べいただきたいです、本郷さん』


『そう慌てんなって、まずは俺たちで試食しねーとホントに美味いかわかんねーじゃねーか、そうだろお嬢』


いやもう間違いなく美味いに違いないと本郷は確信していたが、微妙に原材料が違うのが些か気になっていた。


本郷は几帳面で細かいところによく気が回る男であった。と言うか細かい男である。

店でも納品された商品を自腹で必ず試食した。自分の懐を痛めるが言いたいことを言うために経費扱いで試食しない筋の通った極道である。


味に納得がいかなければ自分の懐から全額を支払った後全て返品である。


そんなことをされても必死に食い下がる洋菓子店や和菓子店。


「子猫のしっぽ」に納品できると言うことは一流であると言うことなのだ。

ゆえに納品には必ずパティシエが立ち会う。

本郷は問題があると、なにがどうまくいっていないかパティシエに解説しどう解決すべきか話し合う。

何度もそう言うことを繰り返し一流のパティシエを多く育て上げた。


『俺は自分が客であることに常に身を置いてたのさ』


『厳しいかたですのね』


『極道だからかもしんねーな』


『極道ですか』


『極道ってのは人と鬼の際に生きる奴ってことさ』


『ゴ、ゴブリンでしたの本郷さん!』


『勘弁してよお嬢、俺の国で鬼っていうのはその道を極める人を捨てた人。なんていうかな職人技を極めるためにその外を全て捨てた奴ってことさ』


『と言うことは本郷さんはお菓子の道を極めるお菓子極道なのですね』


本郷は右手に持つナイフに写るアレイシアの顔を見た。


「お菓子極道か・・・この可愛らしいツラにはぴったりじゃねーか』


ニヤリと笑うアレイシア(本郷)。

パンケーキを一口サイズに切り取り添えられた生クリームを付けてパクリと食べる。


妹の顔が浮かぶ。


初めて妹のために作ったパンケーキは自分ではあんまり美味いとは思えなかったが妹は本当に美味しそうに食べてくれた事を思い出す本郷。


「美味しい・・・」


『綾乃、お兄ちゃんはお菓子極道になったみたいだ』


なぜかぽとりと涙が落ちた。





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