新たなる鬼 うちの子に限って編
国王と王妃は少し悩んでいた。
第一王子は既に結婚しており男の子の孫も二人いる。
この時点で将来の憂いはほぼない。
それでも自分の子供の事が気になるのは親として当然であろう。
悩んでいたのは第二王子の事である。
第一王子から10歳離れた25歳、浮き名も流さず未だ独身。
女性に興味が無いのかと思っていたがそっち方面でも何もなかった。
この国は結構そう言う事に開かれていたのでそれであっても問題にするつもりが無かったのだが、国庫の管理をしている文官として仕事仕事の仕事人間である。
時折甥っ子の面倒を見るのが気晴らしの様である。
ある日甥っ子のうち次男の方がアレックス伯爵邸に行くことになった。
幼児舎で知り合った公爵の孫にアレイシアのお菓子を食べたと自慢されたからだった。
この子は結構わんぱくであったが第一王子もその長男も第二王子も非常に大人しかったので、元気があって宜しいと国王も王子たちも教育係の執事も気にしなかった。
おもり役を引き受けた第二王子と共にアレックス伯爵邸に行くと当主夫妻とアレイシアとルーク、使用人一堂。更に可愛い魔犬二匹が迎えていた。
第二王子のフェリックスとアレイシアとルークで孫のアンドリューの面倒を見ることになった。
お菓子はとても喜ばれ、魔犬とも仲良くなったアンドリュー。
その日以来、二人はアレックス伯爵邸を時おり訪れるようになった。
彼等が来るようになって1月後、魔犬のジャガー横川とユミ坂本にクレームが来るようになった。
なにやら女性のスカートをめくっていると言うのだ。
家の子(魔犬)にかぎってそんな事をするわけがないと抗議したアレイシア。
有るなら証人を呼んでほしいと言うと、何人もきた。
その中の一人の冒険者が魔犬の脇腹に小さなハートマークが有るはずだという。
そんな犬はどこにでもいるといったが、バカをいうなと言われるアレイシア。
『みんな鬼だわ、うちの子がそんな事をするわけがないのに』と泣き崩れるアレイシア。
そう言うこともあってその場はお開きになった。
数日後、ジャガー横川がアレイシアのスカートをめくって得意そうにしていた。
なぜ、こんな事に。
こんな事をする子じゃ無かったのにと思いを巡らすと、アンドリューが来てからだと気付いた。
街にアンドリューのお供でついていったルークに問いただすと、案の定アンドリューがスカートをめくっては驚く周りの反応を面白がっていたのだ。
それに感化されたジャガー横川が真似をして一緒に街中の女性のスカートをめくっていたらしい。
そのたびに第二王子のフェリックスが土下座をしてその場を納めていたという。
「なぜ、あなたが止めなかったんですかルーク!」
「だってしょうがないじゃないか!王家のお孫さんだよ、それにフェリックス王子にこの事は内緒にって言われてたんだ、姉さん」
アンドリューとフェリックス第二王子を呼び出すアレイシア。
こんこんと説教するがアンドリューは5歳と言うこともあり自分のしたことを理解してないし、フェリックス第二王子もまあまあ子供のしたことですからと軽くいう。
アレイシアはアンドリューを部屋に入れると自分の子供の頃のスカートを無理やりはかせる。
その格好のままで家族の前へ行き、みんなの前でアンドリューのスカートを前後左右からめくる。
アンドリューは初めて自分のしたことを理解し、泣きながらアレイシアに謝った。
こっちの渡世にも鬼というものがいるんだなと本郷は思った。
リビングの外から苦い顔をしたアレックスの顔が覗く。
それからしばらくして王宮の女性一堂からアレイシアへ感謝の手紙が届いたのであった。




