シナリオどおり
特殊戦闘部隊『月の光』。
総司令はマデューカス公爵、将軍(食いしん坊)。
作戦参謀は軍出身の数人の公爵と平民出身の政治家と大実業家だが名は伏せられている。。
作戦指揮官は作戦ごとに王国軍陸軍指揮官ゴート侯爵もしくは海軍指揮官ゴッサム(共に中将)となり指揮官を外れたときは作戦補佐官となる。
陸軍と海軍から選ばれた中佐クラス以下のエリート数十人で構成される実行部隊は作戦ごとに編成が行われる。
軍に表向き身分の差はあるが実質的に身分差別はない。
これは主に魔法を扱えるものが民間人にも多くいるからである。
戦えない人間は軍に必要ないからだ。
その中で最強の軍人が集められたのが『月の光』という組織である。
このことは数世代前に国家存亡の危機があったが故である。
数カ国による大戦争が百年ほど前、十数年に渡って行われた。
多くの貴族は魔法を使えるのだが隣接するマーデラス王国の領地を狙う他国同士の同盟軍から攻め入れられればいくら魔法が進んでいたとしても数の論理で負ける。
マーデラス王国は広大で豊かだった。
であるがゆえにそれを維持するので精一杯であった。
医療の発達していない世界で子供は簡単に死ぬ。
ましてや魔獣や凶暴な動物、他国からの嫌がらせで成人も多く死んだ。
豊かであっても文明は中世である。
自分のことで精一杯であり、親を無くした子供や体の不自由な大人は簡単に見捨てられていく。
孤児院に入れる子供は幸せな方であった。
とにかく国土の割に人口が少ないのだ。
戦えるものは戦ってほしいと王は懇願した。
身分差別や人種差別から解き放たれた軍がこの時誕生した。
だが軍以外の国内においては普通に人種や身分差別がある。
王は余計な内紛を抱えるほど強くなかったがゆえに皇帝とならなかった。
社会階級の存続を認める代わりに無法な行いをする貴族を表は法で、法で裁けない者は闇の力で処分していった。
処分の対象は王を含めて全国民である。
権力を持つものに無法者や無能力者は必要ないのである、そういう者は国家を揺るがす者であると当時の王は宣言した。
他国から常に侵略の対象となっているがゆえに、それ自体が担保となっているのが皮肉である。
王は太陽として、闇の力は月としてマーデラス王国を照らし続ける。
太陽と月、光と闇はお互いを必要として補い合うことで存在を認めざるを得ないのである。
アレイシアがグラハムを殺す間際まで追い詰めた時、マーガレットはアレイシアを組織に入れる決断をした。
ある日、グラハムがアレイシアに詫びを入れに来た時、ニヤリと笑って「君はこれを読んではいけない。これは鬼に読んでほしい、君ならわかるよね」と言って去っていった。
『本郷さん』
『ふん、あの野郎感づいたか。まあ気にするな、そのうち挨拶しに行く事もあるだろうが今は放っておけ。お嬢は今まで通りに生活していくんだ。俺がお嬢を必ず守るから安心してくれ』
正直な処、仕組まれていたと本郷は感じていた。
軍からの新たな製品のオーダー、必要な素材を売っている多くの店を回っていればいずれ無法な貴族にぶち当たる、というか、ぶち当たる情報が先だったのだろうと思った本郷。
お嬢はまんまと引っかかってしまった。
本郷は自分がやりすぎたと後悔した。
アレイシアを守るためにやれることは何でもやろうと誓った。




