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運命の分かれ道

応接間に軍の兵士2人とアレイシア、マクシミリアン合わせて四人が向かい合っている。

兵士の方はマーガレットと男。

マーガレットは本を読みながら仕切りに頷く。

それに対して男は興味がなさそうに部屋を眺める。


湿気た部屋だと思う男。


アレイシアとマクシミリアンは少し緊張しながらマーガレットの様子を伺う。


「うん、良くできている。絵もついているし分かりやすい。驚いたよ二人とも、早く王宮の文官に見せて写本をしてもらわなければ。感謝するアレイシア嬢、マクシミリアン君」


嬉しそうに顔を見合わせるアレイシアとマクシミリアン。


「ふん、命令で来たがこんな小娘の書いた戦闘術が役にたつものか。おじい様も耄碌されたものだ」


「グラハム!失礼だぞ」


「はいはい、姉上どーもすいませんでしたー。チッ」


「何だ、その態度は。本も読まずにお前の物言いは酷すぎるだろう。アレイシア嬢に謝れ」


ブスッとした顔で無言で軽くアレイシアに頭を下げるグラハム。


「貴様ー!」


グラハムの襟を掴んで持ち上げるマーガレット。


「お待ちくださいマーガレット様、本を読まずに判断するグラハム殿の態度はどうかと僕も思います。しかし、確かに僕たちを見れば疑問に思う気持ちは分かります、どうかここは穏便にお願いします」


「は、出来たガキじゃねーか。マクシミリアンって言いたか、こういうガキは嫌いじゃねーよ」


「愚者は経験に学び、賢者は歴史について学ぶ。アレイシアに教わった通りのようだ、まさかそれを現実として知ることになるとはね」


「おいおい、何の諺か知らねーが馬鹿にされたってのは間違いじゃねーよな、糞生意気なガキだ。こんなもん役にたつものか!」


机に置かれた本を投げ捨てるグラハム。


「いいでしょう、では実戦で教えて差し上げますよグラハム殿」


「ほう、坊主が相手ねえ。怪我しても文句はねえな」


「そちらこそ、怪我をしても文句は言わないと誓ってくれるのでしょうね」


「表にでろ!ガキだからって容赦はしねーぞ」


訓練場で護衛騎士たちが見守る中、男二人が対峙する。

いきさつが分からない騎士ににこやかに格闘戦術を軍の兵士に訓練するだけだとマクシミリアンが宣言。


子供相手に少し血が上ってしまったかと思うグラハム。

多分カノジョの前で粋がったのだろうと考える。

適当に相手をして軽く痛い目にあわせておくつもりだった。


ただ自分が同じ年の頃何も守れなかった少女一家が記憶に蘇る。

あの頃の自分はこんな少年ではなかった。

ただただ夜盗に怯え逃げ出すことがせいぜいだった。


だが今は違う。力を蓄え腕を磨き敵軍兵士と戦い日々危険な魔物や賊から国民を守っている。

もっともっと力が欲しいと願う。

だから許せなかった。

実戦も経験していない子どもの机上の空論が許せなかった。


マクシミリアンは考える。

アレイシアの戦闘術が通用するのは今回だけだろうと。

相手がアレイシアの戦闘術を身に付ければ圧倒的な体格差を補い切れない。

素早い動きと意表を突く攻撃で翻弄しいっきに片を付ける。


アレイシアに師事し磨いた戦闘格闘術を惜しみなく繰り出すマクシミリアン。


投げ飛ばされ、ひねりあげられ、拳を足を撃ち込まれるグラハム。

掴もうとすれば腕を逆に掴まれ肩越しに投げ飛ばされる。

蹴りを入れれば半身でかわされ勢いに乗った回し蹴りで吹き飛ばされる。

何がどうなっているのか分からない。


嘘だ嘘だとつぶやく。


とうとう短剣を抜く。


「戦争ってのはこれでやるもんだ!」


といったとたんにアレイシアが脇から出てきて剣を持つ手を掴み手刀で叩き剣を手放させると同時に背負い投げでグラハムを地面に叩きつける。

そのまま馬乗りになって両足でグラハムの両腕を押さえつける。


「やっちまったな、あんちゃん。生きて帰れると思うなよ」


声色の変わったアレイシア。

頭を掴まれ後頭部を叩きつけられ、何度も拳で殴られる。

口の中は血塗れになる。


アレイシアの目を見るグラハム。


『鬼・・・』


アレイシアがグラハムの目を潰そうと腕を上げるが誰かにつかまれる。


「アレイシア、アレイシア。それ以上は駄目だ!」


マクシミリアンが泣きながらアレイシアを押さえる。


「私の大切なマクシミリアンを殺そうとした!」


「アレイシア!」


「マクシミリアンを殺そうとするのは誰であっても許さない!」


「アレイシア!お願いだ、もうやめておくれ。僕は大丈夫だから」


アレイシアに抱きつくマクシミリアン。


泣き崩れるアレイシア。


妹の復讐をした時の情景を思い出す本郷。

止める者がいない場所で気が狂ったように相手を殴りつけ殺した。

もっと別のやり方をしていればよかったのだろうか。

もっと穏便に腕の二三本で済ませておけばよかったのだろうか。


後悔で涙が溢れるアレイシアの涙は本郷のものだった。


「マクシミリアン様、ありがとうございます」









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