趣味が一致するって良いことです
本郷は目の前の女性兵士に目を疑った。
『そのまんまじゃねーか』
女性にしては背が高くスレンダーな体格であるが動きをみれば鍛えられた無駄のない筋肉がしっかりと役割をはたしている。
金髪碧眼、やや高い鼻が意志の強さを伺わせる。
また特別であろう人物の為の護衛用の青い騎士服が更に印象を強く与える。
『少女漫画から抜け出てきたみたいだぜ、革命は起きそうにないが』
多分アレイシアと並べば周りを薔薇が囲む単行本の表紙の出来上がりだろう。
『お嬢・・・』
『どうされましたか、本郷さん』
『いや何でもない、少し驚いただけだから』
パンが無ければお菓子を食べれば良いではないですかってお嬢にいってもらいたい。いや間違ってもお嬢はそんな事を口にする事はないだろうと本郷は確信しているが、学生時代は仲間とネタの競い合いのお陰で何でもネタに走る癖がヤクザになっても心の中では数年抜けなかった本郷であった。
『俺はずっと夢の中にいるんだろうか』
などと思いながらもう一人の護衛兵士をどきどきしてみると、イケメンではあるが片目に眼帯をしたゲームの主人公のような男である。
『フッ、イカした声優さんの渋い声を思い出しちまったぜ』
訓練を一通りすますと女性兵士がアレイシアの元に来る。
「噂に聞いておりましたが驚異的な格闘術ですね」
興奮しているのか顔が蒸気して少し赤くなっている。
「こ、これは失礼した。私はマーガレット・ハートリッジと申しまして将軍閣下の孫で御座います。以降、お見知りおきください」
「初めましてアレイシアです。アレックス・マーベリックの長女で御座います、マーガレット様。そういっていただけてうれしいです」
マーガレットが片膝を地に着けアレイシアの目線に合わせる。
ニコリと笑う笑顔が凛々しい。
今にもアレイシアの手を取って告白しても誰も不思議に思わないであろう。
もう周囲に薔薇がまき散らされていてもいいと思う本郷。
アレイシアとマーガレットが近接戦闘格闘術を熱く語り合う。
「皆さーん、お疲れさまです。飲み物のご用意が出来ましたのでこちらにいらしてくださーい」
メイドのレイアの声が訓練場に響き渡る。
護衛騎士が疲れも見せずにレイアの持ってきた飲み物の有るところに走る。
中にはお茶会に招待された令嬢をお姫様抱っこしている騎士もいた。
抱かれている令嬢は騎士の顔を潤んだ瞳で見つめている。
「そうなんです、こうやってバランスを崩せば」
「おお!これでは反撃出来ませんね、アレイシア嬢」
「それから指をこうやって」
「あいたたたた、なんということだ指一本捻られただけで」
『お嬢、さっさと行かないと飲み物が無くなっちまうぜ』
『あ、不味いです。最近皆さん遠慮が無くなってますからね、急がないと』
「マーガレット様、あちらに飲み物をご用意しておりますので」
「ありがとうアレイシア嬢、みんな美味そうに飲んでいる。これは急がないと」
マーガレットはアレイシアをひょいと抱っこすると大股で歩き始める。
「マーガレット様」
「何でしょうかアレイシア嬢」
「ちょっと恥ずかしいです」
「ははは、気にしない気にしない」
爽やかな笑顔でアレイシアに答えるマーガレット。
『うん、俺は気にしないぞお嬢』
『こういう女性がお好みですか、本郷さん』
『そういうことじゃねえって、男に抱かれるよりホッとするってだけさ、お嬢』
『・・・』
『俺はお嬢が一番好きさ、それは変わらねえよ。お嬢の為ならもう一回死んでも構いやしねーぜ』
いやそれではアレイシアが死んでしまうと気づく本郷。
顔を赤らめるアレイシア。
誤解一直線の構図が出来上がった。




