常在戦場でも美味しいものが食べたい
目の前にタルトレット、ショートケーキ、チョコレートが広がる。
急にお忍びでくる招待客が増えたが自分の分をあてればよいと気にする様子もないアレイシア。そんな優しいアレイシアが愛おしい本郷である。
「リンゼイさん、後でレシピはお渡ししますので書き物はしなくて良いですよ」
「ありがとうございます、お嬢様」
「でも、あとちょっとお手伝いしてくれますか」
「もちろんです」
早朝にリンゼイと共に作ったピザの生地2つ。
アレイシアの目の前には小さめのトマト。
『ちょうどいい、お嬢にはこれで剣と刀の使い方の違いをわかってもらえると思う』
相変わらず物騒な本郷である。
『いいかいお嬢、このトマトに真っ直ぐナイフを入れていってみてくれ』
言われたとおりに垂直にナイフを入れるアレイシア。
トマトは若干潰れたが二つに切れた。
『じゃあこっちのトマトは向こうから手前に引くように切ってみてくれ』
すっと切れるトマト。
『全然違います』
『そしたら二つのトマトの断面を見ようか』
『前後にナイフを入れた方が綺麗に切れてますね、本郷さん』
『そうだ、最初が剣の使い方、つぎが刀の使い方なんだ、お嬢』
『スパッと切れて怖いくらいです』
『少し分かってくれたかな』
『はい』
調理場で剣術指南と言うのもおかしなものだがアレイシアはまだ10歳である。
本郷は護身の為の剣術を伝えるつもりだが戦う剣術は教える気は一切無い。
ただ、刀というものとその技を知る過程で身のかわしかたや剣に対する方法を身に付けさせたいと思うのであった。
リンゼイがトマトソースをたっぷりと塗り込み、切り分けたトマト、切り刻んだチーズやベーコン(本郷)、ピーマン(本郷)を載せオリーブオイル(本郷)を塗る。
2つのピザが出来た。
「まだ時間が有りますので一つ作ってみましょう」
鍛治屋に特別に作ってもらったオーブンにピザを放り込む。
じりじりと焼き上がりを待つ2人。
『もう、いいと思うぜお嬢』
オーブンから焼き上がったピザを取り出しバジルを載せる。
「お疲れさまです、リンゼイさん」
「はあ」
「さあ、試食しちゃいましょう」
「はい、お嬢様」
美味しい美味しいピザであった。




