鬼とお嬢様
作者(布団の中から出るのがつらい)から貴重で大切な読者様へお知らせです。
ここだけ少し怖い話になります。
ここを読まなくても話としてつながります。
そう言うわけですので怖い話が苦手な方は読み飛ばして下さい。
なんだかジャンルからどんどん離れていくのがマズいと思っています。
ちなみにラブコメはちゃんとやっていこうと思っています。
自分なりに感動のラストも考えました。問題はそこまでどうやって持って行くかですが・・・。
見捨てないでいただけるとうれしいです。
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『本郷さん、これなんてどうですか』
『まあ、悪い物ではないとは思うが俺の使ってた得物と違うからなー、見立て出来るか分からんのだ』
護衛騎士と共に武器屋で無邪気に剣を眺めるアレイシア。
『違うのですか』
『そうだ、俺が使ってたヤッパ(白鞘の小刀)って言うのは刀の一種だったんだが剣とは違う物って言うか使い方が違うんでな』
本郷は使い慣れた小刀の記憶をアレイシアに見せる。
『ついでにコイツがダンビラ、白鞘の刀の長い方かな』
『剣と同じ用な武器だと思えますが、ちょっと頼りないかんじがします』
「見た目はそうだな。だが使い方をマスターすれば魔物の首なんてスッパリだぜ』
どうも違いがよくわからないアレイシア。
剣に自分の顔を写しながら十分にこれで何でも切れるような気がしている。
「お嬢様、流石にその剣は大き過ぎではないでしょうか」
アレイシアと剣を見比べ笑いが堪えられない護衛騎士が愉しそうである。
アレイシアが持つ剣は1メートル、柄を合わせれば125センチに届く。
アレイシアの身長は140センチメートルであるので使いこなすには無理がありすぎる。
『確かにそうだ、お嬢』
『餅は餅屋という事ですね。って言うか餅を知らないんですけれど』
『餅を説明するのは難しいなー。そうだな、諺の意味だけ伝えるとするとだな、専門分野は専門家にまかせたほうが良いよって感じかな』
騎士の見立てで護身用の短剣を購入するアレイシア。
『これで街を歩くにも安心ですね、本郷さん』
『いやいや、持ってるだけじゃ意味がないぜお嬢。技を極めないと一人で戦う羽目になっちまった場合どうにもならんよ』
街の中を歩くにも護衛がつくこの世界は本郷にとって修羅の世界と思えた。
一歩脇道に逸れれば人攫いや強盗騒ぎが王都であるにも関わらず時折有るのだ。
少数の女性達だけで夜の歌舞伎町で酔っ払いながら歩ける世界しか知らない者であればあっという間に身包みをはがされるであろう。いや、姿さえ消えるだろう。
その点本郷は外国人マフィアと裏の世界で凌ぎを削ってきた経験がある。
甘味処の店長になる前は知り合うヤクザ全てから鬼の本郷、外国人マフィアからは悪魔の本郷と言われ恐れられていた。
何人も闇に葬り、何十人の首を外国人マフィアの根城の中に放り込んできたかわからない。
本郷とその所属する組その信念に従い、はっきり言って根切りに近いことを平気でしてきたのだ。
違法薬物を持ち込む者、女性の意志に反してその体を食い物にする女衒、堅気相手にイカサマ賭博をする者、詐欺師、ペドフェリアなどなど数え切れないほど歌舞伎町から消した。
それでも後から後から金や妙な欲望に釣られて湧き出る悪鬼ども。
本郷も半丁博打や野球賭博、賭麻雀などなどを生業としていたので悪と言われれば悪なのだが、お客にイカサマはしない、無理な掛けは請け負わないようにして細く長く付き合って貰っていた。
だから客足が途絶えるような騒ぎを起こす連中や堅気をボロボロにする薬物は徹底的に排除する。
闇の世界にもそれなりのルールというものが有るのだ。
悪餓鬼は法を気にしない。ましてや外国人マフィアにおいては日本は外国である、何かしくじっても祖国に帰ってしまえばどうということもない。
本郷達は自分たちの州を守るという意識しかなかった。
だから自分達を絶対に正義の側に立たせない。本郷達のお陰で結果的に誰かが助かったとしても、それは本郷達が必要でやったことの副産物なのだ。
暗闇の中で薬物販売を主に行っている組のスパイを拷問し、外国人マフィアを誘き出して皆殺しにし、詐欺師を海に沈め、ゲスな女衒の急所を虐げられていた女性の前で潰した。
本郷は数十回死刑になっていてもいい男である。
その本郷でもここはそれなりの処世術を身につけていない場合、武器を持っていないと金のネックレスをかけただけの裸で南米を歩いているのと同じと思える。
『やはり刀の方が街の中じゃ有効だろうな。出来れば短銃を造っておきたい所だが難しいか』
本郷はアレイシアを守るためであれば何でもする気であるし、組織も必用だと考えているのであった。
自分の心を殺してもアレイシアの心は守ると誓う本郷。
アレイシアが寝る夜の世界が結局自分の生きる世界なのだと。