告白されました(げんなり)
『これくらいかしら』
『お嬢、悪かった』
『これ以上だと下着が見えちゃいますね』
『もう思い出さねえから、お嬢勘弁してくれ』
鏡の前でスカートを持ち上げるアレイシア。
本郷にメイド喫茶の服装を問い詰めて絶対領域というものが何であるか自分の体で確認している。
本郷にとってはアレイシアは妹と同じ思いで接しているので困ってしまっている。
鼻歌を歌いながらくるりと回るアレイシアが振り返ると窓の外に木につかまる少年が居た。
ここは2階部屋である。
固まるアレイシアと少年。
少年の名前はマクシミリアン・コーデル、コーデル公爵家の長男でありルークの兄貴分である。
顔を真赤にして見つめ合う二人。
マクシミリアンはそそくさと木から降りていく。
「僕の方が高い枝まで登ったから僕の勝ちだねお兄ちゃん!」
無邪気なルークの声が聞こえる。
「すまないアレイシア、覗いたりするつもりはなかったんだ、信用して欲しい」
「事情はルークにも聞きましたので、そんなにお気になされないでください」
アレイシアとマクシミリアンは同い年である。
背丈は若干アレイシアの方が高いが体格は圧倒的にマクシミリアンが勝っている。
「ありがとう、アレイシア」
『おいおい純情じゃねえか、おじさん熱くなってきちゃたかも』
嫌な中年オヤジである。
『何言っているんですか!本郷さんからかわないでください』
『結構いい男じゃねえか。真面目そうだしお嬢に十分釣り合うと思うぜ』
『マクシミリアン様にそんな失礼なこと考えないでくださいまし』
もう完全に先程の仕返しである。
「もう二度とあんなことをしないと誓うよアレイシア」
「そ、そうですね。落ちて怪我でもしたら大変ですから。ルークにもよく言い聞かせておきましょう」
なんとなく気まずい空気が払えない。
『妹もこんなんだったのかなー』
『本郷さんはどうでしたのかしら』
やぶへびである。
『俺は硬派だったからな・・・』
『だからなんです』
本郷にこんな純な出来事は一切なかった。
有り体に言えば学生時代は彼女も居ない、組員になってなんとなく付き合うようになった女性が居たがそれもなんとなく別れるような間柄だった。
リア充を見れば冷やかしまくっていたような気がする。
単純な構図を描くとすれば、ヒューヒュー熱いねーお二人さんという昭和真っ盛りの絵面。
それも大体幹部の兄貴分につられてそんなもんかとやっていただけだ。
それでも本郷にとっては恋人達を応援しているつもりだった。
マクシミリアンがアレイシアに一歩近づく。
真っ直ぐな瞳がアレイシアを捉えて離れない。
「必ず君を僕のものにする、もっと強くなって君を迎えに来る」
「・・・」
マクシミリアンはアレイシアの前で跪くと手を取り口づけした。
『うあああああああああああ、やーめーろー!!!!!!!!!!!!!!!!』
本郷の心の叫びがアレイシアの頭の中で響き渡っていた。
『大丈夫です、本郷さん。お嫁さんには行く気はないですよ』
それはそれで問題だと思う本郷であった。