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別れの呪文

攻守一体の無駄のない動きでミューラーを追い詰めるクレイとアレックス。

銀色に輝いていたクレイのつるぎは真紅となりミューラーの身体を切り裂きアレックスは黒き双剣で繰り出されるミューラーの物理攻撃を跳ね返す。

マリアンヌが後方で魔法防御の結界を張り続ける。


『これで最後だ大悪魔!』


クレイがミューラーの首をはねる。


『聖女様、聖魔法を!』


アレックスの叫びに応えて3人の聖女が一斉に穢れを打ち払う魔法をミューラーに向けて放つ。


ミューラーの身体が仰向けに倒れていく。


「勝ちましたね師匠」


ひざを折って息も絶え絶えのアレックスがクレイを仰ぎ見る。

クレイはミューラーを見据えたまま動かない。

不安がよぎるアレックス。

案の定、空一面を覆っていた黒い霧がミューラーのもとへと集まってくる。

星々の輝きが取り戻されたとは裏腹にアレックスの顔から血の気が引いていく。


ミューラーの復活。


「あの時と同じ、いやそれ以上か」


その場に居合わせるすべての者に恐怖が押し寄せる。


「アレックス、ここは引いて皆を守れ」


ミューラーに必死の形相で立ち向かうクレイ。


「師匠!」


「時間を稼ぐ、さっさと行けアレックス!」


クレイが残った魔力すべてを魔法剣に注ぐ。

真紅の輝きを放つ剣を突き出しミューラーに向かって走る。

妻や子供そして幼かった頃のマリアンヌの顔が浮かぶ。

ミューラーが動き出す。


「速い!」


素早さが上がったミューラーの攻撃。

クレイは迫り来る鋭い爪に追いつけない。


「もはやこれまで・・・」


その時一瞬目の前に影が映る。


「あんたじゃ無理よ。ほらさっさとあんたもアレイシアちゃんのとこにおいきなさいな」


白地に金の竜が描かれた着物姿のライトニングがミューラーの腕を掴みながらクレイを見る。


「ライトニング様・・・感謝致します」


クレイは謝意を述べるとマリアンヌのもとへと走った。


「さてっと、最後にひと花咲かせましょうかね。でもこれはちょっと大変よねー」


ライトニングを押し込むミューラー。


『アレイシアちゃん!』


ライトニングがアレイシアに向かって思念を飛ばす。


『はい!ライトニング様』


『本郷ちゃんに出てきて貰いたいの、いいかしら』


『そ、それは』


『本郷ちゃんの助けが必要なの、お願い』


固まるアレイシア。


ライトニングが助太刀を願い出た以上自分にも化け物に立ち向かえる力があると思う本郷は決意した。


『お嬢、ここでお別れだ』


『でも・・・』


『ライトニングの旦那!俺をここから出すにはどーすりゃいいか教えてくれ』


ミューラーの攻撃を何とか受け止めるライトニング。


『黒き竜よ、その力をこの世に顕現せしめ我を救いたまえ。そう叫びなさい、急いで!』


『お嬢、考えるな。今はやらなきゃならないんだ』


アレイシアの目にじわりと涙が浮かぶ。

一呼吸置いて言葉を紡ぐアレイシア。


「黒き竜よ、その力をこの世に顕現せしめ我を救いたまえ!」


これがアレイシアと本郷の別れの言葉。


アレイシアの言葉の意味を分からない人たちの中でマリアンヌとクレイがアレイシアを驚きの目で見る。


「なぜ知っているのだ」


黒き鋼の竜の事はマリアンヌとクレイしか知らない、それをアレイシアが口にした。


マリアンヌは跪き目を閉じ祈る。


『黒鋼様、いま一度我らをお救い下さいませ。どうかそのお姿をお見せ下さいませ』


マリアンヌの祈りにわずかに反応する黒鋼の意識。


『聖女マリアンヌ、この縁は永遠と誓った我はその願いに応えようぞ』


アレイシアの身体が輝き始める。


『嫌!嫌!いやああああああああ!』


泣き崩れるアレイシアを抱き締めるマクシミリアン。

少年時代からなんとなく本郷の存在に気がついていた。

アレイシアを生まれて初めて抱き締める。

何を言ったら良いのか分からない。

ただ腕の中で震える少女をかばうように抱き締めることしか頭に浮かばなかった。


「ごめんよアレイシア、僕はどうすればいいか分からない。だけど君は必ず僕が守る!」


マクシミリアンはハンカチを取り出しそっとアレイシアの涙を拭いた。




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