第四章
早朝の海に銃声が響く。
敵が撃ってくるロケット弾も、極力発射する前に敵を殺す。
『一佐殿!前方に目標の島が見えてきました!』
伝声管から、見張り員の声が聞こえてくる。
「全船、Ⅿ2重機関銃展開!それと同時に、艦砲の射撃準備!」
「「「了解!」」」
伝令と同時に部下たちが数人走り、川村は伝声管に指令を飛ばす。
船内の放送で機関銃の準備をするようにと指令が入る。
「機関最大船速!揚陸隊出撃準備!揚陸艇の準備を進めろ!」
「「「了解!」」」
船橋にいる乗務員たちが走りまわって指示を飛ばす。
『雪村一佐!一番船重機展開完了!』
『三番船も展開完了しました!』
すぐにすべての船が展開を完了する。
「全船!射撃開始!敵船を殲滅せよ!」
『了解!』
「「「了解!」」」
号令と同時に、敵船にむかって銃撃が始まる。
「沢村。」
「はい?」
「揚陸隊の指揮は私がやる。貴官には船団指揮を頼みたい。」
「一佐!危険すぎます!」
横から沢村が叫ぶ。
「大丈夫だ。どっちに行こうとも危険なことに変わりはない。それに、誰かが指揮をとらなければならない。貴官には、この船団を頼むよ。」
「……分かりました。お任せください!」
『雪村一佐!揚陸隊、準備出来ました!』
「了解した!揚陸隊の指揮は、私が執る!」
『了解!』
「では、行ってくる。」
「いってらっしゃいませ。どうぞ、お気をつけて。」
敬礼する沢村を背中に、操舵室を後にする。
操舵室を出て、重機関銃の発射音が鳴り響く中、右舷の揚陸艇の横までくると、すでに揚陸隊は船に乗り込んでいる。
みな濃い緑の野戦服に、軍刀と拳銃、弾薬嚢を付けたベルト、ライフルをもって並んで座っている。落ちている薬莢や、弾丸が自衛隊の物と一緒だと色々面倒なのだそうだが、なぜか私には自衛隊の9mm拳銃が1挺渡されている。
隊員に手を借りながら、揚陸艇に乗り込み、一番前に座り、腰のベレッタを片方ずつ確認し、つぎに9mm拳銃を確認する。
拳銃をホルスターにしまうと、左腰に下げられた軍刀に触れる。
「……頼むぞ、相棒。」
すると、斜め後ろを航行している5番船で爆発が起こる。
5番船に被弾したのだろう。
しばらく経つと、船内放送で揚陸艇の発艦号令がかかる。
『揚陸艇、発艦開始!』
それと同時に船から降ろされると、すぐにエンジンがかかって、走り出す。
左右を見れば、すべての船から発艦した揚陸艇が走っている。
後ろでは、船が艦砲射撃を始める。
それと同時に、敵の船は一気に数隻吹き飛ぶ。
さすが、精鋭たちだけあってアナログ射撃でも命中精度が高い。
前を見ると、もうすぐ陸に到着する。周りを見ると、この船が一番早そうだ。
浜辺に乗り上げ砂浜に立った瞬間、腰のベレッタを抜いて走り出す。
「全体、私に続けー!!!」
「「「「うおおおおおおお!!!!!!!!」」」」
続々と揚陸する船から、どんどん隊員が降りてくる。
敵は軽機関銃を撃ってくるが、旧式だけあって命中精度はかなり低い。
対して、こっちも旧式のボルトアクションライフルだが、どの隊員も精鋭ばかり。それに発砲時反動の少ないボルトアクション。それのおかげで、旧式とはいえ命中精度がかなり高い。
ベレッタの2丁拳銃で戦いながら、弾が無くなれば太ももに挟んでマガジンを入れてスライドを戻す。
今度は反対のベレッタの弾が無くなり、太ももに挟んでマガジンを入れ、スライドを戻す。
隊員たちの決死の攻撃や、海上目標のいなくなった船からの艦砲射撃により、敵がどんどんと減っていく。
そして、敵の塹壕の前の遮蔽物に隠れると、ベレッタをしまって刀を抜く。
「全隊抜刀!!付き剣!!」
周りにいた隊員がライフルに銃剣を付けたり、軍刀を抜いたのを確認すると、腹に力を入れて叫ぶ。
「突撃ーー!!!!!」
「「「「「うおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」
敵塹壕に突っ込んで、敵に銃剣や軍刀を突き刺したり切り裂いたりしている。
それを横目で見ながら、軍刀で敵の首筋を切り裂いたり、体の中心を狙って突き刺して敵を殺す。
気が付けば、周りに味方はいなく、山の中腹で一人敵を切り殺していた。
少し下の所で、味方部隊が敵と交戦をしているが、すぐに敵が全滅し、味方部隊がどんどん登ってくる。
ふと制服を見ると、真っ白だった制服は、敵の返り血でかなり汚れている。
「…新調しなきゃダメかな。」
さらに上を目指すために、目釘を舌で舐める。
刀身のぐらつきが少なくなったのを、刀を振って確認すると、さらに上を目指して走り出す。
途中何人も敵の兵士がいるが、かまわず切り殺す。
頂上までつくと、ちょっとした砦の様な所につく。
すると、剣を持った兵士が走ってくる。
「……うちの兵装じゃ無いな。」
敵は明らかに自衛隊の者ではない。
敵は分からない言語で叫びながらこちらに走り寄ってくる。
さすがに息が上がってる。
海岸から頂上まで走って来たんだ。そりゃ当たり前だ。
襲い来る敵を、近くにいる順に斬っていく。
時には敵を刀の柄で殴ったり、けり倒しながら敵を倒していく。
周囲にいた敵を全員斬り終え、辺りには敵から流れ出した血や、切り裂いた体から漏れ出た体液、内臓などが転がっている。
ここまで人を斬れば、さすがに刃がボロボロだ。それに刃がもう曇っている。おそらく研いでも使い物にならないかな。
腰に提げていた鞘に刀をしまうと、そのまま捨てる。
「…くそっ!ベレッタはそこまでマガジン無いのに……。」
腰からベレッタを抜くと、砦の中に入っていく。
砦内からは、少なくとも10人は敵の気配を感じる。
砦内を探索しながら、敵を何人も撃ち殺していく。
斬殺と違って、銃殺だと内臓が飛び出にくい。まぁ小口径だってのもあるんだろうけど。
こう見れば、猟奇殺人の奴らの殺し方の美学ってのは分からない。
だって、人なんて撃てば死ぬし、斬れば死ぬし、殴れば死ぬんだ。
なんでわざわざ試行錯誤して殺し方の美学を求めるんだ。
あぁそうか。
「…私とは、殺す目的が違うのか。」
それは当たり前のことだ。
殺人犯たちが殺すのは、恨みやら快楽やらの為に殺す。
私は、祖国の為、祖国を守るために戦い、殺す。
ただ、目的の違いで、人殺しは正当化される。
ベレッタを構えて、砦の屋上に出てみると、この島の全体を見渡せる。
海上では、帆船が陸上に向かって砲撃をしている。
森の中からは、銃声と怒号が聞こえてくる。
すると、真後ろから殺気を感じ、振り返る瞬間にベレッタを構えるが、それと同時に構えたはずのベレッタの銃身が目線の端を飛ぶのに気が付き、とっさに反対側の手に握った拳銃を腰だめで撃つ。
とっさに銃弾を刀身で防いだためか、甲高い金属音が聞こえる。
それとほぼ同時に、後ろに飛び、殺気と距離をとる。
「おや、勘がいいですね。」
敵の姿を見ると、青年の様な顔で、背格好はまぁまぁいいぐらいの、西洋人と言った感じだ。
「さっさと殺されてれば、苦しまずに済んだのに。」
あぁ、こいつの相手は疲れそうだ。
手に握ったベレッタに違和感を感じて見ると、スライドが微妙な位置で止まってる。これはジャムやそう言ったものじゃなさそうだ。
スライドを引こうにもスライドが動かない。
「あら、不運なもんだ。」
「…っくそ!」
「君みたいなかわいい娘が、そんな言葉を言うのは褒められたものじゃないね。」
今すぐの復帰は無理だと判断し、ベレッタを投げ捨てる。
「武器を捨てていいのかい?その剣も使えないんだろう?」
「残念ながら、刃こぼれしてるんでね。だけど、使えないことはない。」
鞘から刀を抜くと、敵に切りかかる。
敵の男が防ぎ、刃がはじかれた瞬間に、2撃目の攻撃をたたき込む。
斬撃の速度は私の方が早いようで刃は当たるが、もう刃が丸くなってる為か大した傷はつかず、むしろその衝撃で刃が折れる。
敵も、多少体制を崩しながらもすぐに立ち直る。
「…君とは万全の状態で戦いたかったよ。」
「武器はまだあるんでね。」
腰に付けたホルスターから9mm拳銃を抜き、ハンマーをおろす。
「……まだまだ楽しめそうだ!」
銃声や砲声、怒号が響き渡る中、私には敵の叫び声が一番響いてるように聞こえた。
お久しぶりです。
最近は違う作品の投稿が多かったですが、気分転換にこっちの作品を投稿しようと思ったので、丁度書きかけの作品があったため、この作品の新章を投稿しました。
現在投稿している他の作品に対して、自分の力の入れ方の違いが顕著ですが、またたまにはメインで執筆してる作品以外の物もアップしていきたいと思います。
これからもよろしくお願いします。
ではでは~。