集合住宅【詩】
キジバトの沈黙
ほら あの梢でじっと動かないでいるよ
一言も漏らさず 仲間も得ず
丸い目にコンクリートを映しているよ
直立する壁
の向こうで 大勢が起臥している
その中で 女が目を赤くして皿を洗っている
守り 守られているのだ
それぞれの区画の中で 足掻いているのだ
昨日を蹴って 今日を踏み抜き 明日へ手をかけようと
「ふと顔を上げてみたら リビングの窓の向こう
枝が揺れて 鳥が翼を広げてたの
羽根の描く放射線が 綺麗だったわ
後光でも差しているかのようで 午後の光を浴びて
何かを守るみたいに両腕を広げてね
真っ赤な目でこっちを見てた
そしたら私 なんだかとても親密な気分になれたの」
あ! 飛んだ‼
デデッポーとも鳴かないまま
何も言わずに飛んでいったよ
マンションの外階段をなぞって
空へ空へとのぼっていったよ