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第四章 11節 シナリオライターへの道

第四章 12節が最終話です。あと1節。

 放課後……。Rはリュックを背負い、校舎の中を歩いていた。ずっとよそよそしく感じていた、すれ違う生徒達の笑顔が、今は少し愛しくうらやましい。


 季節はもう冬。10月から12月にかけて、クラスメート達は受験したい大学を決め、願書を出して勉強の追い込みにいそんしんでいたようだが、Rはまだ何も決めてはいなかった。もともと担任の教師も、母親も、Rの成績や心理状態を考え、大学進学を無理に薦めることはなかった。父が残してくれたお金と、母親の稼ぎで、卒業後もしばらくRは、働かずに食べていくことは可能だろう。ただ、そんな周囲の理解に甘えてばかりではいけないとわかってはいた。でも、今の自分に何が出来るだろう? これまでは、ただの惰性で学校に通っていて、授業にも身が入らず成績は下の下だ。得意なスポーツや、趣味があるわけでもなく、信頼し合える友人もいない。これまでは延ばし延ばしにして来たけれど、そろそろ決めないといけない。自分に出来ることって、何だろう?


「あれ? R? おーい」


自分を呼ぶ声に振り返ると、例の図書室の男子が、大量の分厚い封筒を身体の前に抱え、こちらを見ていた。


「悪い、ちょっと手伝ってくれる? 近くの宅配便の集荷場まで運ばないといけないんだ」

「うん、いいよ。半分持てばいい?」

「いや、駐輪場までついて来てくれるだけでいいよ。あとは自転車で何とかなる。さっきドアが開けられなくて、苦労したんだ」

「うん、わかった」


重そうな封筒を、身体の前に両手で抱えた男子は、バランスを崩さないように慎重に歩いた。


「これ、冬の文集。文芸部のOBに、毎回送ってるんだ。製本や郵送のお金のほとんども、そのOBの一部が出してくれてるんだ」


「へえ……、お金持ちがいるんだね」


「まあね、そういう人もいるし、余裕のない中から寄付してくれる人も、たぶんいると思う。俺も卒業したら、出来る限りのことはしようと思ってるよ」

「ふうん……。偉いね。あ、そう言えばあなたは卒業したら、どうするかもう決めてるの?」

「進路の話? そりゃあね。もう12月だからね。というか、そんなの3年になって最初に教師と相談しただろ?」

「そう、だよね……」


Rは自分のこれまでの学校生活を思い返し、なんて空虚な時間を送ってしまったのだろうと、後悔していた。Rの前を歩いていた男子が立ち止まり、振り返ってRの顔を見た。再び歩きながら、男子は言った。


「Rはまだ決まってないの?」

「うん……。成績もあまりよくないし……、得意なこととか、やりたいこともなくて……」

「小説は?」

「え、小説って、食べていけるものなの?」

「まあね、才能と、あとはやり方次第でね。俺はこの学校を卒業したら、シナリオライターなんかを育てる専門学校に通おうと思ってる。そのためのお金は、アルバイトと親からの借金で、なんとかするつもりだ」

「シナリオライターの、専門学校……」


 (そうか、その手があったか)


 (あ、Mさん……)


 (R、プロになるならプロに学ぶのが一番だ。俺が助言してもいいんだが、今の業界にコネがある人について、学んだ方がいいな)


 (そうなんだね。じゃあ私も、やってみようか?)


 (他にやりたいことがないなら、調べてみた方がいいな)


 (うん)


 (だが問題は授業料……、か)


 (そうだね……)


男子が再び立ち止まった。自転車の荷台に封筒を置き、荷紐でしっかりと固定した。


「専門学校、もしRが興味があるなら、俺が集めてるパンフレットを、明日見せてやるよ。Rも考えてみれば?」


「うん、ありがと」


 後はいいから、と男子は言ったが、Rは半ば強引に、集荷場までついて行き、その手続きの様子を眺めた。そうだ、私にたりないのは、こういう社会的な経験なんだ。私もいろいろ経験を積まなければ、もっと色々、出来るようにならなければ、とRは強く思った。

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