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第四章 10節 冬の記念文集

第四章 12節が最終話。このお話を入れて、あと3節。

 学校での授業は相変わらず退屈だったけれど、Rはあくびを我慢して、理解しようとがんばった。一時限目が終わった所で、文芸部のメガネっ子がRの机の上に、一冊の本を置いた。白地に金で、「冬の記念文集」と書かれていた。


「え、これって……」


「Rさんの作品も掲載させてもらった部誌。本当は秋に出そうと思ってたんだけど、ちょっと遅れちゃったから、冬の記念文集にしちゃったの」


「そうなんだね。いいタイトルだと思う。ありがとう」


ペラペラ、と数ページめくったRは、驚きの声を上げた。


「これ……、私の書いた小説が、一番最初に!」


「うん、タイトルが冬だからこっちがいいと思って、Rさんの『白き魔女の世界』をトップにさせてもらったの。この文集を暗示する、いい作品だと思う」


Rはうれしくて泣きそうになった。だが教室で、みんなの前で泣くわけにはいかない。必死で涙をこらえているRの表情を見て、メガネっ子がくすっと笑い、続けて言った。


「これで文芸部員としての、思い出が出来たかな? 次は3月までに、卒業記念の文集を作るからまたよろしくね、Rさん」


Rは文集を胸に抱いて席を立ち、ぺこぺこと何度も頭を下げながらお礼を言った。


「こちらこそありがとう。ほんとにありがとう。これからもよろしくね」


メガネっ子は笑顔でお辞儀をして、席に戻って行った。


 (よかったな、R)


 (うん……、びっくりだよ。こんな素敵な文集のトップに掲載なんてされちゃって、これから注目されちゃわないかな?)


 (大丈夫じゃないかな。文芸に興味を持つものなんて、人類のほんの一部。注目されるとしても、そんな一部の人間からだけだろう。俺もそうだったよ。俺が学生の頃は大人達から絶賛されていた。同級生は、なぜお前なんだと、嫉妬していたよ)


 (ふうん、嫉妬も怖いね)


 嫉妬……、それはRがこれまで、誰からも受けたことがない感情だった。感情を押し殺し、石のようにすごしてきた高校生活。そのため誰も、Rに興味を持たず、Rは、誰の攻撃対象にもならず、過ごしてこられたのかもしれない。こんな不幸な私に嫉妬する人なんて、いるのかな? そんな感情を向けられた私は、どう感じるのかな? と、Rは少し暗い気持ちになりかけたが、胸に抱いていた文集の表紙を再び見つめて、うっとりとなった。


 (でも嫉妬されるようになったら一人前、だね)


 (その通りだ)


二時限目開始の予鈴が鳴った。Rは白い文集をリュックにそっとしまった。これは私の宝物だ、とRは思った。

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