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第三章 6節 麻婆豆腐とスピリチュアル

 ぜえ、ぜえ、と、自転車を漕ぐRの息が切れ始めた。


 (Rちゃん、もういいわ、自転車を停めて)

 (うん……)

 (さて、これから私達3人での、脳内会議ね)


 (いや、まだRは家に帰らないといけないし、その後、家事もある。会議をやるなら、その後だ)


 (そう? わかったわ)


女神はあっさりと引き下がった。


 (じゃあ、帰るね)


 (ああ)


Rは自転車を、自宅に向けて走らせた。駐輪場に自転車をとめ、玄関を抜けてエレベーターに乗る。Mは少し不安になる。夏休みが終わり、Rが本を読む時間も減ってしまった上に、幽霊騒ぎと地獄門騒ぎ。いつになればRは執筆を始められるんだ。いや、あんまり俺が焦っちゃだめだ。あくまでRの意志にまかせないと。それにそもそも、俺と神の今回のバトルの内容は、第五巻の執筆で合っているんだろうか。あとでそれについても神に聞いてみようか。それともそれこそ、ルール違反かな?


 Rは、母親の帰宅にあわせて炊飯器のタイマーをセットした後、麻婆豆腐の準備を始めた。餃子も買ってきたが、それは母が帰宅後に、ごま油で炒めなおす予定だ。



 (もうすぐ麻婆豆腐が出来るよ)


 (そうか、準備が終わったら少し相談しよう)


 (うん。あ、そうそう、女神さんのことは、お母さんに伝えた方がいいかな?)


 (どちらでも……。いや、話が面倒臭くなりそうだから、気付かれたら答える、だけでいいかもな)


 (そうだね……)


 (Mはもう、Rちゃんの母親とも、面識あるんだったわね)


 (うん……。不用意に情報を漏らすのは反則かな、とも思ったが、これまでのお前の行動パターンから考えると、母親に迷惑がかかることも、もしかしたらあり得るかな、と考えた。神という存在自体は母親には伝えてはいないが、何かの危険が迫る可能性がなくはないことを、伝えておいた)


 (ふうん……。それは賢明だったわね)


 (やっぱり、何か仕掛けるつもりだったな?)


 (いいえ。それについては後でお話するわ)


 (ふん……)


 Rは一つまみの塩とともに豆腐を下茹でしてボウルに移し、挽肉を炒めて味を調えた。隠し味の豆板醤も忘れない。豆腐を入れ、中火にして煮込む。いい感じに煮えた頃に、母親が戻るという予想だが、帰宅が遅れたら、弱火にしておいた方がいいかもしれない。帰宅後に、水溶き片栗粉を加えてとろみをつけ、ゴマ油を入れれば完成だ。


 ガチャ……。


 玄関の鍵が開けられ、扉が開く。母親だった。いいタイミング。Rは玄関まで出迎え、母親の荷物を持った。疲れていた母親の顔が笑顔に包まれるのが、Rにはとてもうれしかった。


「R。たまにはMさんも、食事にお誘いした方がいいかな?」 母親は言った。

「ううん、たぶん大丈夫だよ。Mさんいつもコーヒーしか飲まないし」

「そう……、それならいいんだけど、ちゃんとしたお礼もしないとね」

「お礼?」


母親は、麻婆豆腐をすくっていたスプーンの手を止めてRを見た。


「うん。私の知らない間に、Rをしっかり見てくれる、お父さんが出来てた。そのお礼」

「え、お父さんじゃないよ? どちらかというと、お兄さんみたいなものかな」

「そう……、じゃあお兄さんになってくれた、お礼かな」


 (Mさん、どうする?)


 (うん、まあ、お礼は考えておいてもらって、今は食事はいい、と伝えておいてくれ)


 (わかったよ) Rはそう伝えた。


「残念だなあ。私もMさんに、すごく興味あるんだけどな」

「それって、お仕事的な興味?」

「うん、正直いうと、お仕事的な興味も、ないことはないよ。オカルト的にも、スピリチュアル的にも、文学的にもだけど、それだけじゃなくて、政治的にも世界平和的にも、外交的にも、Mさんは、いろんな分野に影響を与える可能性を持った人だからね」

「Mさん、重要人物なんだね」


 Rは思う。Mさんと合体したことは、私にとっては大きなチャンスだろう。今、私がもしマスコミに出れば、仕事なんていくらでも入ってくる。お金もいっぱい入ってくる。私は、暗いボッチから一気に平成のヒロインになるだろう。21世紀のシンデレラだ。でもそうするとMさんは、どんな気持ちになるだろう?


 もぐ、とスプーンにのっけた豆腐を食べるR。いい味付けだ。


 (Mさんあなたはどう思うの? 私がマスコミに出てこの状況をばらして、ひょっとしたらそれで、日本が変わるかもしれなくて、私はお金もちになって、お母さんも楽にしてあげられて。でもそんなことをして、Mさんは神様に消滅させられたりはしないの?)


 Mは黙っていた。Mのかわりに、女神が答えた。


 (そんなことを考えたら、Rちゃんがそれを実行する前に、Rちゃんの(ピーーー)を(ピーーー)して、(ピーーー)してやるからね。わかった?)


 (ひ、ひぎいいいい!! わかりました~~~)


「転生のことがばれると、Mさん消えちゃうんだって、たぶん駄目だね(汗」

「そうなんだ、まあ、そうでしょうね。しょうがないね」


 最大のお金儲けのチャンスを逃し、Rは悔しかった。でも母親は、そうでもなさそうだった。母は再びおいしそうに、麻婆豆腐と餃子を食べていた。


 (そうだよね。お金だけじゃないよね、大切なのは)


 (ああ)


 食事が終わり、お風呂に入ってパジャマに着替え、Rは母親に、「ちょっとMさんと相談がある」と言って、早めに自分の部屋に引きこもり、布団に横たわった。M、R、そして女神という豪華メンバーによる、脳内会議の準備が整ったのだ。

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