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第三章 3節 女神との駆け引き

 メガネっ子は、暗くなり始めて街灯のさびしく灯った広い神社で、自転車を停めた。


 (なるほど……、ここならオーラもすぐに復活しそうだな。まあ、フル充電とまではいかないが)


Rはだまって自転車を停め、メガネっ子を見つめる。メガネっ子のメガネが、暗闇にキラ! と光った。


「Rさん? 無茶なことはしないで。心配だから」


「無茶? 何のこと?」


「とぼけないで。あの図書館の、霊のことだよ。アハハ! アハハハハ!!」


 ぞく、とRは鳥肌に襲われる。あの時と同じだ、Mさんとエッチなことをしていたときに、割り込んできた女神。黒い蛇を操る、あの女神の放つ空気と。


「そうよ。私は女神。Rちゃん、あなたのご主人様よ。あの霊と関わっては駄目。あれも私のペットなの。Mにアヅマカガミなんて使われたら……」


「ペット???」Rは叫んだ。


「そう、ペットよ私の」メガネっ子は、くす、と笑った。


 (R、俺にコイツと喋らせてくれ。いいな)

 (う、うん……。別に、止めないよ……)

 (ありがとう)


 MがRの身体からすっと抜け出し、Rの横に立った。


「あらあらMさん、おひさしぶり。あの時以来ね。オホホホホwwww」


 ちっ、とMは舌打ちをした。神の技による快感で無様に白目をむき、床に転がっている自分を想像したのだ。神はうっとりとした表情で言った。


「あのときの快感、すごかったわ。御馳走様でした。やっぱりこの世で一番の楽しみは、子作りの快感ね。おほほほほwww おほほほ!!」


「黙れ! 俺達は子作りなどしてない。すべてはお前の仕掛けたトラップでしかない!」


女神は、ニヤ、と笑った。


「無様に白目をむいておきながら、よくいうw」


 ブン……、とMの右手が音をたてる。Rが驚いて音のした方を見ると、Mの右手が、怪しげなオーラを放っている。


「Mさん、やめて! もう少しこの人の話を……」


 憎々しげな表情で、Rを睨むM。しかし、Rの怯えた表情を見て、鬼気迫るMの形相は少し和らいだ。震える声で、Mは言った。


「わかったよ……。おい、言いたいことがあるなら早く言え!! 次に俺を怒らせたら、俺はアマテラスを使う」


ぷっ……、と女神は噴出した。


「その技を、一体誰から授かったと思っているのでしょうねえ。おほほwww」


 Mの歯が、ぎりり、と音を立てた。圧倒的な女神のパワー。その前に、Mさんでさえもなす術がない。その時、心の中でMが、小声で言った。


 (R、大丈夫だ。コイツはさっきの霊がここに来るまでの時間を計りながら、俺とのバトルを楽しんでいるんだ。こちらも少し、手の内を見せてやることにしよう。アマテラス以上の癖のあるカードを、俺は一枚持っている。最悪の場合は、そのカードとアマテラスの二択で、俺はコイツに勝負を挑もうと思う)


 (Mさん……)


そんな二人の思考に、もうひとりの思考、女神の思考が割り込んだ。


 (二択? 三択でしょう? アマテラスとアヅマカガミと、ヤタガラス。わかってる。私は、同じ手は二度とは食わない)


 ニヤ、とMが不敵に微笑んだ。Rはその微笑みを見た。女神は手持ちの『カード』から、次の一手を選んでいた。その顔に、あまり余裕はなかった。


Mは思った。


 (ここで引くお前ではないよな? さあ来い! まず第一ラウンドの決着をつけてやる!)


女神は一枚の『カード』を選んだ。その手がかすかに震えていた。

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