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第三章 1節 図書室の少女の霊

 Rは少しずつ、クラスメイトと打ち解けていった。Rの心を閉じ込めていたあきらめという結界が、すこしずつ解かれ始めている。一度その封印にほころびさえ出来てしまえば、あとはもう楽だ。すべて自然の治癒力、復元力に、まかせてしまえばいい、とMは思っていた。


 昼休みは図書室に行き、PCで色々調べるのが、Rの日課となりつつあった。お昼休みのPCの貸し出しは、結構人気だったけれど、「図書室の怪談」が噂される窓際の一席だけは、いつも空いていた。一学期に図書室でRと話をした男子は、やたらとRのことを心配しちょっかいを出してくるが、Rは取り合わない。Rは臆病な普通の女の子で、怪談は苦手だったからだ。もし男子から、怪談の内容を詳しく聞いてしまったりしたら、Rも怖くなってPCを借りられなくなってしまうかもしれない。Rはそれを避けたかったのだ。


「ねえR、お前その席借りはじめて何日目?」


「3日目……、4日目だったかな?」


「俺、心配なんだよね。俺の席と交換しない? ずっとは無理だけど」


「ずっとは無理って、どういうことなの? 私の替わりにあなた何かが起こるんだったら、私は譲らないよ」


男子は小声で言った。


「その席を連続で借りていると、そのうちその人は不幸になるんだ。理由はわからないけどね」


「うーん……、ちょっと待ってね、考えるから」


 (Mさん、人を自殺とか、失踪させる幽霊って、あり得るの?)


 (ああ。さっきその男子の記憶を読んだ。この席をよく使っている者に、なんらかの不幸が起こっているのは事実。そしてもう一つ。この男子自身も、その少女の霊を見ている。危険で邪悪な霊だ。忠告に従っておいた方がいいな)


 (そうなんだ! 幽霊なんて、ほんとにいるんだね)


Rは男子に視線を向けた。

「わかったあなたの言葉に従うよ。明日から別の席にするよ」


「そうか、よかった!」


予鈴が鳴り、PCを使っていた者達が立ち上がった。その日の放課後……。


 Rは学校の近くの公園から、図書室の窓を眺めていた。


 (あの男子は、ここから少女の霊をみたんだね?)


 (ああ……。時間もちょうど今くらい……。だがR、やっぱり俺は反対だな。幽霊には関わらないのが一番だ。なぜかというと、彼らはマイナスのエネルギーを持つがゆえに、この世にとどまっている。そのマイナスのエネルギーが、生きている者に害をなすんだ)


 (そのマイナスのエネルギーって、悲しみとか怒りとかの、負の感情だよね? だったら、だからこそなんとかしてあげなきゃ)


Mは黙った。Rの持つこの自信はなんだ……。幼い頃の記憶が全く読み取れないRの過去。その闇の中に、何かがあるというのか……。もしそうなら、俺もそれを見届けたい、とMは考えていた。


 10分、20分……、30分そうして、図書室の窓を見続けたが何も起こらない。Rが諦めかけた時、Mが周囲の空気の変化を感じ取った。


 (R! 気をつけろ! 空気が変化した!)


 (うん、私達の後ろに、誰かいるよ。たぶん図書室の女の子だね)


Mは驚きを隠しながら、背後に監視の目を集中させた。見えた……。背後に白い服につつまれた女の子が立ち、Rを見ていた。うらめしそうな目で。Mは戦慄した。


 (俺としたことが……。こんなに近くに、Rに危険が迫るまで、気がつかないとは……)


RはそんなMの心配をよそに、すばやく背後を振り返った。

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