表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

炎の竜、レムクルド

 俺は住んでいたダンジョンのダンジョンコアを取って崩壊させた後、『飛行』の魔法を使って空を飛んでいた。


 たまに鳥型の魔物が襲ってくるが、『拘束』の魔法を使って動けなくしてやれば勝手に落ちていく。


 念のため地上から人に見られないように上空を飛んでいるので、鳥型の魔物が地上に落下して死ぬ前に『拘束』の魔法が解ける。


 落下している間に距離を離せればいいので、拘束する時間を短くしていたというのもあるが。


 この世界は身分制度がある国が大多数で、権力者の都合で殺されることもある。 


 圧倒的な力がなければ、権力者に何らかの事情で目をつけられると抵抗できない。


 だから、この世界の人――人間族やエルフ族、ドワーフ族など様々な種族がいる――に接触するには、もっと強くならなければいけない。


 そのため、人がいない場所にあるダンジョンを『魔力視』の魔法を用いて空から探していた。


 定期的にダンジョンの魔物が狩られないと、ダンジョンから魔物が外に出てくる。


 なので、魔物が多く生息している所の周辺にダンジョンがあることが多い。


 それを目印にしてダンジョンをいくつか見つけたが、どれも俺が住んでいた小さいダンジョンと同じくらいしか魔力を纏っていなかったので無視していた。


 ダンジョンは世界中にある。


 小規模から中規模のダンジョンがほとんどだが、今回俺が探しているのは大規模なダンジョンだ。


 ダンジョンは成長するほど大量の魔力を持つことになるので、小規模なダンジョンと大規模なダンジョンでは、魔力の保有量に比べものにならないほどの差ができる。


 魔力が豊富にある大規模なダンジョンほど強力な魔物が生息する。


 それらの魔物を倒すのは面倒ではあるものの、その分多くの魔力を放出してくれるので魔力量を増やすにはちょうどいい。

 

 魔力量を増やす以外の目的には、魔法を使う魔物を観察することや戦闘の経験を積むことも含まれる。


 戦うということは、命を失う可能性があるということ。


 だから、死なないために戦闘の経験を積み、戦闘の技術を向上させる。


 今までの魔物との戦いは全て、戦闘の準備ができる時間があった。


 熊の魔物は寝ていた。蝙蝠の魔物は距離があった。


 他にもダンジョンコアが生み出したばかりの魔物と戦うことがあったが、これまで一度も不意打ちをされたことはない。


 戦闘を行った回数は少なく、追い詰められたこともない。


 俺は戦闘の経験が圧倒的に不足している。


 経験を積めば、戦闘での状況判断が素早くなり、無駄を省くことができる。


 戦闘で隙がないほど、生き残る可能性が出てくる。


 大規模なダンジョンでは、その戦闘経験を培えるだろう。


 高速で飛行しながら、ダンジョンを探すために地上にいる魔物に注意を払っていると、ある地点から魔物を見かけなくなった。


 俺は、周囲の魔物が警戒するような魔物の縄張りに入ったかもしれない、と思って引き返そうとした。 

――瞬間、荒れ狂う風が襲ってきた。


 俺は即座に『結界』の魔法を使った。


 暴風によって、結界に折れた木や石が叩きつけられ、眼下には土埃と木の葉が大量に宙に舞っているのが見える。


 俺は『結界』の魔法を維持しながら、高速飛行を不規則な軌道で行う。


――斜め下前方の土埃の中から右隣を貫く太い熱線。


 その追撃は、俺が直進の高速飛行を続けていたら直撃していた。


 結界があるとはいえ、耐えられるかはわからない。


 できる限りの攻撃は避けたい。


 土埃のある範囲を脱すると、前方に五体の赤い竜が待ち構えていた。


 その五体の竜は、俺に向かって一斉に熱線を放つ。


 四つの熱線は回避することができたが、一つだけ間に合わなかった。


 その熱線は結界の左前方に衝突し、後ろに受け流された。


 この結界は正面から攻撃を受け止めずに、威力の大部分を結界の球面に沿って受け流すものだ。


 耐久性を確かめていなかったので不安だったが、この程度の攻撃なら大丈夫のようだ。


 だが、わざわざ戦う必要はない。


 そう思い、どうやってこの五体の赤い竜を撒こうか……と考えていると、他の竜とは異なる雰囲気を感じる一体の竜から光が広がっていく。


『我は……炎の竜、レムクルド。お前の名は?』


 その竜は言葉を発していなかったが、俺に言葉が届いた。


 さっきの光は意思疎通をするための魔法だろう、と判断して普通に答えることにした。

 

「俺はカイトだ」


 地球に居た頃の名前ではなく、この世界での名前を答えた。


『そうか……カイト、という名か。なぜ我が領域に入ってきた?』


「ここがレムクルドの領域だと知らなかった。すまない」 


 勝手にレムクルドの住処に入ったことは事実なので、謝罪した。


『まぁ……よい。カイトは何をしていたのだ?』


「鍛錬のために大規模なダンジョンを探していた」


『ふむ。それなら……南西方向にあったはずだ。行ってみるといい』 


「ありがとう。今度はレムクルドの領域に入らないように気をつける」


 俺はレムクルドに礼を言い、教えてもらったダンジョンへ向かった。


 意思疎通のための魔法も観察できたので、炎の竜レムクルドに会えたのは良い機会だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ