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小さなダンジョン

 ダンジョンは熊が寝ていた場所の近くにある洞窟だ。


 ダンジョンは魔力を纏っているので『魔力視』の魔法で見つけることができた。


 ダンジョン内には多くの魔物が生息しているので鍛錬の場として用いられることもあるが、一般的には多様な資源を得られる場所だと認識されている。


 ダンジョン内は特殊な環境になっており、その影響で武器に使いやすい鉱石や傷を瞬時に治す薬草などが見つかる。


 しかし、それらの資源を得るためには命の危険を冒して魔物と戦わなければならない。


 魔物の素材にも使い道があるので一概に魔物が邪魔とは言えないが、死ぬ可能性があるのは変わりない。


 ダンジョンも無数に存在するので、多くの資源が手に入る有益なダンジョンもあれば、害にしかならないようなダンジョンもある。


 そこで、権力者達は兵を使って有益なダンジョンを独占したり、害になるダンジョンは放置したり、ダンジョンの力の源であるダンジョンコアを破壊して消滅させたりする。


 有益なダンジョンは見つかり次第、権力者達に独占されるので、冒険者は余ったダンジョンで稼ぐしかない。


 必然的に冒険者は稼ぎがあまり良くないので、武器や防具、怪我の治療費を払えずに借金をして奴隷にされるか、魔物に殺されることが多い。


 実力をつけて権力者に好待遇で雇われる冒険者もいるが、そんなことは稀だ。


 それでも、立身出世を夢見て冒険者を志す者が後を絶たない。


 そんな冒険者が死ぬことが多いダンジョンの中に入ったが、あの巨大な熊の魔物の影響か、入り口付近に魔物はいなさそうだ。


 ダンジョンに生息する魔物は食事を必要とせず、魔力を栄養源としている。


 ダンジョンでは植物も魔力を栄養源としており、その一種である発光する苔が生息していると視界に困ることはないらしいが、このダンジョンに発光する苔は生息しておらず、視界が悪くなってきたので『暗視』の魔法を使って視界を保った。


 入り口から随分歩いてきたが、このダンジョンはこれまで一本道だった。


 ここまで魔物を一切見かけなかったので、さすがに魔物が出てくるだろうと予想しつつ進んでいると、奥から黒い塊がこちらに向かって来るのが見えた。


 遠くを見るために『遠視』の魔法を使って確認してみると、それは数え切れないほどの蝙蝠の魔物の大群だった。


 何らかの魔法を使っているのか、蝙蝠の魔物の大群は高速で飛んでいた。


 そのまま俺はダンジョンの奥へと歩き続け、蝙蝠の魔物の群れがある程度迫って来たときに魔法で水の壁を作った。


 蝙蝠の魔物の大群は飛ぶ速度を緩めることができずに水の壁へと飛び込み、水に囚われた。


 全ての蝙蝠の魔物が水に囚われたことを確認すると、雷撃の魔法を水の中へと放った。


 断末魔の苦しみを感じることなく、一瞬で蝙蝠の魔物の群れは全て息絶えた。


 そして、常に使っている『魔力視』の魔法によって、一斉に魔力を放出し始めるのが見えた。


 ダンジョン内では、放出された魔力の半分は大地の代わりにダンジョンが吸収してしまうので、『吸魔』の魔法で魔力を全て吸収した。


 蝙蝠の魔物一匹が持つ魔力量は、ダンジョンの入り口にいた熊の魔物の一割もないが、これほどの数の群れともなると、熊の魔物から吸収した魔力量とは比べものにならないくらい多くなるようだ。


 魔力量は大規模な魔法を数十回使えるまで増えたが、俺はまだ魔力量を増やせる機会があれば増やしていくつもりだ。


 それに魔力で魔方陣を作る際に時間がかかり、魔法の発動時間が遅いと感じるし、知識を得たとはいえ、魔法を使えるようになって一日も経ってないので、研鑽の余地がまだ多く残っている。


 それと、やはりこの世界の全ての知識を得たわけではないようだ。


 魔法で殺した熊や蝙蝠の魔物の名前も知らないし、森の中では名前だけは知っているが効能は知らない植物などもあった。


 だから、魔法に関する知識も全て手に入れたわけではないだろう。


 落ち着ける場所が見つかればそこで魔法の研究でもするか。


 大量の蝙蝠の魔物の死骸は使い道がなさそうなので、ダンジョンの床に放って置いた。


 しばらくしたら、ダンジョンが吸収するだろう。 


 それにしても、このダンジョンは単純な構造だけど殺意が高いな。


 一本道しかないのも、あの蝙蝠の魔物の速度を活かすためだろう。


 逃げ場がないから、あの蝙蝠の魔物の速度を超えて逃げるか、魔法でまとめて攻撃するしかない。


 剣士などの武器使いは言うまでもないが、魔法でまとめて攻撃しても、撃ち漏らしたら他の蝙蝠に襲われて終わりだ。


 土などで壁を作って自爆させる方法もあったが、あれだけいると壊されそうだったからな。


 考え事をしながらダンジョンの奥へと進んでいたが、『索敵』の魔法で敵がいないか警戒していた。


 そして、このダンジョンの最奥に着いた。


 装飾のない台座の上で、水晶玉のようなダンジョンコアは仄かな光でダンジョンを照らしていた。 


 小さいダンジョンだと思ったが生まれたばかりのダンジョンなのだろう、ダンジョンの力の源であるダンジョンコアも小さかった。


 ダンジョンコアはダンジョンの全てを司る。


 ダンジョン内の生物が死んだ際に放出する魔力をダンジョンは蓄え、生物の死体や武器や防具なども魔力に変換――魔力に変換できない物はほとんどない――して蓄える。その魔力を使って魔物を生み出し、ダンジョンを成長させる。より多くの魔力を得るためにダンジョンの領域は徐々に広がり、ダンジョン外の生物を招いてダンジョン内で仕留める。例えば人間族の場合、薬草などの貴重な資源で誘き寄せている。ダンジョンコアを破壊されるとダンジョンは崩壊するのでダンジョンコアのある最深部に行くほど、防衛のために強力な魔物がいる。生まれたばかりのダンジョンほど魔力があまりないので構造は単純化し魔物は弱くなる。逆に長い年月を経たダンジョンほど魔力を豊富に持つので構造は複雑化し魔物は強くなる。


 少なくともダンジョンコアは、生物の死体や武器や防具などを魔力に変換する魔法や魔物や植物を生み出す魔法、ダンジョンの領域を広げ、構造を変化させる魔法を使っているようだ。


 俺が得た知識にはなかったダンジョンコアが使う魔法に、それぞれ『魔力変換』魔法、『生命創造』魔法、『ダンジョン創造』魔法と名付けた。


 俺はこれら三つの魔法をダンジョンコアを調べて使えるようになるまで、このダンジョンに住むことにした。

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