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異世界へ

 不思議な感覚。


 異世界に行く途中だろうか。


 小さな青い光となり、深い闇に覆われた空間を移動しているようだ。


 何もせずとも進んでいるので、この空間や小さな青い光となった自分のことを考えていた。


 すると、この暗闇の空間へ徐々に光が入り込み、やがて色鮮やかな景色に変わった。


 辺りを見渡すと、草花は涼しげな風が吹くことによって波のように揺れ、青空に浮かぶ雲が太陽の日差しを遮っている。


 緩やかな流れの川もあり、その傍らには広大な森が広がっている。



 不意に、一枚の紙が現れた。


 それは、ゆっくりと手元まで落ちてきたので手に取った。


 その紙の表面には、この異世界について三つだけまとめられていた。




 ・ダンジョンが無数に存在し、そこには魔物がいる。


 ・ダンジョン外に出てくる魔物もいる。


 ・誰もが魔力を持っているので、魔法を使うことができるようになる。




 その紙の裏面を見てみると、『この世界には魔物がいることがわかっただろう。異世界に来たばかりのお前達がすぐに死なないように、何らかの力を与えよう。しかし、あまりに大きな力は与えられない。力を得るには、この紙を胸に当てながら、望む力を願うだけでいい』と書いてあった。


 どんな力があれば良いのか、少しの間考え込んだが、今の状況では例え魔物を倒せる力を得たとしても、水と食料がなければ力尽きてしまう、と思った。


 この世界に来たばかりで、現在地はもちろん、どこに村や町があるのかもわからない。


 運良く村や町を見つけることができたとしても、この世界の通貨を持っていないので、水はともかく食料を買うことはできない。


 どんな力を望むのか、を決めると紙に書いてある通り、紙を手にしたまま胸に当て、『この世界のできる限り多くの知識』を手に入れたいと願った。


 すると、胸に当てていた紙が光り出し、そのまま体の中へ入った。


 一瞬、これ以上何も起こらないな、と考えていると、徐々に知識が得られ始めた。


 数分経つと、次第に新たに得る知識は少なくなり始めた。


 得られる知識がなくなると、思わずため息が出た。


 やはり、負荷のかかる方法で多くの知識を記憶したのか、少し疲労感を覚えたが、それもすぐに収まった。


 休憩を取りたかったが、この場所もいつ魔物が現れるかわからない。


 願ったのは、直接的には魔物を倒すことができる力ではない知識なので、早急に魔物への対抗手段を得なければいけない。


 この世界では誰もが魔法を使うことができるようになるので、魔法を覚えることにした。


 俺が得た知識の中には、魔法の知識を貴族などの権力者が独占しているせいで、一般の人は小さな火種を出すことくらいしかできないというものあった。


 魔法使いは武器を所持した者とは違って危険性がわかりにくく、取り上げることもできない。


 それを危惧した権力者は一般の人が魔法という力を得られないようにしている。


 それでも、魔物を倒す仕事を主に行っている冒険者が少し魔法を一般の人にも広めている。


 それも権力者は止めたいが、火種を出すくらいの簡単な魔法はすぐに使えるようになるので取り締まろうにも限りがない。


 なので、それは黙認しているが高威力の魔法が使えるとなれば別だ。


 例え、冒険者であっても権力者の兵とならなければ、様々な手段を用いて排除される。


 冒険者には後ろ盾がないので、このような問題にほとんどの者が対応できない。


 冒険者達は過去、何度も冒険者ギルトと呼ばれる冒険者達の集団を作ろうとしたが、その度に権力者達は妨害し、自分達の地位が脅かされないようにした。


 権力者は強い冒険者を好待遇で雇うので、残るのは中堅以下の実力しかない者だけだ。


 後ろ盾のない冒険者はその程度の実力しかないので、多少まとまったとしても簡単に排除されてしまう。


 つまり、権力者の庇護下にいなければ、この場所から生き残るために魔物を倒せるような高威力の魔法を使えるようになったとしても、権力者に知られると殺される可能性があるということだ。


 権力者の庇護下に入れば、自由は妨げられる。


 それが嫌ならば、誰にも干渉されない新しい居場所を作る必要がある。


 そのためにも、魔法という力は必要だ。


 魔法を使うには、魔力を使って魔方陣を作らなければならない。


 魔方陣が完成すると、魔法という事象が起こる。


 また、火種を生み出す魔法陣と水を生み出す魔法陣は同じではない。


 魔法の種類によって、魔方陣の構成も変えなければいけない。


 正確に言えば、同じ種類の魔法でも細かな調整をするためには魔方陣を変える必要がある。


 例えば、魔方陣を構成する際に使う魔力の量を調節して、水を生み出す魔法ならば水の量を調整できるようになっているが、魔方陣を変えなければ水の温度は変わらない。


 しかし、魔方陣を自由に変えられる者はいない。


 なぜなら、魔方陣を自由に変えるためには、望んだ事象を起こす魔方陣を構成する能力がいるからだ。


 そのためには、膨大な量の魔方陣に関する知識が必要だが、基本的にこのような知識は研究されても秘匿されるので、必要となる知識を集めることは難しい。


 なので、この世界では、魔法を使う魔物を調べて、今までに偶然作ることができた魔方陣を覚えて、その通りに魔力を使って魔方陣を作り、魔法という事象を起こすことが一般的だ。


 だから、この世界の魔法使いは限られた魔法しか使えない。


 だが、俺は違う。


 得た知識の中には、魔方陣を構成するための知識も含まれていた。


 それにより、この世界の魔法使いとは違って知識の制限がないので、自由に魔法を使うことができる可能性がある。


 本来、知識を得たいと願ったのは、魔法という魔物を倒すことができる力を得るのと同時に、この世界の文化がどのようなものか知るためだった。


 この世界の住民の言葉がわからないという致命的な問題が起こる可能性があり、話をすることができたとしても、この世界の知識がないせいで普通に暮らすことはできないだろう。


 村や町にたどり着けなかった際にサバイバルを行うためというのも理由にはあった。


 つまり、魔法はこの世界で一般的な程度しか使えないだろう、と考えていたいたわけだが、この世界の魔法の技術を超える知識を得られるとは思わぬ副産物だった。


 また、魔方陣を作るために必要な魔力を操作する知識も含まれていた。


 魔力を操作して動かすこと自体は息をするように誰でも簡単にできるが、魔力を操作して魔方陣を作るようなことは訓練をしないと難しい。


 それをこの知識のおかげで、初めからあまり複雑ではない魔方陣で構成された魔法は使えるようだ。


 今は魔力を操作して複雑な魔方陣を作ることができないが、魔力の操作技術を磨けばいつか必ず作ることができるようになるだろう。


 それまでは、一部の魔法だけで生きていかなければならないが、十分だろう。


 問題なのは俺の魔力の量が少ないことだ。


 魔力を消費しても時間経過で回復するが、それには上限がある。


 その上限が低いと必然的に魔力量も少ないので、魔力を使う魔法も頻繁には使えない。


 だから、できる限り魔力量を多くしたいのだが、そのためには魔物などの生物を殺す必要がある。


 魔物などの生物が死ぬと魔力を周囲に拡散する。その魔力を生物は吸収することができ、魔力量の上限はその吸収した魔力分上がる。吸収できる魔力は死んだ魔物の近くにいるほど多くなるが、複数の生物がいるとそれぞれが魔力を吸収するので、多数になるほど吸収できる魔力の量は少なくなる。


 今の俺の魔力量は、弱い魔物を殺す程度の魔法を何度か使えるくらいしかないので、食料となる魔物を狩りながら魔力量を増やしていこうか。

 

 魔力を操作して魔方陣を作り、冷たい水を魔法で生み出して喉の渇きを潤した。


 初めて使った魔法に感慨を覚えながらも、魔物がいるであろう森の奥へと俺は進んで行った。 

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