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hello.goodbye summer⑫


 陽葵の言っていたコンサート当日。私と千倉は、それぞれの楽譜を持ってステージに立っていた。


 舞台は、テレビ報道もされる特大ステージ。まさに、晴れ舞台にはぴったりな場所だ。


 本当は、こんな所に、しかも期待の星である千倉と一緒に演奏なんて言語道断だけど、父親の名前と、陽葵の作っていた曲を演奏するからという理由で特別に演奏許可を貰えた。正直、血縁者の2人の名前がここまで大きな影響力を持ってるなんて、思いもしなかった。


 その代わりとして、私は、音楽に愛された男の娘っていう看板を背負うことになったけどね。千倉家を呪縛から解放するためだったら、安い代償だろう。


「いよいよだね」

「あぁ」


 こんな大舞台に立ったことないせいか、緊張で手が震えているのが嫌でも分かった。大丈夫。あれだけ千倉と考えて完成させ、弾きこんだ曲だ。


「……向日葵」

「なに?」

「この演奏が、千倉家を救うとか、大舞台だとか、そういう事は今は忘れろ」

「え?」


 何を言ってるんだこいつは。と顔を上げた瞬間、唇に触れる千倉の唇。こいつはまたぁ!


「ちょっ!」

「楽しもうぜ向日葵」


 そう言って笑う千倉を見ていたら、なんか、やけに体に力が入っている自分が馬鹿らしくなってきて。くすりと笑った時に顔に触れた指先からは、いつも間にか震えが消えていた。


「そうだね。楽しもう」

「おう」


 こんな大舞台、そうそうお目にかかれないんだ。ここで、千倉と最高の演奏をして、最高の笑顔であの大爺様をぎゃふんと言わせてやる。


 ぐっと拳を握り、千倉に続いて、袖からステージ上がる。


「さぁ」


 楽しい演奏を始めようか。

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