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取り戻した朝

 朝の6:30 七海と詩織の部屋。


 子ども部屋に、朝を知らせる目覚まし時計の強烈なベルが鳴り響いた!

 自分のベッドからガバッと飛び起きた七海が、自分の枕を目覚まし時計に叩きつけた。


「シオリ!シオリ起き・・・」


 ふと気がついた七海。

 今日は彼女が自分に家に戻ることができて、最初に迎えた日曜日だ。

 さすがに日曜日までは、彼女の父親は七海たちを起こしにくるようなことはしない。

 七海は自分のベッドで起き上がって少しボンヤリすると、毛布の中をのぞいた。


 彼女が失踪する前。

 いつも七海のベッドに潜りこんできていた詩織の姿が、今は見えない。

 少し心配になった七海は、ベッドから立ち上がると詩織のベッドをのぞいた。

 ベッドの中には、安心しきった表情で眠り続ける詩織の姿がある。

 

 七海が帰ってきてから、詩織の夜泣きはピタリと止んでいた。

 それは当然のことかも知れないが、七海は詩織があの世界でヒカルと出会ったことが、もしかしたら詩織に何かの成長のきっかけを与えたのかも、と密かに思っていた。


 シオリ、ありがとうね・・・。


 ふと七海が詩織の毛布を見ると、中で小さくモゾモゾと動いているものがある。彼女は詩織が起きないように、注意しながら毛布をめくった。

 するとそこには・・・。


 まるで抱きマクラのように、詩織に抱かれて眠るティムの姿があった。

 こちらもまた安心しきった表情で、ピタリと詩織にくっついて眠っている。

 椎名家の新たな一員として迎えられたティム。

 これから先もこの小さなネコは、きっと詩織と一緒にこの家で大きくなっていくのであろう。


「そっか・・・。もうあたしが一緒に寝る必要はないんだね・・・。」


 妹の小さな成長を感じ取った七海は、それがなんとなくうれしかった反面、

ちょっと寂しいような気もして、しばらくの間、黙って詩織の寝顔を眺めていた。

 そして何を思ったのか、ふいに詩織のベッドの中に潜りこむと、彼女を優しく抱きしめた。


「シオリ。今日だけ、あんたがあたしの抱きマクラだよ♪」



 カーテンの間から、陽の光がやわらかく射しこむ日曜の朝。

 ベッドの中で安らかに眠り続ける七海と詩織、そしてティム。


 これから先、再び彼女たちは大きな波乱に巻き込まれていくのだろう。でも今はしばらくの間、安らかな時間を一緒に過ごして欲しい。


 地球に迫り来る『黒い海』旧支配者ハスター。

 ティムを狙うB・Dの影。

 今、数奇な時の歯車はきしみと共に鈍く動き出し、彼女たちの不思議な運命の日記に、新たなページが書き加えられる・・・。





次話【赤い本 ~読む人により内容が変わります~】

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