一番○○い命
【第30回フリーワンライ】
お題:まるで大きな赤ん坊
フリーワンライ企画概要
http://privatter.net/p/271257
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
宇宙は、
我々の宇宙は約138億年前に誕生したとされている。
勿論、記録などされているわけもないし――よしんば記録されていたとしても人類が気軽に参照出来るはずもない――、それは種々の観測結果によって導き出された概算値である。
それも、今現在我々が依拠する物理学、それによって得られる観測データが永世普遍であり、開闢以来変化していないというか細い前提によって成立している。幼児が親の庇護を絶対の安心と感じるように、ただただ無垢に絹糸のように脆い前提を信じ切るより他はない。
ともあれ、おおよそそれくらいの昔に、「無」から生じた宇宙は膨張を始めた、と考えられている。
宇宙は半径約465億光年の球体をしている。太陽系の存在する天の川銀河はだいたいその球体の中心付近にある。
というか、宇宙の中心は地球である。
種を明かすと簡単な話だが、現在の科学では半径約465億光年先までしかわからないのだ。要は、地球からしか観測出来ない人類にとっては、地球を中心にしか宇宙を見られないので、必然的に地球が中心にならざるを得ないというわけだ。
球状宇宙は大半がダークエネルギーと少数のダークマターで満ちていて、そしてわずかばかりの通常物質を内包している。わずか五パーセントの物質で銀河や夜空の無数の星が出来ている。まったく馬鹿げたスケールだ。
宇宙についてはほとんど無知と言って良いし、宇宙の“外側”についてはもっとわからない。「無」があるとは言うが、その「無」はどれくらいの大きさなのか、「無」は別な宇宙を含んでいるのか、半径約465億光年以内ですらまるで不理解な我々には見当も付かない。
あるいは、こう考えられるかも知れない。宇宙が生まれてから約138億年。宇宙は“まだ何者にもなっていない”。だからわからないのだと。
胎児が自分の手の長さや、体のメカニズムを知るはずがない。知る必要もない。それは成長するに従って、必要な時に必要なだけ理解していくものだ。
もしも宇宙が“まだ何者にもなっていない”赤子なのだとすれば、その体内に寄生する菌にも満たない人類が、その全体像を知ることなど出来るはずもない。
この途轍もなく大きな赤ん坊が、真に成長した時、宇宙とその外側についてこの上もなく明快な答えを得られるのかも知れない。
それはいつか天啓のように訪れるだろう。
音か、光か、あるいは物体か、もしくは単なる数字として。例えば42。
だから、
「早く大きくおなり」
『一番○○い命』・了
自分で書きながら何が何だか全然わからなかったです(小声)。
赤ん坊って言われて、一番縁遠いものを連想しようとしたらなぜかこうなった。どうしてこうなった。
宇宙の中心については調べててちょっとトンチが利いてて面白いと思った。
ていうかこれ小説っていうかポエムじゃね。