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7.気を感じろ!

 隣の席でフウカが果物を口にしながらこちらをじっと観察している。俺は構わずに同じように果物を食べていた。


「髪の毛切ってその格好だと本当に男の子か女の子か分からないわね」


 しばらく見ていたフウカは俺にそう言う。

 風呂入ったあと、セレーナとノアに強硬に止められたが、結局髪の毛をショートボブぐらいまで切ってもらった。自分でハサミ入れようとしたらあきらめたようにセレーナが切ってくれたのだ。本当はもっと切ってもらいたかったが、切るごとに悲しそうな顔をする二人を前にこれ以上断行することはできなかったのだ。

 その後、用意してくれてた食事をする。

 果物やパンもどきだけなのだが、不思議をお腹が減っていないのでそれで十分だった。

 俺の食欲が落ちているせいかとおもっていたが、フウカから意外な事実を教えてもらう。


「この神殿にはたくさんの神がいるので、別に食事しなくても十分に生きていけるそうよ。本当に不思議な世界でしょ?」


 なんでも神殿にいる神気のようなものが自然に体に入り込んでエネルギーを常に補充しているらしい。

 なるほど。仙人が霞を食べているって話があるがそれと同じなんだ。


「と言っても、私は毎日何かしらは食べているけどね。特にこのセラって果実はおいしくて毎日出してもらっているの」


 そう言いながらリンゴっぽい形の果実を俺に差し出してくる。

 俺はおそるおそる小さくかじると桃のような味が口の中に広がる。

 たしかにおいしい。


「ねえ。ハヤト。今日は私が教えてもらった範囲でこの世界について説明するよ」


 たしかにこんな規格外な世界だと、いろいろと教えてもらわないといけないようだ。

 こうしてご飯を食べながらこの世界について教えてもらうことにした。



 ここは出来たばかりの神の国で、俺も含めて32人しか神がいないらしい。それぞれに役目があるわけでそうなると、圧倒的に数が足らないということらしい。


「は?おれで7人目?」


 中でも女神は不本意ながら俺も含めてたった7人。男女比悪すぎだろう。


「あまり驚かしたくないけど、今後のこともあるから言うね。ここって多夫多婦制なんだって。たとえば愛の女神のビュアスさんは5人の男神の恋人がいるらしいの。で、女神が貴重だからってけっこう男神に言い寄られたりするらしいから気をつけてね」

 ・・・・・。

 本当にむちゃくちゃな世界だ。男5人で女1人ってあり得ないだろう。まあ割合的にも5人弱に1人しか女性がいないのなら仕方ないのか?

 目の前のフウカを見る。完璧な外見である。性格も生真面目すぎるが悪くないだろう。もしかして・・・とつい思ってしまい、おそるおそるフウカに訊ねてみた。


「フウカはオリセント以外にいるのか?」


 それに対してフウカは一瞬だけ言葉を詰まらせてから、真っ赤な顔をしながら大きく頭を振って全否定をする。


「い・・・いないわよ!」


 だが、付き合いが長いだけに彼女が嘘とまで言わないがなにか疾しいことがあるのだろうと、簡単に推測がついた。


「もしかして、フウカ自身が言い寄られているとか?」


 確信を持って問い詰める。

 フウカはもう一度言葉を詰まらせる。図星であるとでっかく真っ赤に染まった顔に書いている。まあこの容姿だったらそうなっても仕方ないわな。


「わ、私のことは置いといて。ハヤトは中身は男でも外見はしっかり女の子なんだから他人事だと思ったらだめだよ?」


 フウカは動揺しながらも俺に指さしながら忠告をしてくる。

 ありがたい忠告なのだが、それは俺の気持ち的に重くのしかかってくる。 

 女になっただけでも嫌なのに、そんな女が不足している世界で過ごすのかよ?貞操の危機なんぞやめてくれよ・・・。

 おもいっきりげんなりしてしまう。

 なんとか撃退方法はないものか?

 その時俺が思いだしたのが、昨日セレーナや神たちがしていたテレポートだ。


「そういえば、昨日みんなテレポートしてたけれど、俺たちもできるものなのか?」


 瞬間移動できれば逃げることも可能だろう。と言ってもどんな感じでできるのかまったくわからないけれど。


「私はできたよ?と言ってもまだまだ上手にできないんだけどね」


 フウカはすこし恥ずかしそうに答える。


「ふ~ん。他になにができるんだ?」

「空跳ぶことと、心声って言ってテレパシーみたいなものかな?あとこれは私が癒しだからだろうけど、ドラクエで言うホイミ系ができるよ。魔法のランプみたいに物を出すことはまだやったことないや」


 なるほど。けっこうなんでもできるもんだ。


「へえ~。どんな感じか見せてくれよ」


 やはり同じ人間だったフウカができるところを見てみたい。彼女ができるなら俺もがんばればできると思えるからだ。

 俺がそう言うと彼女はすこし考えるようにしてから、いきなり席を立って部屋の奥にある寝台のそばにある引きだしから小さな箱を持ってきた。


「ねえ。ハヤト。これどう思う?」


 そう言って差し出してきたのはシンプルなペンダントだ。金平糖のような細長い石が付いている。


「ん?なんだ?いきなり。シンプルでいいんじゃあないか?」

「まさかハヤトにあげることになるとは思わなかったけど、そのために作ったんだしよかったらもらってくれる?」 


 そう言われてはじめて産まれてくる子の為にフウカが作成していたのだと分かった。なるほど。そう言うことか。

 アクセサリーを身につける習慣はないが、これは頂いておくべきだろう。幸い、シンプルで悪くない形なので付けることに抵抗感はない。

 

「ああ。せっかくだからありがたくもらうよ」


 俺はそう言って手を差し出すが、フウカは軽く頭をふって渡そうとしない。


「まだ、完成でないの。私の癒しの気をこの石に込めるから見ててね」


 そういうとフウカは色違いの瞳を閉じて大きく深呼吸する。

 石を握る右手を胸にあてて、しばらくその体勢で立っていた。

 こちらには何が起こっているのかまったくわからない。ただ突っ立っているようにしか見えない。

 しばらくすると、フウカは大きく息を吐きながら握っていたペンダントを差し出してきた。

 それを俺は無言で受け取る。


「あれ?」


 石の輝きがさきほど見たときとはまったく違うものになっていた。透明の石の中央に輝く光が入っている感じだ。中に傷が付いているのかと思ったが、じっくりみてみると光が中に閉じ込められているのだと分かった。礼を軽く言って首に付けることにした。ひも状なので後ろでくくる。


「私の気見えた?」


 フウカが息を整えながら聞いてくる。

 気?見えるものなのか?まったく見えなかったので頭を大きく振る。


「そうよね。私も最初は見えなかったし・・・そうだ。もう一つ作ってみるから、今度はこちらを見たまま瞑想するみたいに目を閉じていて」


 そう言われて目を閉じる。黙とうするような感じでいいのかな?

 しばらくすると、真っ暗だった空間に暖かい光がぽっと浮かんできた。それが徐々に大きくなっていく。


「なんか光っているぞ?」


 俺がそう言うとすぐにフウカの声が聞こえてくる。


「やっぱハヤトもすぐ見えるんだね。その光を見ながらゆっくりと目を開けてみて」


 言われたとおりにおそるおそる目を開いていった。

 さきほどと同じようにフウカがペンダントをにぎっているのだが、その手からクリーム色の輝きがまぶしいほど見えていた。いや、よく見るとフウカ自体が同じ色で輝いている。その輝きは大きくなったり小さくなったりと常に動いている感じだ。

 これが気なのか・・・。


「見えた?」


 フウカの問いにただ無言でうなづく。


「同じように自分の気も感じることができると思うよ。目を閉じて探してみて」


 その通りに目を閉じると、自分の身体からさきほどの金平糖色の宝石と同じ色彩の気が出ていることに気がつく。

 すごく簡単にできてしまったぜ・・・。

 目の前の少女も俺も人間でなくなったのだなとここで強く感じた。


 はやくコメディーにしたいのですが、状況説明だけでここまでかかってしまいました。

 いつになったらテンポいいコメディーかけるかしら・・・。

 

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