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LoveStory  作者: 灯月樹青
11/20

11.恋愛観

「え~、でも束縛されないのはされないので寂しい…かなぁ」

「そういうもんなのか…?」

「そうだよー。っていってもが(・)だけどね」


何処からそういう話になったのか、お酒の回った頭ではよくわからないけれど、私と坂井は美味しいお酒と美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、お互いの恋愛観について語っていた。


「束縛されたいって言っても、やっぱり限度はあると思うんだよね~」

「限度?例えば?」

「ん~例えば…男が1人でもいたらダメとか言われたら、それは無理かなぁ~。仕事関係の同僚とか男ばっかだし。あ、あと携帯の男関係消してって言われても…私は無理かな」

「相手が女関係消すって言っても?」

「消しても…だね。友達まで規制されるのは違うと思うんだよね。だってさ、そういう友人関係あるの知ってて付き合うんでしょー?さすがに辞めて欲しいって言われれば、二人っきりで遊んだりはしないけどさー」

「でも放置は嫌だと」

「ぅん、それは寂しい」

「…女って…」


きっと『面倒』とか『難しい』とかが入るであろう言葉を呟きながら項垂れる坂井を面白そうに見つめながら、思った言葉を紡ぐ。


「坂井はさ、付き合ってる彼女が『男友達と2人で飲みに行って来ていいー?』って聞いたら、何て答える?」

「ん~、どんな相手か聞くかな。ま、どんな相手でもいい顔はしないけどな。」

「でしょ?でも私言われた事あるんだけどさ、どんな相手かも何も聞かずに、『楽しんで来いよー』って言われた事あるのよ」

「…大人だな」

「タメだったけどね」


それは昔、一番初めに付き合った人。


「その男友達の事気になったりしないのか聞いたらね、信用してるから、美優が楽しみなら行ってこいよって」

「…うわぁ~…そいつ人間出来てんなぁ」

「確かに、そうだったのかもしれない。でも私は…それがすごく寂しかったのを覚えてる」


別に傷付けられた訳じゃないのに、その一言がとても寂しくて…哀しかった。


「考え過ぎって言われればそれまでなんだけどね。私は坂井と同じ考えを持ってる人だから、その人の考えが理解出来なかった。だからこの人は私に興味がないのかなって不安になった」


きっと、坂井が言うように彼は精神的に大人だったのかもしれない――でも、精神的に子供の私にはそれが分からなかった。

だから…。


「そう考える事で私が精神的に参っちゃって、すごく不安定になっちゃったのよ。そんで、結果的には振られちゃったんだ」


あの時、もっとポジティブに考えられていたら…結果は違ったかもしれないし、今と変わらなかったかもしれない。

それは分からないけれど…。


「本当の相手の気持ちは確かめようがないけど、その時に思ったの。恋愛観って自分と近い人じゃないと辛くなるんだなって。そんでもって自分はある程度束縛して欲しいんだなって。面倒だとは思うけどね」


自分で考えても相当にめんどくさいから、自分が男だったら絶対自分とは付き合わないと思う。


「恋愛観…かぁ。確かにそういう意味では考えるかもなぁ」


何か思う事があったのか、少し考え込む坂井を何気なく見ながら、少し温くなったカクテルを煽り空にすると、電子メニューで果実酒のロックを選択し、もうひとつの空きグラスに目をやる。


「坂井、なんか飲む?」

「あー、伊藤は何頼むんだ?」

「杏露酒のロック」

「んじゃ同じもので」

「了解」


そんな短いやり取りの末、数量を増やして注文をすると、坂井がこちらを見ていた。


「俺今まで付き合った人皆、恋愛観全く違うかもなぁ」

「そうなん?」

「あぁ。伊藤はそういう意味でピッタリだった相手っていた?」


その質問で脳裏に浮かんだ顔は、一人だけ。


「――…うん、一人だけいたよ」


――『逢いたい』――と声がする。

『声』にならない声――。


「どんな奴だった?」

「同い年で、優しくて、そんなに長い間一緒に居たとかじゃないんだけど、価値観とか、考え方とかが私と似てた…かな?誰と付き合った時よりも、彼と居る時が一番私らしかったと思う」


彼の前でだけは、背伸びする事も飾る事もなく、ありのままの自分で居られた。


「…まだ好きだって聞こえるけど?」

「……ぅん、多分…まだ――好き…なんだと思う」


一拍置いてからかうように言った坂井の言葉に、いつも以上に素直になれたのは…いつもよりも酔っていたのかもしれない。



[2010/10/15]誤字修正

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