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「君との出会いは間違いだった」と言った僕に 君が嬉しそうに笑うから 僕はまた君を好きだと自覚させられるんだ  作者: 文月みい


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君の気持ちをみんなへ伝えます

 昨日、冬花が選んで買った、花柄の可愛らしい小さな袋に、出来上がったクッキーを詰めていく。


 勿論、クッキーを詰めるのもリボンを結ぶのも僕の役目だ。物に触れられない冬花が指示を出している。綺麗に出来ないとやり直しなので、僕も丁寧にラッピングしていく。


「ありがとう秋人。これで全部だね。あとは渡すだけかぁ。まずは、央都ちゃんところに行きたいな」


「わかった。翔太も一緒に居るかもしれないから、二つ持っていこうか。いい?」


「そうなの?じゃあ、二人分持っていこう」


 冬花がウキウキ楽しそうに、窓から外へと飛び出した。もう慣れたけど、初めて見た時には驚いて叫んでしまった。

 冬花は、幽霊だから物体を通り抜けたり、少し浮いたり出来るから窓から出入りするのが楽だと言っていた。

 もう少し行儀よく、静かに玄関から出入りしてもらうと、僕は助かると本人にも伝えたが、無駄だった。

 静かで落ち着いた子だと思ってたのに、こんなに活発な女の子だったなんて、騙された気分だ。



 外では、すでに冬花とシュンが並んで待っている。僕も二人の元へと急いだ。


「あの…秋人、央都ちゃんにクッキーを渡す時に、いつもお菓子をありがとうと伝えて欲しいの。あと、いつも私を気にかけてくれてありがとうも伝えて欲しい。」


「わかったよ。僕が代わりにちゃんと伝える。だから安心して。」


 冬花が前に、忘れないでいてくれる事が嬉しいと言っていた。央都が、いつも朝と帰りに手を合わせてくれる事が、冬花にとっては癒しになるらしい。


 生前二人が、どの程度の付き合いだったのか僕は知らないが、今の央都を見ていると、かなり仲が良かったんだろう。

 ただ、不思議なのが、二人が一緒に居るところを僕は見たことがない。仲が良かったなら一緒に居るところを見ていてもいいはずだが…。


「あっ、央都ちゃんだ」


 冬花の声に、前を見ると央都と翔太が歩いてくるのが見えた。


「あれ、秋人だ。どこ行くの?」


「お前が休日に一人で出歩くなんて、珍しいな」


 二人が僕を見て声をかける。


「央都の家に行く途中だったんだよ。会えてちょうど良かった。」


「何か用だった?」


「渡したいものがありまして。これ、翔太もどうぞ。」


 二人に手作りクッキーを渡すのが、今頃恥ずかしくなってきて、ぎこちない感じになってしまう。


「えっ、急にどうしたの?今日って何かの日?」


「違うけど…。感謝の…気持ち…」


「…んっ?」


 じっーと、冬花が僕を見て、口をパクパクさせている。早く冬花の言葉を伝えろの合図だ。


「だから、その…冬花のこと、いつも気にかけて手を合わせたり、お菓子を置いてるだろ。だから、感謝の気持ちのありがとうだよ。」


「…?えーと、どうして秋人がありがとうなの?」


 央都は、意味がわからないと言うように、首を傾げている。


「何でもいいから、感謝の気持ちだから、貰っておけって。翔太もついでに、ほらっ。」


「俺はついでかよ」


「よく分からないけど、感謝の気持ち受けとりました。ありがとう秋人。」


 央都が、不思議そうにしながらも快く貰ってくれた。


 冬花が嬉しそうに頬を染める。僕を見て、満足そうに、頷いている。


「ねぇ、秋人って冬花のこと知ってたの?友達では無かったよね?私以外の子を、下の名前で呼び捨てにしてるの初めて聞いたかも。」


 央都の言葉で失態に気づいた。つい冬花って普段通り言ってしまったが、僕が女の子の名前を呼ぶのは珍しい。


「そうなんだよ。少し知り合いで、彼女から名前で呼ぶように言われてさ。」


「えっ?あの冬花が?秋人に向かってそんなこと言ったの?」

 

 怪しむように央都が僕を見る。名前で呼ぶように言われたのは、本当の事だから正直に話したのに、央都には信じられないようだ。


「それじゃあ、渡したから僕は帰るよ。他にも用があるから、急いで帰らないと。じゃあ、また学校でな」


 余計なことを聞かれる前に、僕は足早に二人の前から立ち去った。後ろからは、央都の呼び止める声が聞こえた気がしたが、振り返らなかった。


「秋人、央都ちゃん何か言ってたよ。いいの?」


「いいんだよ。早く帰るぞ」



♢♢♢♢♢


 家に着いて部屋に戻ると、冬花が透明のクッキーの袋を持って立っていた。


「秋人、シュンにもクッキーを渡したくて、どこに居るかな?」


「冬花の右隣にいるよ」


 冬花が右へ向き直り、クッキーを差し出す。


「いつも私を見守ってくれてありがとう。なるべく早く未練を解消して成仏出来るように頑張るね。シュンの事早く見えるようにするから、もう少し私に付き合ってね。」


 感激して涙を浮かべながら、シュンがクッキーを受け取った。


「ありがとう。俺も貰えるなんて嬉しいよ。」


 冬花にシュンの言葉を伝える。冬花も嬉しそうだ。


「最後になっちゃったけど、秋人もいつもありがとう。一番迷惑かけてるのに、いつも助けてくれてありがとう。秋人の優しさに私はいつも救われてるよ。」


 冬花がクッキーの袋を指差して、最後の一つを僕に渡す。


「あり…が、とう。」


 央都たちに渡した時よりも、恥ずかしくなって、ありがとう以外、言葉が出なかった。


「みんなに私の気持ちを渡せて良かった」


 眩しいくらいの心からの笑顔に、冬花が喜んでくれたから、手伝って良かったと、僕自信も嬉しく思えたことは内緒だ。


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