君と一緒に祝います
部屋の前で、深呼吸して気持ちを整える。扉を開けると、冬花が僕の方を見て笑顔で出迎えてくれた。
(よし、大丈夫だな。もう気持ち乱されない)
平静を保ち、部屋の中に入る。
「ココア持ってきたよ。二人とも飲むだろ?」
「ココア!絶対に飲む。ありがとう」
二人の前に、ココアを置くと、透明なカップが二人の手の中に収まった。
シュンも口角が少し上がってるから、ココアが好きなんだろう。美味しそうに飲む二人を見て、僕もココアを飲んだ。冷えた体が温まる。
「俺、正式に死神になって、彼女の担当になったから…それを彼女に伝えてくれ」
前触れもなく、突然シュンが話だし、驚いた僕は、ココアを少し吹き出した。
「ちょっと、秋人どうしたの、大丈夫?」
いきなり吹き出した僕に、冬花が驚き背中を擦ってくれる。
「…平気。ちょっとびっくりしただけ。もう大丈夫だから、ありがとう」
ふぅ、と一呼吸して、シュンにさっき言われたことを確認する。
「正式に死神になったって、今までは死神じゃなかったのか?」
「今までは違う。詳しくは言えないけど、さっき、正式に死神として認められた。クロと同じ部署に配属されて、正式に彼女の担当になった」
冬花は、クロの担当でシュンが手伝いで任されていたが、正式に仕事を引き継ぎされたと言うことらしい。
「冬花、シュンが正式に死神になって、冬花の担当に決まったそうだよ。これからは、クロではなくて、シュンが担当なんだって。」
冬花は、右隣に視線を移し、とても嬉しそうに笑顔を見せた。
「それじゃあ、今日はお祝いだね。」
冬花の言葉に意味が分からず、僕は彼女に問いかける。
「お祝い?」
「そうだよ!死神になったお祝い。こっちで言うと就職先が決まったのと同じでしょ。良いことだから、お祝いしなきゃ!」
シュンは、冬花の言葉に驚いて目を丸くしている。
冬花は、何やらゴソゴソとポケットに手を入れて探していたが、探し物が見つかったようで、それを隣の方へ差し出した。
「私、自分の物は何も持ってないから、これ!飴玉あげる。央都ちゃんから貰ったものだけど、美味しかったよ」
今朝、央都がお供えした物らしい、それをシュンのいる方向へ差し出す冬花。
「秋人、シュンがいる場所あってる?」
「あぁ、そこにいるよ」
震える手で、飴玉を受けとるシュンは、嬉しそうで、愛おしそうにそっと冬花の手を握った。
「あっ、飴玉がなくなった。ちゃんと受け取ってくれたんだね。機会があれば、何か私が用意したもの渡したいけど、いけるかな…」
いろいろ考え始めた冬花の横では、目に涙を浮かべたシュンが、大事そうに飴玉を握って、いつもの優しい表情で冬花を見つめている。
「…やっぱり君は…変わらないな」
シュンの言葉は、あまりに小さくて、僕には聞こえなかったが、シュンが冬花を大事に思う気持ちは伝わってきた。
死神と死者という関係だけでは、説明できないような何かがある気がして、僕は気づかないように目を逸らした。
「冬花が言うように、お祝いだな!シュンが死神になった記念だ。さっき、クッキー見つけたから取ってくるか。他にも欲しいものあるなら買ってくるよ」
「いいの!私アイス食べたい!シュンは何かある?」
「…俺は、コーラとポテチ…」
「お祝いだから何でも遠慮せず言えよ!今日は特別だから、贅沢に行こう!あっ、でも僕のお小遣いで買える分ね」
その後、三人で遅くまで楽しく過ごして、妹からは、うるさいと苦情を言われてしまった。




