サバイバルゲーム、クマ、きつねの愛
トキの同居人、きつねは『願いを叶えるおもちゃのスマホ』を持っている。スマホは、壊れている。願いは、ろくな叶い方をしない。
「サバイバルゲームか、興味あるな」
トキはそうこぼし、ハッとしてきつねを警戒する。きつねは一緒に「サバゲーやってみた!」動画を見ている。偽物のきつね耳、きつねしっぽ、どちらも動かない。集中しているようだ。
トキは胸を撫でおろす。
翌朝、トキは山の中で目を覚ます。
「は?」
山の濡れた地面にトキの布団が敷かれている。
「おはようございます、トキさま!
やりましょう、サバイバルゲーム!」
季節は冬のはじめだ。Tシャツにジャージじゃ寒すぎる。寒い、とこぼしかけたとき、『シャランシャラン』と音が鳴った。
きつねは水色のワンピースに、紫と白の組み紐を斜めがけにしている。紐の先に鈴が連なっている。お祭りで子どもがかける「たすき鈴」のようだ。風もないのに「ひとりで」に鳴っている。
「何それ?」
「クマ避けです」
「なんで鳴るの?」
「近くにいます」
パキッ……
トキときつねは顔を見合わせる。
ピッポッパッ
プルルルル…… プルルルル……
『ハイ』
「あの、クマ対策グッズをお願いします! なるはやです!」
『売れ筋商品でいいですか?』
「ハイ!」
空から、スプレー缶が降ってきて、クマの頭に当たった。
クマは怒る。怒ってスプレー缶を噛み砕く。
クマの叫び声が、甲高い声になった。
「中身、クマスプレーじゃなさそうだぞ!?」
クマが、ソプラノの美声で追っかけてくる。
「ひっ」
「歌ですトキさま! ほら、メガホンです! 熊は威嚇に弱いです!」
「歌である必要性あるか!?」
「ソプラノ対決です!」
「俺じゃソプラノはでねーよ!」
トキはきつねにメガホンをつっかえす。きつねはメガホンに向かって大声で歌う。スーパーの売り場で流れるあの曲だ。
何故……と思いつつ、トキも一緒に口ずさんでしまう。トキは音程が外れている。
メガホンは直接、クマ耳に歌を転送する効果があったようだ。
ふたりの歌で、クマは倒れる。
「トキさま お歌、下手だったんですね……」
「いっそ殺してくれ……」
「それはできません なんのためにきつねがいると思ってるんですか!」
「え、なんのために居んの?」
「トキさまを幸せにするために決まっているじゃあないですか! どーん!」
ペシっ
「なんで叩くんですか!?」
クマは、お騒がせもののクマだったようだ。
ふたりは市から表彰された。
布団はダメになった。




