裏側の世界への入り口
父の持株会社が投資に大失敗し、倒産した。
その結果、上丘の両親は自殺し、自宅にまで火を放った。
「お嬢様、これからは逞しく生きてくださいね。おかしいことを、おかしいままにしてはいけません。しっかりと正すのです。
だから、何があっても諦めてはいけません。分かりましたか?辛いと思うけど、頑張って」
厳花はそれだけを告げ、荷物を持って去っていった。
その後、上丘は孤児院でのいじめに耐えながらも、奨学金を勝ち取り、京応大学法学部法学科に入学した。
大学卒業後は警察学校へ進み、厳しい訓練を乗り越えて無事に卒業した。
そして過去の素性をすべて捨て、警視庁公安部に就職する。
しかし彼女の努力の目的はただ一つ、詐欺集団ヘルメスに二重スパイとして協力し、この世の理不尽を正すことだった。
だから…
後日、ピノキオは霞ヶ関にある消費者庁へ向かった。
ーおかしいことを、おかしいままにしてはいけない。しっかりと正さなくちゃー
そう心に刻み、中央合同庁舎第4号館の中へ足を踏み入れた。
受付で、彼女は強気にこう切り出した。
「こんにちは。ル・ビトンのワニ革製品について、お伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「…わ、分かりました。少々お待ちください」
高齢の女性職員は戸惑いながら答え、奥へと姿を消した。
しばらくして戻ってくると、ピノキオを別室へ案内した。
そこには、やけに愛想よく笑う男性職員が座っていた。
「こんにちは。腹黒 笑介と申します。どうぞ宜しくお願い致します」
腹黒は満面の笑みで言った。
「宜しくお願い致します」
ピノキオも負けずに返した。
「それで、ル・ビトンの件なんだけど…もう二度とその名前を口にするな」
腹黒は突然満面の笑みを消し、真顔でそう言い放った。




