忘れたいことは忘れられないこと
「どういうことですか?」
ピノキオは、彼に聞き返した。
「だから、どういうことも何も、できません!」
「はあ!?」
「プツッ。ツー、ツー、ツー…」
電話は呆気なく切れてしまった。
ピノキオは、ただただ虚しさを覚えた。
そう、あの時も…
「わあー!ここが新しいおうちなのねー!」
ピノキオ、つまり幼い頃の上丘桜は、新しい家の玄関に立ち、その広さに驚き、嬉しそうに声を上げた。
「そうですよ。ここが新しい家ですよ、お嬢様」
高齢の女性執事、厳花梅子は、丁寧な口調で彼女に答えた。
「でも、どうしてこんなに家が広くなったの?」
上丘は不思議そうに尋ねた。
「それはですね、あなたのお父様が一生懸命働いて、たくさん稼いだからですよ」
「へえー、そうなんだ」
しかし後になって、それが嘘だったことを知る。
父は投資家で、たまたま投資が成功しただけだったのだ。
幼い頃の上丘は、名門私立・京応幼稚舎の中でも群を抜いて成績が良く、友達も多かった。
そう、すべてが完璧だった。
十二歳までは。
ボォーーーー
家が、燃えた。




