都合の良すぎる嘘
「え?平野?」
三星は驚いた様子を見せたが、すぐに態度を改め、優しそうな口調で言った。
「そう、私は法務部の、平野凛花です。
あんたたち、同僚をいじめておきながら平然としているなんて、最低よ!」
平野はきっぱりと言い放った。
すると三星は、「ひぇ!」と声を上げ、すっかり怖気づいた。
「この件は、代表取締役にも報告させてもらいます」
平野はそう強く告げると、小石のもとへ歩み寄った。
「大丈夫ですか?」
心配そうに声をかけると、小石は俯きながら、「だ、大丈夫です…」と、か細い声で答えた。
しかし…「まあ、こんなに酷い傷…。早く医務室に行きましょう」
平野はそう言って、小石を医務室へ連れて行った。
医務室では産業医に事情を説明し、傷の手当てを受けさせた。
その日の夕方、平野は松田代表取締役に電話をかけた。
「もしもし。法務部の平野と申します。本日、社内で起きた小石さんへのいじめ被害について、事情を確認したいのですが、お時間よろしいでしょうか?」
しかし松田は、平然とした口調で答えた。
「構わないけど、うちの会社にいじめなんて無いよ?」
「あなた、正気ですか?私はこの目で、小石さんが同僚から暴行を受けているのをはっきりと見ました」
平野は強い口調で言い返した。
すると松田は、あっさりとこう言った。
「分かった。じゃあ一応、全社会議でその件を聞いてみよう」
「必ず行うと約束できますか?」
「…まあ、はい」
翌日の全社会議で、松田は一般社員たちに問いかけた。
「法務の方から、小石がいじめを受けているという話を聞いたが、まさかそんなことはあるまいよな?」
しかし返ってきたのは、予想外の答えだった。
「え!?その話初めて聞きました!私たちがそんな非営利的な行いをするわけがないじゃないですか?」




