第七話「アンタ強いの?」
ボルコフはザ◯ギ、
冥鬼はゴウ◯みたいなキャラクターです。
仮入部が認められて、学校内で練習場所を見つけることができた2人。
その翌日放課後、式守と天土は足早に部室へと急いだ。
(新しい部員…どんな人なんだろう…。)
ワクワク…そわそわ…。
各々緊張しながら犀田の元へ向かう。
「今日は、先に相談を持ちかけてきた2人の生徒と会えるんですよね?」
式守が確認すると、犀田は苦笑いしながら首をかしげた。
「すまん。1人は今日休みだった……でも、この子を紹介しよう。今回の件では最初に相談してくれた生徒だ。」
そう言って先生が促すと、式守と天土の前に現れたのは、明るい金髪にキラキラと光るネイル、短めのスカートを履いた派手な女子生徒だった。
「うっス。安城あかねっス。」
意外にも体育会系のノリで挨拶する彼女に、式守は思わず一歩後ずさる。一方、天土は「すごくかわいい!」と目を輝かせていた。
「安城さんも、格闘ゲームを……?」
式守が戸惑いながら尋ねると、安城は彼の顔をじっと見つめ、ニヤリと笑った。
「あーし、やるならガチでやりたいんだけど……アンタ強いの?」
ぐっと顔を近づけ、威嚇するような鋭い目つきで問いかける。その圧に、式守は思わずたじろぐ。
「そ、そこそこです…。」
「で、でも…安城さんこそ…や、やる気あるんですか…? モチベーションが高いようには…見えないんですけど…。」
怯えながらも自分の意見をはっきり言う式守。
「へぇ…気弱そうなナリして…言うね。」
安城の目の色が変わった。そして、勢いよくゲーミングチェアに座ると、挑発するように式守を見上げる。
「…座んなよ。あーしがやる気ないかどうか…対戦すりゃわかんだろ。」
その気迫に、式守は息をのんだ。
「わ、わかりました…。」
天土は「式守くんの本気プレイ初めて見れる!」と興奮気味だ。
対戦形式はBO3(2本先取)を2回。安城が選んだキャラクターは、パワフルな投げ技を持つ《ボルコフ》。一方、式守が選んだのは、高い機動力と多彩な技を持つ《冥鬼》だった。
『ラウンドワン!ファイト!』
試合が始まると、天土は目を見張った。安城はボルコフの強力な投げを狙い、式守の防御を崩そうとする。しかし、式守は冷静に間合いを管理し、的確な反撃で安城を封じ込めた。
「すごい……! あかねちゃん、全然近づけない……。」
天土が驚く中、犀田が腕を組みながら解説する。
「ボルコフの強みは近距離の二択の強さ…だが、地上戦の練度が違いすぎる。ボルコフが近づけてない。刺し合いがうますぎる…。あいつは何者だ…?」
結果は式守の圧勝。続く2戦目も同様に、安城は手も足も出ず敗北した。
静寂が訪れる——
負けた安城がどう反応するのか、全員が注目する中、彼女は勢いよく立ち上がり、式守の肩を掴んだ。
「おい!」
「な、なんですか……?」
「アンタ名前は!?」
興奮した様子で安城は尋ねる。
両肩をしっかりと掴まれたまま、顔がぶつかりそうな距離まで近づかれ、ドギマギする式守。
(ち、近い…。)可能な限り体を後ろにそらしながら答える。
「あ、し、式守です。式守執です。」
一瞬の沈黙…。
険しい表情が一変し、興奮した様子で安城が捲し立てる。
「式守…。アンタ強すぎない!? 差し返しエグすぎ!こんなに寄れないの初めてだよ! ヤベー!! レベチだわ! 本当にタメ!? 格ゲーいつからやってんの?」
予想外に興奮した彼女の反応に、式守は目を丸くする。
「く、悔しくないんですか……?」
すると、安城は目を輝かせながら答えた。
「いや、悔しいよ! めっちゃ悔しい! こんな負け方したことないし、チョームカついてる! でも、あーしが求めてたのはコレなんだ!こんな強いヤツと本気で戦えるなんて最高じゃん!」
安城は興奮しながら話し続けた。
「あーし、オフでいつも兄貴と対戦するんだけど……本気出すと勝っちゃうから手加減してやってて……。そんなのつまんないじゃん?だからオフで全力出せる場所探してたんだ! アンタがいれば、いつだって全力で戦える!おっしゃー!テンション上がってきたー!」
その言葉に、式守は共感した。自分も、本気で競い合える強敵を探した過去があったから…。
「そんな事情があったんですか…。でも、安城さんのプレイ、センスがすごいです。近距離での読み合いや二択の強さって、練習だけじゃ身につかない才能だと思います。」
式守は深々と頭を下げた。
「すみません、見た目だけでやる気がないなんて思って……。僕が間違ってました。」
「まぁ、相手がどんなヤツかなんて実際に戦ってみないとわかんねーしな。気にすんな。あーしも式守のこと少しわかった気がするよ! これからもよろしくな!」
安城は満面の笑みを浮かべる。その明るさに、式守もどこか新しい刺激を受けていた。
「式守……ちょっと話がある。」
対戦を見守っていた犀田が、改めて声をかける。
「なあ式守…。頼みがあるんだが…eスポーツ部の部員兼、格闘ゲーム部門のコーチになってくれないか?」
「え…?コーチ…ですか?」
式守は突然の提案に言葉を失う。
「それめっちゃいい!!」
瞬時に賛同する天土。
式守は戸惑った。あまりにも突然の申し出だったから…。
しかし、安城や天土の期待に満ちた眼差しを受け、覚悟を決める。
「わかりました。皆さんと一緒に、強くなりたいです。」
返答の瞬間…。
「やったー!!」
満面の笑みで飛び跳ねる天土。
「これからもよろしくね!コーチ!」
こうして、式守を中心に新たなeスポーツ部の挑戦が本格的に動き出したのだった。
CC最高でした!
今日はグッパチ全力応援です!