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かくげーぶ!  作者: 直春
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第六話「学校で格ゲーの練習」


月曜日の朝。式守はいつもより少し早く家を出た。昨夜はなかなか寝つけず、考えが頭を巡っていた。


天土との出会い、彼女の過去、そして自分が彼女に教える立場になるという新しい役割。それに、自分も彼女の明るさに影響を受けている気がした。


「学校で格ゲーの練習ができる場所なんてあるのか?」


そんな考えがふと脳裏をよぎる。ゲームセンターはもちろん、家以外で練習する発想自体がなかった。だが、天土が本気で上達したいなら、それをサポートするのも自分の役目だと感じていた。


普段なら漫然と歩く通学路も、今日は違った。足取りには微かな決意が宿っていた。


教室に着くと、いつもの静かな朝が訪れるかと思いきや、その予想は大きく裏切られた。


「式守くん! おはよう!」


明るい声が響いた瞬間、教室がざわつく。


「あれ誰?」

「天土さんが話しかけてるの、あの地味なやつ?」

「名前なんだっけ…」


周囲の視線に慣れていない式守は固まるばかりだ。「お、おはよう…」と消え入りそうな声で返すのがやっとだった。


「昨日はありがとね! 楽しかった!」


…ざわざわ…

「…昨日はありがとう…?」

「何があったんだ…?」

クラスメイトたちは意外な組み合わせに興味津々。素知らぬフリで耳をそば立て、会話を盗み聞きし始める。


そんな教室の異様な雰囲気を感じ取る事なく、天土は屈託のない笑顔で話し続ける。彼女の明るさがさらに注目を集める中、式守は心の中で叫んだ。昨日の話を学校でしないでくれ!


慌てて天土を廊下へ連れ出し、小声で頼み込む。


「クラスでは話しかけないでくれた方が…。」


「えっ、なんで?」


天土は少し不満げだ。


「せっかくゲームの話ができると思ったのに…。」


式守は思わず折れそうになるが、何とか踏みとどまる。


「…放課後にちゃんと話しましょう。今はクラスでは普通に…。」


そう説得すると、天土も渋々同意した。


教室に戻ると、クラスメイトたちは相変わらず興味津々に2人を見つめていたが、式守はその視線を無視して席に着いた。一方、天土はあからさまに不服そうだったが、やがて授業が始まり、日常のリズムに戻っていった。


ーーーー


昼休み、天土は幼馴染の藤本ふみと友人の大森オリエに、昨日の出来事を興奮気味に話していた。


「ねえ聞いてよ、昨日式守君に『ファイターズユナイト』ってゲーム教えてもらったの!」


天土は目を輝かせて語り始める。


「え、式守って…朝挨拶してた男の子?仲良かったっけ?」と大森が少し心配そうに尋ねる。


「うん。なんか色々あって…。」


楽しそうに式守との出会いを話す天土。


2人は天土の積極性に苦笑い。


「式守くん大変だっただろうね…。」


藤本は天土に振り回される式守を想像し、気の毒に思いながらも微笑む。


「亜留、最近元気なかったけど、なんか楽しそうで良かった。昔に戻ったみたい…。」


藤本の言葉に、天土は少し照れながらも「えへへ…ありがと…。」と笑顔を返す。


しかし、その笑顔も一瞬曇る。


「でもさ、練習場所がないんだよね。家じゃ思いっきりできないし…。」


すると、大森が「あ!それなら!」と声を上げた。


「ゲームが上手い生徒を探してる先生がいるって噂、聞いたことあるよ! 現国の犀田先生とかいう人!」


その言葉に天土の目が輝く。


ーーー


放課後、天土と式守は大森の噂を頼りに職員室へ向かう。


「天土さん、犀田先生知ってますか?おれ面識なくて…。」


「わたしも知らないんだけど、オリエに特徴聞いたからなんとかなると思う。失礼しまーす。」


躊躇せず職員室の扉を開ける天土。


「えっと『白衣を着ている40代おじさん』…。あ、あの人かも。」


「あ、あの…すみません。犀田先生ですか?」


緊張しながら犀田らしき人物に声を掛ける。


犀田はゆっくりと眠そうな目を2人に向け、答える。


「…そうだけど…。おまえたちは…?」


自己紹介もそこそこに、本題に入る天土。


「私たち、格闘ゲームの練習場所を探してるんです!」


天土が熱心に説明すると、はじめは面食らった犀田だったが、徐々に2人の熱意を認め、笑顔で答える。


「おー。そうかそうか。どっかで噂でも聞いたか? 実は…今はまだ準備段階なんだが、ウチで来年度からeスポーツ部を本格始動する予定なんだ。水面下でやる気のある生徒を探しててね…。よく来たな。」


さらに犀田は、FPSやMOBA部門で数名の生徒がすでに活動を始めていること、そして格闘ゲーム部門の設立を検討していることを明かした。


「実はお前らの前にも2人の生徒が同じ相談をしてきたんだよ」


驚く式守と天土に、犀田先生はにやりと笑う。


「人数が少ないから保留していたが…4人集まれば十分だろう。仮入部として教室の使用を許可しよう。早速部室に行ってみるか?」


「は、ハイ!是非!」


練習場所が見つかる!急な展開に驚きつつも嬉しさが溢れる天土。


2人は犀田の後をそわそわしながら追いかけてゆく。


犀田に案内された教室に足を踏み入れると、そこには最新のゲーミングPCや高性能モニター、ゲーミングチェアが整然と並んでいた。


「ここが、『eスポーツ部』の部室だ。他の部門も同部屋だから…。格ゲー部門はここを使ってくれ。」


真新しい設備を目の当たりにし、心躍らせる2人。


「ハイ!ありがとうございます!」


「ところで他の2人は…?」


「ああ、今日は帰っちまったみたいだ。明日にでも紹介するよ。」


どんなメンバーなんだろう…。期待に胸を膨らませながら、まだ見ぬ仲間に思いを馳せる2人。


思いがけず練習場所は確保できた!

学校での本格的な挑戦が、ここから幕を開ける…。

CC3日目も最高でした!

明日のTOP16も全力で見守ります!


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