第二話「ゲームの経験は?」
『ファイターズユナイト』はス◯6に非常に似たゲームシステムのゲームとなっております。
「…ポーン、ピンポーン」
どこからかチャイムの音がする…。
「誰だ…こんな朝早くに…。」
朝方まで雑念を振り払うかのように対戦を繰り返した式守は、眠い目を擦りながらインターフォンに近づく。
液晶に映る人物を見て、式守は一気に目が覚めた。
(しまった!寝坊した!)
慌てて通話ボタンを押す。
「おはよー! ちょっと早いけど着いちゃった! ごめんね。」
天土はワクワクを抑えられない様子で、無邪気に笑っている。
時計を見ると時刻は9時25分…。
(10時じゃなかったのかよ…。)
「ち、ちょっと待って…。5分で支度するから…。」
焦って支度する式守。
5分後ーーー
「お、お待たせしました…。」
最速で身支度を整えた式守は、極度に緊張しながら天土を自室に招き入れた。
「お邪魔しまーす。へえー。すごいすっきりした部屋だね。」
飾り気のない部屋の角には、大きなデスクが存在感を放っている。
その上にはゲーミングPCとモニターが鎮座し、デスクの前には体を包み込むようなフォルムのゲーミングチェア。
まさにゲームを快適にプレイするためだけの空間だった。
天土は目を輝かせながら部屋を見回し、感嘆の声を漏らす。
「じ、じゃあまず椅子に座って…。」
式守は天土にゲーミングチェアを勧め、PCを起動する。
画面に浮かび上がるのは、対戦格闘ゲーム『ファイターズユナイト』。
「ありがとう。うわー。すごい! 座り心地いいー。お、始まったー! カッコイイ! ワクワクするね!」
天土の天真爛漫なリアクションに、まんざらでもない式守。
初心者とは思えないほどの食いつきの良さに、少し期待を抱く。
「…あ、天土さんゲームの経験は?」
「実は私、スポーツばっかりやってて…。ゲームは全くやった事ないんだ…。家にゲーム機も無かったし。だから今初めて。」
「マジで?! そんな人世の中にいるんだ…。」
小さい頃からゲーム漬けだった式守には、まるで異世界の話のように感じられた。
(完全初心者か…。これはしっかりゼロから教える必要があるな…。)
戸惑いつつも、まずは基礎から教えることにする。
「まずはトレモで…。(キャラはとりあえず適当に…『スピカ』でいいか。)」
「おー。なんか可愛いキャラだね!」
天土は『スピカ』を一目で気に入ったようで、画面を食い入るように見つめる。
「じゃあコントローラーを持ってみましょう。」
手渡されたゲームパッドを興味深げに受け取る天土。
「へぇーこれで操作するのかー。思ったより軽いね。」
「ボタン配置は一旦デフォルトで…。ざっくり言うと左手で移動、右手で攻撃で…。」
式守が説明するや否や、天土はボタンを押しまくる。
「おー。パンチ! パンチ! キック! 技が出るー! すごいすごい! かっこいいー! なんか自分が強くなったみたい!」
「ち、ちょっと…落ち着きましょうか…。まず…」
式守はゲーム完全初心者の天土にも理解しやすいよう、操作方法やゲームのルール、簡単なシステムなどを丁寧にレクチャーしていく。
「…って感じで…。どうですか? わかりました?」
心配そうに確認する式守。
「ジャンプ…ガード。必殺技ボタンがこれで…人差し指で押しながら攻撃するとコンボ…。うー頭ではわかってるんだけど…ボタン間違っちゃう…こんがらがるね…。」
「ボタンが多いから難しいですよね。まず一つずつゆっくり行きましょう…。」
式守は焦らず、一つずつ操作方法の確認をしていく。
30分後ー
「うえガード…したガード…。バックジャンプ…」
一つ一つの行動を、慣れないながらも確実に繰り出す天土に、式守は感心してしまう。
「おー。だんだん慣れてきましたね! 上手いですよ! ゲーム初めてとは思えない!」
天土の飲み込みの早さに感動し、興奮が収まらない。
「え! ほんと! …えへへ…。嬉しいな…。」
天土は照れくさそうに笑う。
「じゃあ次のステップに行きましょう。」
「…え、次って…?」
天土の成長を見た式守は、次の段階へ進むことを決める。
「じゃあそろそろ実際に人と対戦してみましょうか。ランクマ行きましょう。」
「…え、も、もう…?」
ゲーム開始からまだ1時間も経っていない…。流石にたじろぐ天土。
「いや、行けます! 対戦しないと格ゲーじゃないですから!」
式守のやる気に押され、天土は覚悟を決める。
「う、うん…! わかった! やってみる!」
こうして、天土亜留、初めてのランクマッチが始まろうとしていた——。
『スピカ』はス◯6で言うと、キャ◯ミーっぽいキャラクターです。