第2話「運命(後編)」
さて、前回謎の穴に落ちてしまったカイとカスパル!そこに待ち受けていたのは……?そしてカイの運命とは……!?
「なぁ、アキ。」
「…なんだ?カイ。」
「ずっと考えてたんだ。初めて出会った時。お前はどうして、俺を助ける選択をしたんだ?」
「なんで助けたか?……?」
「会ったことも、話したことも無かった俺たちなのにお前は俺を助けてくれた。あの意味が、未だに分からなくて…」
「適当。」
「え?」
カイはその一言を聞いて頭がポカンとなった
「お前を助けたのは気分だよ。」
「そ、そんな適当なことであんな行動を!?」
「でもな、カイ。」
アキの雰囲気がガラッと変わる。
「俺がお前を見つけた時、なんかわかんないけど心がゾクッて来た。なんの根拠も無い。理由も何もかも。だけど俺はその衝動のおかげで、今のお前と一緒に居れてる。だから俺はあの時の選択を絶対に後悔なんてしない。」
「…衝動、ね。」
「お前はそういうとこ、頭硬いから俺が教えてやるよ」
「はぁ!?お前は脳天気すぎるんだよ!!」
「はははっ!」
カイは目を覚ました。上を見ると8メートルほど深い穴に落ちたと理解した。
カイ「…今のは……いや、今はいい。」
カスパル「ワンッ!!」
気づくと横にはカスパルが居た。
カイ「カスパル!お前は無事だったか!?」
カスパル「ワンワンッ!!」
カスパルは元気そうにしっぽを振っていた。
カイ「なぁカスパル…お前が俺を選んだのも、運命だったのかな。」
カスパル「クゥン…?」
カイ「……いや、やっぱなんでもない。行こっか!」
そう言うとカイは立ち上がった。
カイ「と言っても、どうやって登るか…しかもカスパルも居るから、担いで上がらないと……って、ん?なんだこれ。」
そこにはいくつかの死体と武器がいくつか落ちていた。よく死体を見てみると全員同じような隊服を着ていた。
カイ「これって、何かの戦闘隊…?」
カイは落ちてる武器を拾った。
カイ「……これは、まさかMSTの隊員…?」
俺でも知ってた。「東京大襲侵」から殺人植物ってのが地上に現れて、1夜で東京全土が侵食された。それに対抗するためにMSTっつう団体を作ったんだ。
カイ「MST…俺の大嫌いな世間のヒーローのような存在。」
カイの顔は曇っていた。まるで軽蔑するような目でその死体を見ていた。
だがその時だった。前に空いてる大きなほら穴から何か音が聞こえる。
足音や、心臓の音でもない。何か不思議な音が聞こえる。
カイ「なんだ……?」
前から迫ってきたその音の正体の姿が、見えた。
カイ「……!!!」
カスパル「クゥン?」
カイ「カスパル。お前だけでも逃げるんだ。」
目の前には人でも動物でもない。人型の植物が立っていた。
世間はその植物を「殺人植物」と呼んでいた。
カイ「くっそ、そういう事か…ここは殺人植物の罠の中。調査に来たMSTの奴らがここに落っこちて……みんな…殺されたんだ…」
人型植物はゆっくりと近づき、カイをほら穴の端まで追い詰める。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」
するとカイが抱えてたカスパルが飛び出した。
カイ「カスパルッッッ!やめろ…っ!!」
カスパル「グルルルッ……ワン”ン”ッッッッッッ!!」
カスパルはその植物の腕に当たる部分に噛み付いた。
カイ「噛み付いた…!?」
だが、運命は平等に「善」にも「悪」にも転がる。
“グサァァァァッッッッッ”
カイ「………………はっ。」
人型植物は片方の腕をカスパルの腹部に”貫通”させた。
カイ「カス……パル…?」
カイの目からは涙が溢れ出ていた。
カイ「カスパル…返事しろよ…今なら吠えてもいい…から、だからお願いだ……返事してくれ…2人で絶対うまいもん食べるって……決めた…じゃん…か…ぁ…」
「ア“ア”ア”ァ”ァ”ァ”ァ”ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!!」
カイの図太く悲しみに溢れた発狂が周囲に響く。
「これが…運命とでも……言うってのか…もしそうなら…こんな運命ってのを決めてる奴が……神であろうと何であろうと……」
“ぶっ殺してやりてぇよ”
人型植物がカイに近づく。カイは抵抗をしようとしなかった。
これで終わっていい。殺してくれ。そう伝えるような表情でただほら穴から差し込む光を眺めていた。
だがその時だった。
「突撃!!!!!」
上からものすごい速度で人が落ちてくる。そして落ちてきた人は特殊な武器を使って……
“ザシィィィイイインッッッ!!!!”
と。人型植物の胴体を真っ二つに切った。
隊員a「少年。怪我は…?」
隊員b「殺人植物の駆除確認。恐らく『狂植種』に分類される個体と思われます!!!」
カイ「……あ…?誰だよ……あんたら…」
隊員a「私たちはMST第36位下級部隊だ。」
カイ「…まれ…」
隊員a「とりあえず君を上まで連れて行かなけれ…」
カイ「黙れよ……!!!」
カイは大声で隊員に対して叫んだ。
カイ「お前らはいつも…遅いんだよ…カスパルが死んで…死ぬ覚悟なんてできてたのに…なんでそんなタイミングでまた、殺させて貰えないんだよ…!!」
隊員a「……」
隊員b「…すまない。少年。君の叫び声が聞こえたからここを見つけれたんだ…以前から隊員が殺され続けてるほら穴を見つけろと言われてたんだが…君のおかげで見つけれたん…」
“グサッッッ”
その時2人の隊員が後ろから腹を太い触手で貫通させられた。
カイ「は…?」
暗いほら穴の奥からもう一体、別の個体が出てきた。それはさっきの人型よりもずっと大きく、このほら穴ピッタリの大きさの個体だった。
???「ニンゲン、モロイ。ダカラマケル。」
カイ「あいつが…本体か。あぁ…なんなんだろうな。恐らくここは地獄だ。そうに違いない。目の前で大事な1匹の家族がやられて、よくわかんない隊員も…死んで。」
カイの瞳には光が消えていた。
カイ「神様…俺、そんなに悪いことしてた…?親もいなくて、友達も死んで、こんなに辛かったのに…まだ足りなかった…?」
殺人植物「バイ、バイ。シンデ。」
僕は運命ってのに嫌われてるらしい。幸せを得ることも。奪うことも許されなかった。なら、せめて次の人生で、運命ってのに好まれるといいな。
カイは目を瞑って、何もかもを受け入れた。
“ヒュッ……ザシィィィイイインッッッ”
殺人植物「ブァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!」
“ザシンッ…ザシンッ…ザシザシィィィイイインッッッ!!”
カイ「…あぁ……早くやれよ。殺せよ。なんでこんな時間を早く終わらしてくれ……な…」
カイが目を開くとさっきの殺人植物が細切れにされていた。
カイは返り血を浴びていた。
そして目の前には、一輪の花が咲いている、人型の白い植物が凛々しく立っていた。
カイ「…なんだ…こ…いつ…?」
カイはその凛々しい姿を見て。ある人物の立ち姿を思い出した。
第2話「運命(後編)」
続く
〜今回のちょい出し基本情報〜
名前:黄瀬川 海
年齢:15歳
これが主人公「カイくん」の本名です!なんやかんやで2話時点で主人公の名前明かさないのは良くないと思ってこんな風に情報を出しました笑笑
次回からこういう形で毎話情報を1つ2つくらい出していけたらと思ってます!
さぁ次回は謎の花の咲いた殺人植物(?)が目の前に立ちはだかる!……が、果たして敵か、味方なのか…!?