第一話:勇者達と魔王との戦い
初の連載ものです。更新はスローペースになりますが。
ちょっと展開や文章におかしなところがありますが、許してください。
「え?う、嘘でしょ?…」
石柱立ち並ぶ荒れ果てた遺跡のような場所にいた人々の間に静寂が走る。
修道女のような格好の少女───聖女は段々と状況を理解しつつあるようで、わなわなと震えながら目尻に雫を満たしていく。
彼女の眼前には、身体が両断された青年の姿があった。彼の瞳から光は既に失われている。
「勇者アインベルム討ち取ったり」
漆黒の甲冑を見に纏った、おぞましい邪気を放つ男───魔王が言う。
そう、勇者アインベルムは死んだのだ。その逃れようもない現実に直面させられた彼の仲間たちは、しかし闘志を失ってはいなかった。流石は勇者の仲間というべきか、逃げ出す者はいないのであった。各々が魔王に立ち向かう勇気を失っていないのだ。
「おー、やっぱイイねぇ、この、なんつーの?不屈の精神ってヤツ?逃げ出す勇気っつう言葉もあるが、俺ァこういうののがいーや。分かるか?メーカネス」
その様を上空から観察している男がいた。耳に大量に提げられたピアスを弄りながら口角を上げる。
「そうですねぇ…ここから逆転するシナリオも、力及ばず敗北するシナリオもそれぞれ良さがありますしね。まあこの世界線は後者なわけですけど…ってエクスさん!だからこそ今が貴方の出番ですよ!」
彼の周りをふよふよと飛ぶ衛星のような機械───メーカネスは催促するように言う。
「分かってる分かってる。ンじゃ、いっちょカマしますか」
金髪を風に靡かせつつ青年───エクスはわざとらしく肩を回した。そして手を高く掲げ、
「神の仰せのままに───ッと」
勢いよく振り下ろした。
「な、なに!?」
すると、轟音と共にアインベルムの亡骸に巨大な光の柱が立った。
そこに何処からか声が響く。
「勇者アインベルムよ、そなたの気高い覚悟に免じてもう一度だけ機会を与えよう」
やがて光はおさまると、そこには、
「バカな!ありえん!!」
光の鎧を見に纏った無傷のアインベルムの姿があった。
「僕は!勇者だ!希望だ!再び授かったこの命全てを賭けて君を今度こそ倒す!みんな!着いてきてくれ!」
「アイン…!」
仲間たちの目に光が再び灯る。
アインベルムは再び魔王に対峙した。
「これが勇者の奇跡か…!だが、再び貴様を討てば良い話だ!」
魔王は剣を構えた。そして勇者と魔王は剣を繰り返し交えた。仲間達は手出し出来ず、二人を眺めていた。
勝負は全くの互角に見えたが、段々と魔王が押していく。勇者は石柱の根元にまで追い詰められてしまった。その時。
石柱がひび割れて倒れた。
「む!?」
倒れた先には魔王の姿があった。
「は!」
魔王は一瞥すると、拳を振り上げて石柱を打ち砕いた。
しかし、その一瞬が命取りであった。視線を戻すとそこに勇者の姿は無かった。
砕け散った石柱の礫の彼方から、勇者が飛び出してきた。
「ここだ!」
「なんだと!?」
遂に、アインベルムの剣は魔王の胸を穿いた。
「くぅ…ここまで、か」
そう呟く魔王の口角はどういう訳か僅かに上がっている。
魔王の鎧の隙間から禍々しい光が溢れる。
「吹き飛べ!」
「自爆か!」
「みんな!私の後ろに立って!」
その時、聖女が叫んだ。
「わ、分かった!」
仲間たちは急いで彼女の後ろに隠れた。
アインベルムは大切な剣を眺め僅かに逡巡したが、やがて手放し、彼女の後ろに転がり込んだ。
「ディバインシールド!」
「おお…」
仲間たちは思わず息を漏らす。巨大な光の盾が聖女の前に現れた。次の瞬間、
「我と共に果てよ!」
そう叫ぶと魔王は爆発した。はじける闇。鳴り響く轟音。吹き荒れる豪風。その全てを盾は受け止める。
しかし、その波は長時間続いた。どれほど時間が経ったのか、という頃、遂に、
「う、限界かも…やっぱり私じゃ…」
体力に限界が来たようで盾にヒビが入り出した。
「俺たちがついてる!」
仲間の一人が聖女の肩を掴んだ。
「俺の魔力を使え!なんとしても生き延びるぞ!」
仲間は聖女に魔力を注ぐ。絶え絶えだった聖女はその言葉に目を見開く。
「私も!」
「オイラも役に立たせとくれ!」
仲間たちは続々と聖女を支えた。
「僕も、生き延びる!」
勇者もその背中を支えた。
「み、みんな…!」
アインベルムの死の際に目尻に溜まった涙を、彼女は感涙として頬を伝わせた。
「うん!絶対!絶対に!生きよう!」
盾のヒビはいつの間にか無くなっていた。
やがて闇は晴れた。
「や、やった…」
「へへ、か、勝った…!勝ったぞ!」
全員がこの戦いを生き延びたことに歓喜し、仲間たちはお互いに抱きしめあうのだった。
「奇跡の連続だった!」
勇者はその拳を掲げた。
「まるで、神様が私に力を貸してくれたみたいで…」
聖女は自らの掌を眺めて微笑んだ。
☆☆☆☆☆
時は遡って。
「勇者アインベルムよ、そなたの気高い覚悟に免じてもう一度だけ機会を与えよう」
口元を手で覆いながらエクスは言う。そして手を下ろすと、
「さて、鎧のオマケ付きでアイン君を生き返らせたぜ」
地上を眺めながら呟いた。
「これでどうよ?」
「はい、えーと───あ、まだです!このままではまたしても負けます!」
「ぐにゃー」
これ見よがしに倒れ込むような姿勢をとる。
「空中でそれやっても変な感じになるだけですよ」
「何パー?」
「えー、78%負けます」
「んーもうちょい手ぇ貸すか」
エクスはツッコミのために跳ね起き上がるような動きを空中でおこなって身体を起こす。下を見てみると、
勇者と魔王が剣を交えている。勇者側が劣勢のようだ。
「っつっても、どう手を貸したもんか…」
段々石柱の方に追い込まれていく。それに目をつけたエクスは、
「これでどうだ?」
指を鳴らした。すると、石柱に亀裂が入った。
「おお!勝率がイッキに増しました!」
「よーしラッキー、これでいいだろ。ハッピーエンド。チャンチャン、と」
「あ!あれ!?全員生存する確率は0のままです!なんで!?」
メーカネスは慌てた様子だ。
「おっとぉ?…んー、なるほどな」
エクスははるか遠方へと目を凝らした。
「行くぞ、メーカネス」
「どちらへ?」
「ハッピーエンド後に鬱オチの蛇足篇は要らないんだわ」
そう言うと、エクスは目を凝らした方へ跳んだ。
☆☆☆☆☆
「魔王サマから通信が入った!魔王サマが敗れたようだ!」
「なんだと!?ワシらで仇を討つのだ!」
魔王軍の残党達は喧喧諤諤と話し合っていた。
「ヤツらとて満身創痍に違いあるまい!そこを討つのだ!」
そこに、
「お邪魔〜」
飄々とした男が舞い込んで来た。
「な、なんだ貴様は!?」
「テコ入れ」
「は?…ぐわっ!」
次々と残党達を打ち倒していく。
「ぐ!だが、貴様が勇者の仲間だとすれば残念だったな!」
「あ?」
「魔王様はヤツらごとその身をもって滅するおつもりだ!」
次の瞬間、勇者達がいる方から激しい閃光───と言っても色は黒々としている───が広がった。
「おい!やべぇぞ!」
エクスも流石に焦っている。
「せ、生存確率、0.000000023%…」
メーカネスは絶望した様子だ。
「助けに行…」
「させねぇゾ!」
「どんだけ居んだよ!っお!?」
闇の波動はエクス達の居る場所にまで届いた。エクスとメーカネスは残党達と共に吹き飛ばされてしまった。
☆☆☆☆☆
「やべぇ!どんだけ寝てた!?おい、起きろ!」
「ひゃん!どこ触って!ってエクスさん!」
未だ爆風は吹き続けているようだ。周りを見渡すと、残党達は全員息絶えているようだ。
「急いで向かうぞ!」
爆心地上空に来ると、一箇所だけ闇が阻まれている場所がある。
「あそこです!」
メーカネスは叫んだ。見ると、聖女がシールドを張っているようだ。しかしながら、彼女は満身創痍といったようで、盾には既に大きな亀裂が入っている。
「あいよ!っと」
エクスは手を振り上げる。
「依然として私たちはあれから何もしてないので生存確率は0.000000023%のままで…」
しかし、
「ん!…いや、いいや」
その手を振り下ろすことは無かった。
「ほえ?」
「俺が出るまでもなさそうだ」
「俺たちがついてる!」
聖女を仲間の一人が支え出した。
「私も!」
「オイラも役に立たせとくれ!」
仲間全員が一丸となって、盾を支えた。
「で、でも、生存確率は…」
「これで勝った方がドラマチックだろ?」
エクスは空中に胡座をかいた。
☆☆☆☆☆
やがて闇は晴れた。
「な?言ったろ」
エクスは眼下で抱きしめ合う勇者達を眺めて笑う。
「…」
「俺らはあくまで最終手段だからな。立ち向かおうとする人間に目をかけすぎるっつぅのも無粋だろ?」
「…そうですね」
「んじゃ、ミッションコンプリートっつーことで」
そしてエクス達は光と共に消えた。
☆☆☆☆☆
これはあるべきシナリオを描くために、物語の強制力として神の意志の元遣わされる存在。彼らを描く物語である。
ご覧いただきありがとうございました。