訪問者たち
「はい!今日もやってきました!え〜… 今、夜中の2時ですね。今僕たちがいるのは、殺人があった後、人がいないはずなのに声がするとか、居るはずのない人影を見たなど数々の心霊現象が起きると言われている曰く付きの家になります。さっそく家の中に入ってみたいと思います」
「僕たちのコンセプトは「相手が霊であっても敬意を払う」です。やっぱりね、相手はもともと人間ですからね、失礼のないよう接したいと思います」
「失礼します!僕たちは心霊現象を撮るためにキチンと家主さんに了解を得てこちらに伺わせてもらってます!よろしくお願いします!YouTuberのライアンです!お邪魔します!」
「タイガです。お邪魔しまーす」
「ウサコでーす。お邪魔しまーす」
「…うわ、この箪笥…。1、2、…引き出しが7つありますね。開けてみましょう。何か包みが入っていますね…タイガ、カメラまわして!」
「オケ」
「すみませ〜ん。ここ撮らせて下さ〜い」
「……なんかさっきまで人が暮らしていた雰囲気がありますね…」
「ここって寝たきりのお婆さんをお爺さんが殺して、お爺さんはそこで首吊って死んだんだって」
「えっ!こわ!ちゃんと手を合わせとこ」
。。。
おっと…失礼しました。
…この若者等に集中していまして、気づくのが遅くなりました。
それに今夜の雨。
雨音は外の音を遮断してしまいますからね。もちろん中からの音も…ですが。
こんばんは。
恐怖の語り部、菊池彼岸と申します。
私の住む家は、高い三角屋根にアールの窓や、嵌め込みの大きなステンドグラスがある古い洋館なのです。
素敵でしょう?
しかし古い家なりの大変さがありましてね、雨の日は湿気のせいで木枠が歪んで窓が開かなくなったりするのです。
まあ、それも味わいとして付き合っておりますが。
古い洋館というのは、側から見たらとても興味がそそられるのかもしれません。
…ですので、よくイタズラでチャイムを鳴らされるのですよ。
人が住んでいようといないとお構いなし。
こちらの都合など、考えてはいただけないようです。
ほら、また今も…
そうだ。
今夜はこちらの話にしましょう。
今宵の恐怖、貴方のお気に召すと嬉しいのですが。
。。。
最近、霊に対して真摯に向き合っているとか、敬意を払うとか、丁寧に話していれば必ずわかってくれると言う人がいますが、残念ながらそれはありえません。
それは自分たちの都合の良いように解釈しているだけの事です。
わかりやすく例えましょうか?
生きた人間と同じならば、マフィアに同じ事をしても無事に帰って来れると思いますか?礼儀作法を守れば許されると?言葉が通じると?
この世に留まる霊たちは、あの世に行けない、もしくはあの世に行く事を拒んでいるような方々です。
その方たちは礼儀など通用しないのですよ。
その結果どうなるか。
どんな事態を招くか…
先程のYouTuber。
困った事に彼等はまだ気づいていないのです。
すでに自分たちはこの世に生を持つ者たちを脅かす側に立っているという事に。