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white:white  作者: もい
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第三章 【業喚ぶ声】 九

読んでくださっている方がいたら、ありがとうございます。

初めての方、ありがとうございます。


永らくお待たせいたしました。

ちゃんと完結はさせるつもりですので、ゆっくりとお待ちいただけたら幸いです。



「死に場所、だァ?」

「うん。理由は──これを見てもらえばわかりますよ」


そういってエレンは薄い革の鎧を外し、服をまくり始める。


「オマエ、何してっ」

「ほら、ここです」


そういって露わになった白い肌の腹部には──淡く紫色に光る陣が描かれていた。

魔術式──!


「これは、私が祖国にいるころに刻まれた呪いなんです。16回目の誕生日を迎えた日の正午、この呪いは発動して、この世界の大陸の一つを消し飛ばす」

「……なンだそりゃァ。誰がそんなこと……」

「……わかりません。その人は、黒い髪で青い瞳の人。その人は一言、こう言っていきました。『これでお前はアイツと出会う。歯車の一つとして』、と」


「サイファー……! クソ野郎がっ……」


紫色の光は、まるでエレンの鼓動と同期するように輝いていた。

複雑に描かれた魔法陣。その解除方法も、どんな魔術術式なのかも知識が足りない刀哉にはわからなかった。


「オイ、エレン。オマエ俺と一緒に来い」

「え?」

「オマエのその魔術術式を消滅させる方法を探す」


魔術術式を消滅させる方法──

今の刀哉にはまず不可能なことだ。魔術の知識のかけらもない刀哉に、初歩の魔法を正式な手順を踏んで構築しろ、と言ってもできるわけがない。今までの刀哉の魔法は精霊を超える圧倒的な魔力で強制的に従わせてきたに過ぎない。

そんな刀哉に魔術術式が破壊できるのか──現時点では、不可能である。

だが、サイファーとの一戦により、魔術というもののあり方を刀哉は考えた。

このまま無理やり魔術を行使していてもサイファーにはけっして勝てない。


「俺はサイファーを倒すための魔法を探す。ついでにお前の魔術術式を消滅させれるような魔術、もしくは解呪の方法を探してやるよ。ついでに、な」

「……でも、それじゃあトーヤさんに迷惑がかかってしまいます……」


エレンはこういう奴だ。

何も考えていないようで、本当は他人のことを常に優先させるような──優しすぎて、いらだつタイプ。


「うるせぇよ。迷惑だァ? ンなこと思ってたらはなっからこんなこと言わねェよバァカ」

「……でも」

「でもじゃねェ。いいから俺と来い。ぜってェその魔術術式、解呪してやる」


巻き込んだ、という責からか。

それとも単純に放っておけなくなったからか──どちらにせよ、決めた。

自分が救えるのなら、せめてこの手の中にあるものだけでも救って見せようと。


「さぁ、行こうぜ」

「は、はいっ」

「ンで? オマエラいつまで隠れてんだァ?」

「ば、ばれてるようだねニキくん」

「ですねえ……」

「テメーらそんなンで隠れた気になってンのかよ?」


気配でバレバレ。まあ別に聞かれて困るような話もしてないし、追求する気はさほどないのだけれど。


「さァて、行くぞ。次の国に」

「はい!」




◇◇◇




「しかしまァ、お前便利だな」

『そういってくれると助かるよ。ま、暇つぶしの一環さ。きみたち人間がどういう結末を迎えるのか、個人的……というか個龍的に気になってね』

「楽しむのはいいけどよ。下手したらこの世界が消えさっちまうンだぜ」


この世界が消える。もちろん最悪の場合だが。

過去に破滅が現れた時とはまるで状況が違う。

再び現れた破滅に加えて、影を名乗る俺とうり二つの男、サイファー。

そして、今度の救世主は、間抜けにも屋上から落ちてこの世界にやってきた、性格最悪な高校生ときたもんだ。


「この世界の行く末か……それを決めるのが、この面子かよ」


ニキ、エレン、イルフ。

ソフィアはまあ、除外で。


ギルドランクでいえばまだまだ新米。

の割には曲者揃いのメンツだ。

アルトフィリス教団の使者、イルフ。

おそらく相当な魔力と強力な術を持ってるだろう。パーティでいうなら後衛。


ヒザキ老人の孫、ニキ。剣術に関してはまあまあ。前衛向きだ。

同じく破壊術式をかけられた少女、エレンも前衛。


この二人はまあ、ギルドランク通りの実力といったところだろうか。


「ま、なんとかするしかねェよなあ……」


メインの太刀はヒザキ老人が打ってくれた。

銘は(くすのき)

楓の素材も若干混じり、鞘に関してはほぼ楓そのものだ。

若干デザインが変わっているが。

しかし夜桜と同様の仕様にはなっているが、刀身は美しい鋼色。


「これなら、いける」


ただ、自身の力も向上させておかなければ。


「二度目の敗北は死、しかねェ」

「えっトーヤさんしんじゃだめですよ!」

「トーヤ殿が死ぬわけなかろう」

「こ、こまります……」


「死ぬわけねーだろテメェらあほか」

『茶番してるとこわるいんだけどねえ……もうすぐシンに着くよ。戦闘準備よろしく』

「はァ? いきなり攻撃してくるようなとこなのかよ」

『いやー、前にこの辺飛んでたら砲撃喰らっちゃって……』

「そりゃテメェがドラゴンなんだからじゃねえのかよ」


シンの奴らだって自分の領地にドラゴンが飛んできたら追い払おうとするだろうに。


「船は一応出てて交流はあるだろォ? なら大丈夫じゃねェの」

『それならいいんだけどね……ただ、君らが乗ってるのはドラゴンなんだよねえ……』

「あー……」


『さあ、シンが見えた。準備はいいかい? 行くよ!』




さあ、行こう。

始まりの地へ。


己の使命。力。


この世界の業。


そのすべてがシンにある。

ならば、この世界を救う術も──そこにあるはずだ。






いざ、魔族の地、シンへ。


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