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white:white  作者: もい
17/34

第二章 【都の戦火】 八

なんとか更新…

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第二章、長くてごめんなさい。

一向にタイトルに行き着かない…




 「うぐ……」


 呻き声と共に目が覚める。眩い光に顔をしかめた。

 意識は完全に覚醒したが、自分が何故見知らぬベッドにいるのか把握できない刀哉である。


 「どこだここ……つか、俺ァ一体……」


 そこまで言って思い出す。

 城まで来て、国王と話して、それで、それでーー


 「……オゥ……なんてこったァ……つか、誰が俺を着替えさせたんだァ?」


 うん。わかってる。わかってんだよ。この城の中の使用人は女性しかいないことを。

 それでも現実から逃げたい時がある。


 「うぁ、無理。気まずい。……逃げるかァ」


 のそりとベッドから這い出る。

 逃げるとは言ったが、困ったことに服が無い。バスローブもどきを着ているのだが、ずっと着ていた制服が無い。

 刀哉は決められた制服をしっかり着る性格ではなかったので、この世界に来た時の服装は、黒のスラックスとワイシャツ、そして黒のパーカーである。

 それなりに愛着もあるし、この世界の服はコスプレみたいで抵抗がある。なんとかして取り返したい刀哉だった。


 「しかし……どこにあるか分からねェよなァ」


 とにかくデカい。城ってだけあってデカい。そしてここがどこかさえわからない。つまり、現在刀哉は身動きが取れない状態なのだ。


 「外に出るにしても……このカッコじゃ無理があるしよォ……着替えはねェのかなっとォ」


 言ってるそばから発見。

 ベッドの傍の棚に置かれた黒い服。というよりダークグレーか。刀哉の着ていた制服ではないようだ。

 辺りを見回しても、他に服は無いようなので、仕方なくその服に手を伸ばして着る事にする。


 「……なんか神父みてェな服だな……まァ文句は言ってられねェんだが。……さて、どうするか」


 気配を探ってみたところ、部屋の外、ドアの前に二人兵士がいる。そして楓は依然曲がったまま。できるなら手放したくない刀なのだが……。

 武器になりそうなのは魔力だけ。別に問題はないのだが、下手に問題を起こして指名手配でもされたらかなわない。


 「残るは窓かァ。しかし……高ェな。高いところは若干トラウマになってんだけど……仕方ねェ、行くか」


 窓を開け放ち、ーー飛ぶ。


 「来い、風」


 その一言で刀哉を覆うように不自然な風が集まる。

 ーー魔法の風だ。


 落下する速度は徐々に緩やかになり、地面に着く頃には落下の衝撃を感じさせない程ゆっくり降り立っていた。


 「幸い旅の荷物はあったしなァ。武器屋はともかく、加工屋なんてあンのか?」


 これからの行動に思いを馳せながら、衛兵に見つからないよう城門を抜ける。


 街は朝ということもあり、それなりの活気があった。しかし、その顔はどこか不安の色に染まっているような気がする。

 やはり、敵が攻めてきているという事実が不安を煽っているのだろうか。


 ーーと、余所見をしていたせいで誰かにぶつかった。


 「っとォ、……大丈夫かァ? 悪ィな。余所見してた」


 ぶつかったのは女性。というより少女といった方がいいだろうか。

 深い青色の長い髪。あどけなさの残る顔。そしてーー同じく深い青色の目。

 白い修道服もどきに身を包んだ彼女は、刀哉の手を借りて立ち上がった。


 「あ、ありがとうございます。すみませんでした……私抜けてる所があるので」

 「まァ、余所見してた俺も悪ィんだ。じゃ、気ィ付けて歩けよォ」

 「あ、はい……あっ! ちょ、ちょっと待って下さい!」


 立ち去ろうとした所で修道女に呼び止められる。


 「あァ? どうかしたかァ?」

 「えっと……最近変わったことはありませんか? たとえば……異世界から人間が訪れた、とか」


 「……知らねェな。生憎この街に来たばっかりでよォ」

 「そうですか……ありがとうございます。では」


 一礼して修道女は去っていく。一体何なのか。


 「……何を知ってやがる?」


 何か厄介事の匂いがする。

 各地を回っているようなので、縁があればまた会う事もあるだろう。しかし、今の目的はシンに向かう事。構ってはいられない。


 「とりあえず……武器屋に行ってみるかァ」


 今は楓を直すことが先決。

 まずは武器屋で直せるか聞いてみる事にした。











 「ちゃーす」


 見て回った限り、武器屋は何件もあった。しかし、刀哉は他の武器屋よりも、喧騒から外れたところにひっそりと建つ、この武器屋が気になった。


 「いらっしゃい。何をお探しで?」


 人の良さそうな青年が刀哉を迎える。店を経営するにはまだ若い。息子かアルバイターのどちらかだろう。


 「いや、買いに来た訳じゃァねェんだ。この刀、直せねェかなと思ってよォ」


 腰に提げていた楓をカウンターの上に置く。青年はそれを手にとって抜こうとしたがーーなかなか抜けないようだ。


 とは言え、抜けない訳ではないので、なんとか引き抜く事ができた。


 「刀身が曲がっててよォ。これじゃ戦えねェんだ」

 「なるほど……厄介ですね。少々お待ちを。……おーい! 親父!」


 青年がカウンターの奥へ声を飛ばす。

 しばらくすると、初老の男性が暖簾のれんをくぐって出てきた。


 「どうしたレイ。クレームか?」

 「違うよ。この刀を直して欲しいんだって」

 「どれ……」


 抜き身の刀を持ち上げて色々な角度から見ている。時折、ため息のような声を漏らしながら。


 「なるほどな。直してみよう。しかし……どうやったら刀が曲がるんだ?」

 「魔法を纏わせたら、ちょっとなァ」

 「となると、魔力加工をせねばならんかな?」

 「あァ、頼む。金はどのくらいかかるんだァ?」


 刀哉にとっては一番の心配どころだ。武器というのは総じて高いイメージがある。今の持ち合わせでは若干不安だ。


 「うむ、直すだけならそこまでかからんのだがな……魔力加工の度合いにもよるの」

 「出来るだけ高いレベルで頼みてェんだが……そうするといくらだァ?」

 「最高レベルで金貨十枚になるの」


 持ち合わせの金を超えた。

 しかし、これからも使うことを考えると、出来るだけ高いレベルの魔力加工が欲しい。

 ……ギルドで稼いでくるか。


 「……じゃァそれで頼む。頭金として五万……じゃねェ、金貨五枚分置いてく。いつまでに出来る?」

 「そうだの……明日の昼までには出来上がるだろう」

 「りょーかい。ンじゃ、頼むぜェ」


 ジャラジャラと銅貨と銀貨を落とす。

 残りは二万と七千。つまり手元には銀貨五枚と銅貨が二十枚だ。

 刀の残金も払わなければならないし、路銀も少し心許ない。シンに行くための移動手段も欲しいし、食料だって買わなければならない。


 ギルドで依頼を受けるべく、刀哉は武器屋を後にした。




 「武器がねェ。つーことは魔法がメインになる訳だァ。ちっと面倒だが……問題ねェな」


 ギルドに向かって歩きながら、自分の戦力を確認する。魔力自体はもう手足のように使えるし、魔法もほぼ完璧だ。


 「魔力で刀を作ってもいいしなァ」


 刀という確たる物があった方がやりやすいのは確かだがーーこればっかりはもう仕方がない。


 「さて、依頼受けるかァ」


 ギルドのドアを開けて、カウンターに向かう。ギルドで依頼を受けるのはこれが初めてである。


 「依頼を受けてェんだが」

 「はい、ありがとうございます。失礼ですが、ランクは?」

 「Dだ」

 「Dランクですと、あちらの依頼からお選びいただけます」


 受付嬢は,壁に掛かっている一番端のボードを指す。


 「依頼をお決めになりましたら、依頼用紙を剥がしてこちらにお持ちください」


 言われた通りにボードへと向かう。ボードには五種類毎に区切ってあり、それぞれ紙が貼り付けてあった。


 雑事には向いてないから、まずパス。


 護衛は時間が掛かりすぎる……パス。


 運搬も同様に時間が掛かるため、パス。


 採集は……細かいことが嫌いなのでパス。


 結局、討伐しかなかった。討伐の欄もそれなりの数の依頼がある。D−からC−まで。どうやらDランクの中でもC−なら受けることが出来るらしい。とは言え、C−の中でも簡単な方のようだ。

 刀哉はC−の依頼に目を通す。


 「ゴブリン十五匹の討伐、ねェ……報酬は、金貨四枚かァ。悪くねェな。これにしよう」


 即座に決めて、依頼用紙を剥がす。今から行っても、昼には終わりそうだ。そうすればもう一つくらい受けれるだろう。

 依頼用紙を受付嬢に渡し、依頼を受ける旨を伝える。


 「ではプレートをお見せいただけますか?」

 「あァ」


 貨幣袋の中に一緒に入れておいたプレートを出して受付嬢に見せる。


 「……はい、確認いたしました。ではこちらの依頼を受諾いたしました。こちらが資料と地図になります。清算時に返却をしてください。ご検討をお祈りします」

 「報告はこっちにすればいいんだよなァ?」

 「はい。討伐と採集に限り、こちらでの清算になります」



 「りょーかいっとォ。ンじゃ、ゴブリン狩りに行きますかァ」







 まるでイチゴ狩りに行くような気軽さで、討伐に向かう刀哉だった。


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