第二章 【都の戦火】 七
下のリンクが邪魔、とのことでしたので消させていただきました。
今回は少々粗が目立ちますね…難しい。
感想、評価、指摘等お待ちしております。
「なんだ、結局ギルド登録したのか」
「あァ。生きて行くには金が必要。一番手っ取り早いのはギルドだったからよォ」
馬車の中で雑談中。旅ももう二日目に突入していた。
魔物も盗賊も出てこないので、至って平和だ。ちらりと外を見れば、既に空は赤く染まり始めていた。
(姫様、やはりトーヤを引き込むのは難しいのでは……)
(いいえ、問題ありません。お金ならギルド以上に出す自信があります)
セルティとしては一般の近衛騎士の三倍の給金くらいは支払う予定だ。しかし刀哉は安定した暮らしに興味が無く、目的もあるが故にセルティには靡かないだろう。
このことをセルティが知るのはもう少し後になる。
「長ェな……後どんくらいあるンだ?」
「このスピードで行けば夜には着くな。もうしばらくだ」
かたかたと揺れる馬車。
やることもなく、暇なのでセルティとラディーナは雑談中。
刀哉は楓の手入れを始めていた。
(……なンか刀身曲がってねェか? もしかして……いや、もしかしなくてもアレのせいかァ)
あの時使った刀に炎を纏わせる魔法。炎が白く見えるほどの高熱に曝されたせいで、微妙に曲がってしまった。
いかに職人が鍛え上げた業物だとしても、数千度の高熱には耐えきれなかった。
(どうしたモンかなァ……)
斬れない事は無いが、限りなく斬りにくい。
仕方ないので新しい刀を買うしかないと諦めた。
「なァ、魔法を纏わせても大丈夫な刀ってねェかな?」
「うーん……私には分かりませんね。ラディの方が詳しいんじゃないですか?」
そう言ってラディの方を見る。
「私は魔法を使えないからよく分からないが……そういう加工をされた武器ならあるはずだ。魔法騎士隊はそんな武器を使ってた筈だ」
「まァ、王都行ってから考えりゃァいいか」
王都まで魔物も出そうにねェしな、とこころの中で付け加え、自己完結した。
空はもう薄暗い。
ふと、街道の先を見ると、明かりがぽつりぽつりと見え始めている。
「お、アレじゃねェか?」
刀哉の言葉に反応して、二人が目を向ける。
「あぁ、あれだ。やっと着いたな」
「早く行きましょう!」
セルティが急かす。
刀哉は馬車のスピードを上げて、王都を目指した。
明かりが見える範囲まで近づいていた事もあって、割とすぐに王都まで着いた。が、しかし中の雰囲気がどうもおかしい。
静かすぎるのだ。
「あれ……どうしたんでしょう。いつもなら門は空いているのに」
「門番はいるみてェだな」
馬車を引いて門番のもとへ近付く。門番の顔もどことなく厳しい気がする。
「なンかあったのか?」
「ザカが攻めてきたとの報告が入った。今報告があった地へ部隊を出しているが、しばらくは厳戒体制が続くな」
(ルクの事かァ。まァ、先遣隊は潰したし、こっちの兵士が向かったと知ればザカも退かざるを得ねェだろォな)
先遣隊を潰されたというのはもうザカの耳にも入っているだろうし、ジュレルの兵も既にルク付近まで近付いていることだろう。
わざわざ体勢が整った所に飛び込むような事は、やられに行くと同義。ザカに残されたのは退くという選択だけ。
「で、入っていいかァ?」
「身分を証明出来るものと積み荷を見せろ」
刀哉は作ったばかりのギルドカードを見せる。
「ギルドの冒険者か……積み荷は?」
「積み荷って訳じゃねェが……ま、見れば分かるだろォ」
警備兵は刀哉の言葉に首を傾げながらも、荷台の中を見る。
「し、失礼しました!」
セルの門番と同じ反応だ。
若干面白かった。
「通って良いぞ……それと、その方たちは至急城にお連れするように」
「城だな。わかった」
警備兵が開いた門をくぐり、街中に入る。
厳戒体制のせいか、どうにも活気が無い。
「厳戒体制、ねェ……」
「とりあえず王城まで行きましょう。馬車を置けるところもありますので」
「……俺も行くのかァ?」
特に何もないというのに行って大丈夫なのか。
「来て下さらないんですか……?」
「……行くよ」
なし崩し的に行くことになってしまった。
(……流されやすいのか? 俺ァ)
◇◇◇
「只今帰りました、お父様」
「セルティ……無事だったか」
セルティに付いていったら、髭だらけのオジサンがいた。
お父様って事は、あの髭オヤジが国王で間違いないんだろう。
さすが国王。威厳がバリバリだ。
「こちらはトーヤ・サナダ様。私の命の恩人です」
「そんなつもりはねェんだが……」
さりげなく否定。事実としては馬車に乗れるというだけで、面倒な人間を排除しただけなのだが。
「そうかそうか! 娘の恩人か! ならばなにか礼をせねばなるまい! なにか欲しい物はあるかね?」
「あー……いや、大丈夫ッす」
「遠慮などするな! なにせ娘の恩人だからな!」
テンション高くて絡みずらい。苦手だ。こういう人。
「ンじゃ、刀が欲しいンすけど。魔力加工のされた奴が」
「刀、か。ふむ、探してみよう」
なんだかんだで貰ってしまう刀哉だった。
「わざわざここまで来て疲れてるだろう? 今日は泊まっていくといい」
「いや、そこまで世話ンなる訳には……」
「泊まっていきますよね♪」
「……ハイ、泊まらせてイタダキマス」
逆らってはいけないーーそう本能が訴えかけてきた。
自分はセルティに何かしたのか。何もしてない筈なのにそう思ってしまうのは何故だろう。
(仕方ねェ。今日は泊まっていくかァ)
明日すぐに出れば問題ない、ということにした。
「では食事にしましょうか♪」
なぜセルティの機嫌がいいのか……さっぱりわからなかった。
「あー……生き返るゥ……」
いわれるがままに風呂に連れて行かれ、せっかくだから入っているのだが……デカい。
まるで銭湯のようだ。
絶対に個人で使うものではないと思う。
「……ン?」
カラカラカラーーとドアが開く音。誰か入ってきたのだろうか。
「お湯加減はどうですか?」
「ーーブッ!」
セルティだった。
「おま、何でここに!?」
「あら? なにかおかしいですか?」
絶対わかってる。わかっててやってる。
一応、前は隠しているものの、防衛ラインは布一枚。ふくよかな膨らみのラインが見えてしまっている。
そして歩くたびに揺れる薄い布ーー。
湯煙の間から覗く白い肢体。僅かに上気した肌は、赤みを帯びている。
「こっち来ンなっ! いや、俺が出るっ」
「私と一緒に入るのはお嫌ですか?」
「嫌じゃねェが無理っ」
出来る限り見ないように湯船から上がろうとする。
「まぁまぁ♪ 今出てもトーヤさんのお着替えはありませんよ? 今洗濯中ですから」
「なっ……」
今出ればもれなくマッパ。
そのまま城の中を歩く訳にもいかない。下手すれば着替えを持ってきた使用人(もれなく女性)に鉢合わせする。
「逃げ道は、ねェのか……」
「ですから一緒に入りましょう?」
「オーケーわかった。だが、こっちに来るなよ?」
「ふふふー♪ それは出来ません♪」
ふにっ
「ア゛ーーっ!」
背中にっ! 背中になにか柔らかいモノがっ!
「あらあら。どうなされました?」
「やめっ、離れてくれェっ!」
もがくが、抱きつく力が案外強くて離れられない。その間にも柔らかな感触は続く。
「離しません♪」
「ア゛ーーっ! ……」
「あら? トーヤさん?」
いきなり力が抜けてぐったりした刀哉。
そーっと顔を見てみると……
「気を失っているんですか……? ちょっと、やりすぎちゃいましたかね?」
ちょっとどころではない。
刀哉は使用人(女性)に着替えさせられて、部屋へ運ばれた。
翌日まで目を覚ます事はなかったという。