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white:white  作者: もい
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第二章 【都の戦火】 五



感想いただきました。

なるほど確かに。納得です。

ありがとうございました。



とりあえず、頑張ります。





 日が山に隠れようとした時、森が切れて街が見えた。


 「あれかァ?」

 「そうですね。あれがセルです。王都程ではないですけど、結構大きくて賑わった街です」

 「そんじゃ、とっとと入って宿取っちまおうかァ」


 馬を驚かせて走らせる。

 十分もしないうちに街に着いた。


 「商人か?」


 街の門番が、馬車を止めるように指示して刀哉に聞いてきた。

 街に入るための検問のようなものらしい。


 「いいやァ、旅人だよ」

 「積み荷を見ても?」

 「構わねェよ。積み荷っつーより人だがなァ」


 門番は刀哉の言葉に首を傾げながらも、荷台の中を見る。


 「し、失礼しましたっ」


 慌てて幌を閉じて戻ってくる門番。

 それもそのはず、一介の警備兵が姫にそう容易く目通り出来るはずがないのだから。


 「通って良いぞ」

 「身分証とかいらねェのか?」


 異世界の住人である刀哉に身分証などあるはずもないのだが、素通りするのも変だし、姫を連れていることで特に身分を疑われる事もないだろうと思っての行為だった。


 「問題ない。行け」


 予想通りすんなり通されて、馬車を引いて街に入る。


 「とりあえず宿探さねェとな……それより先に馬車を置く所かァ?」

 「馬車を置くところならすぐ右だ。あそこに見えるだろう?」


 馬車置き場を刀哉が探しているのを見て、ラディが教えてくれる。

 言われた通りに右を見ると、なるほど、たしかに馬車置き場があった。刀哉は馬車を引いて店先に立っていた、恰幅のいい男に話しかける。


 「1日預かるので幾らになるンだ?」

 「はい、銅貨十枚になります」


 メタボに聞いた言葉をそっくり後ろに返す。刀哉もそこそこのお金はあるのだが、レートがさっぱりわからない。そしてこの馬車は刀哉のものじゃない。

 言われれば半分くらいは出すつもりだが、さすが姫。快く出してくれた。


 もっとも、出したのはラディだが。


 「さァて、次は宿だなァ。ラディ、どっか知ってるかァ?」

 「我々が泊まったのはあの宿だな」


 ラディが指差した方を見る。


 ……デカい。とてつもなくデカい。あんなので泊まっていく客がいるのか。

 あぁ、ここにいた。


 「馬鹿か」

 「な、なんだと!?」

 「あんな宿泊まれる訳ねェだろ。金がねェんだよ。……いや、お前らは好きにしてくれ。俺ァ安い宿探す」


 そういえばコイツらは金持ちだった。すっかり忘れていたよ。


 刀哉はラディ達を置いて宿を探しに出た。




 「行ってしまいましたね……」

 「それはそうでしょう。あそこは金貨五枚出さなければ泊まれませんから」

 「仕方がありません。私たちは先に休ませてもらいましょうか」


 姫とその護衛は街を見て回る訳でもなく、すぐ宿へ向かった。




 「ふぅん……なる程なァ。大体レートが分かってきた」


 店先に並んだ商品を見て、頭の中で変換する。


 銅貨一枚が百円程度。


 銀貨一枚が五千円。


 金貨一枚が一万円といった所だろう。


 殆ど出回っていないが、白金貨と言うのもあり、これは一枚十万円くらいである。


 理解した所で、自分の所持金を見てみた。


 銅貨が三十枚。銀貨が十五枚。金貨は無し。日本円に換算すると七万八千円といったところか。


 「随分多いなァ……シラフィ、いくら使わないって言っても仕事ね対価にしちゃァ多いんじゃねェの?」


 働いたのは四日に満たない。だというのに四日で八万円と言うのはーー破格だ。


 「また返しに行くかァ。……問題はどうやって稼ぐかだよなァ……あ?」


 丁度目に止まった看板。

 そこにはギルドの文字。


 「ギルド、ねェ。話だけ聞いてみるかァ」


 刀哉はすぐ扉を開けた。


 中に入ってみると、すぐ前にカウンターがあった。カウンターには二人の女性が立っている。受付とその補助のようだ。補助は雑用も兼ねているらしい。

 後は端の方にショップがある程度か。


 「なァ、ギルドについての説明ってしてもらえるのかァ?」

 「はい。立って話すのもなんですからお座りください」


 受付嬢はカウンター前の椅子を刀哉に勧める。


 「あァ、悪ィな」

 「ではご説明を致しましょうか?」

 「頼む」


 受付嬢は、はい、と頷き説明を始める。


 「ギルドとは一般の人が依頼をする場所になります。職種としましては、雑事、討伐、護衛、採集、運搬の五種類からなっておりまして、基本的に登録されますと、全ての仕事を受けることが可能です。登録に関しては、ギルド側が試験を行い、その上での認定となります。ランクはD−からのスタートですね。ランクを上げるためには相応の力が必要になりますので、その方の力の証明が必要です。次に依頼ですが、基本的にギルドは依頼を斡旋するだけですので、依頼を受けた後は当事者同士の問題になります。こちらは関与いたしません。ランクがB+以上になりますと、ギルドから依頼が行くこともあります。……基本的な説明は以上ですが何か質問は?」

 「登録するための試験の内容が知りてェ」


 なにせ今の刀哉には時間がない。明日セルティに着いていかなければ足が無くなるのだ。


 「こちらが用意した職員との戦闘になります。職員が十分な力を持っていると認識すれば合格です」

 「なるほどなァ。……そんじゃァ、登録頼む」


 戦闘だけでいいなら簡単だ。すぐに終わる。


 「かしこまりました。安全措置として、武器はこちらの中からお選びください。防具等はそのままで宜しいですよ。準備が出来たらお声をーー」

 「これでいい。さっさと始めようぜェ」


 武器が立て掛けられた箱の中から刀哉が選んだのは、シャムシールと呼ばれる曲刀。残念ながら刀は無かった。


 「……はい。かしこまりました。こちらへどうぞ」


 カウンターの隣の扉から奥へ案内される。

 進んだ先は、外になっていて、周りを壁で囲まれた小さな闘技場に見える。


 「職員がすぐに参ります。少々お待ちください」


 受付嬢が戻っていく。

 隙を潰すために、シャムシールを抜いた。

 シャムシールを見て刀哉は思う。なるほど、たしかに安全だ。刃は潰されているため切れることはない。当たり所が悪くない限り怪我を負うことも無いだろう。


 「お待たせしました。こちらが試験官になります」

 「はっはっは! ようこそギルドへ! 試験官のガイルだ! 早速始めようか?」


 出て来たのは、熊のような男。頭は短く刈り込んで、顎髭を生やしたガタイのいい男。

 得物は両手剣のようだ。

 一言で言えばーーむさ苦しい。


 「ンじゃ始めようぜェ」

 「それでは合図を頼む」


 ガイルが受付嬢に開始の合図をするように言った。


 「はい。それでは両者、構えてーー始めっ」


 始め、が聞こえた瞬間、ガイルが動く。

 踏み込み、即座に刀哉へと接近してきた。


 「ふんっ」


 上段に構えた両手剣が一気に振り落とされる。これではいかに刃を潰しているとは言え、骨が砕けてしまう。


 しかしそんな一直線の攻撃が刀哉に当たる筈も無く、半身でかわす。


 「オイオイ、そんなモン振り落としたら死ぬぜェ?」

 「加減はしているよ! はっはっは!」


 笑いながら軽々と両手剣を振り回す熊。はっきり言って、これは悪夢だ。


 「まァ、敵じゃねェけどな」


 一転、反撃へーー


 横薙ぎに振るわれた両手剣をかわして、がら空きの胴へシャムシールを入れる。

 振り抜き、背後に回り、背中にもう一撃。

 鎧が甲高い金属音を放った。


 「ぐっ……むぅ、二撃も入れられてしまったか……合格だ。名は?」


 二撃入れた事で、ガイルは止まった。どうやらこれで試験は終わり。合格らしい。


 「トーヤ・サナダ」

 「うむ。トーヤ君、奥で受付を済ませたまえ」


 ガイルは受付嬢に連れて行くように指示する。それに倣って刀哉は受付嬢に着いていった。


 「トーヤ・サナダ様。ランクはDからのスタートになります。こちらのプレートが身分証の代わりになりますので無くさないようお願いします。再発行はできません」

 「スタートはD−からじゃねェのか?」

 「通常ですとそうなのですが、ガイルさんがDからのスタートにする、と仰られたので」


 ガイルは刀哉の力が相当なものだと判断したが、さすがに高すぎるランクにする訳にもいかないのでDからのスタートにしたらしい。


 「これで登録は終了です。依頼をお受けになりますか?」

 「いいや、それより、安い宿知らねェか?」










 「ここかァ」


 受付嬢に聞いた宿に着いた。たしかに、安さが売りのようだ。風呂はなんとか付いているようだが、ほとんど素泊まり。食事は無いようだ。


 「一泊頼む」

 「銅貨十枚。トイレはそこ右に曲がった所。風呂はその前」


 素っ気ない。


 部屋の番号が書かれた鍵を受け取って部屋に向かう。

 荷物を下ろし、部屋に鍵を書けて風呂に向かった。


 食事は既に済ませてあるので、後は寝るだけ、といったところか。


 「あー……1日1回は風呂に入りてェもんだ。……ま、無理かァ」


 ダラダラと湯船に浸かるような事はせずに、すぐ上がった。

 部屋に戻ってベッドに入ったが、悲しい事実に気付いた刀哉。


 「……ベッド、超硬ェ……」


 これは朝起きたら間違いなく体が痛くなるパターンだ……そう思いながらも、もうどうしようもない。

 寝るしか無かった。


 「……あァ?」


 せっかく寝ようとしたのに、下の階がバタバタうるさい。

 しかもそのバタバタした音は階段を駆け上がりーー


 「嫌な予感だァ」


 刀哉の部屋の扉を乱暴に開け放った。


 「マズいことになった……!」

 「……それ俺に関係あんの?」


 非常に面倒だった。今から寝ようとした所に寝れなくなる要因が増えようとしているのだから。

 ため息を一つ、面倒くさげな目を、飛び込んできたラディに向けた。


 その目は、次にラディが告げる言葉で開かれることになる。








 「姫様が……さらわれた」


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