第二章 【都の戦火】 三
戦闘シーンが苦手な割に多く取ってみたり。
グロ成分配合。
とはいえ文才がないため上手く書けない…!
何故だ!
何がいけないんだぁぁぁっ!
「晴れた、なァ」
「そうですねー」
「…………」
あの後、すぐに雨は止んで晴れ間が見えた。すぐとはいっても、時刻は既に日暮れ。もうじきに夜になるだろう。
「あら? ラディ、どうかしましたか?」
「……いえ」
馬車が動き始めた辺りから、ずっと黙り込んだままのラディ。会話は刀哉とセルティのみ。
「どうしたんだァ? 言いたいことがあるなら言えばいいじゃねェか」
「……別に、何もない」
明らかに拗ねた態度。それでは何もないと言っていても何かありますと言っているようなものだ。
「なンだよ気持ち悪ィなァ。それで隠してるつもりかァ? 俺が気に入らねェんだろ?」
「……ふん。そうだ。お前が気に入らない。どこの誰かも分からない人間。それに見たことのない白い髪……貴様何者だ?」
易々と言い当てられて、もう隠せないと悟ったのか。
「へェ……この国には白髪はいねェのか。それに言ったろォ? 記憶喪失なンだよ」
「ふざけるな……そんな見え見えの嘘で私が騙されるとでも……」
「ラディ! 止めなさい!」
ラディの声に被さってセルティの声が響く。
「しかしっ!」
「私が決めたことですから私が責任を持ちます。トーヤさんは悪い人ではありません」
きっぱりと言い切る。何を根拠に言っているのかは分からないが、好都合であるから刀哉は特に口を挟まない。
(まァ……どうせこの赤い目見たら考えも変わるんだろうけどなァ。とりあえず、王都までは行かねェと)
「なぜそんな事が分かるのですか! どこの国かも分からない……ガザの手の者かもしれないのですぞ!」
「口を慎みなさい! さっき貴方も聞いたでしょう! トーヤさんの目的は世界を回ることのみだと!」
「口では何とでも言えます! この者は……」
ますますヒートアップしていく馬車の中。その中で不自然なまでに冷静さを保つ刀哉。その目は言い争う二人を捉えてはいなかった。
「……こりゃァ……オイ、お二人さん? 言い争ってる隙はねェみたいだぞォ?」
「なんだと? ……っ! 何だ!?」
馬の嘶きと、揺れる馬車。その揺れはだんだんと収まっていく。
「馬車が……止まったのですか? 何故……」
「外見ろよ。面白いくらいの魔物の群れだぜェ」
日差しを遮るためのカーテンを開けて二人は外を見た。
「これは……ファングの群れだと? それにワームまで……」
「これは……とても私たちでは……」
悲観するラディとセルティ。しかし刀哉は思う。
(たかだか2、30匹に何ビビってンだァ? 殺気にしても大した強さじゃねェみてェなのによォ)
狼型の魔物、ファング一匹に対して、ただの成人男性1人では太刀打ちできない。ラディくらいの実力ならば数匹の相手は出来るだろうが、群れを相手にするとなれば話は別。
ギルドランクがAランク以上の人間でなければ群など相手にはできない。
ラディの実力はC程度。良くてBくらいだろう。
「仕方ねェな。タダで運んでもらうのもアレだしよォ……ちょっと片付けてくるかァ」
ぽそりと、しかし確実にセルティとラディの耳に届くように呟く。
「ま、待て! 死ぬ気か!?」
「危険すぎます! ここは一旦退いて……」
「ンなことしても意味ねェだろォが。ここで片付けといた方が面倒が減る」
「しかし……」
なおも食い下がるセルティ。その目は必死だ。
その判断は間違いではない。いくら強いと言えど、ファング25匹とワーム5匹を相手にするなど無謀極まりない。
この魔物の群れを撃退するだけでAランク、完全に全滅するにはAの上位の実力くらいは持っていなくては不可能である。
AとA+では実力に開きがある。
「まァ見とけ。少なくともそこの騎士どのよりは頼りになるぜェ?」
刀哉は楓を掴んで馬車を降りる。周りを取り囲むファングたちは、なんね例外もなく涎を垂らして唸っている。
「来いよ雑魚がァ」
「ガァッ」
刀哉が言葉を放った瞬間、ファングの群れの一部が飛びかかる。
数にして、5匹。
「ハッ……頭悪ィなァ……“初曲・閃花”」
跳ねるようなステップ。
相反するように流れる白刃。
それはまるで紙を裂くように、ファングの体を易々と切り裂く。体を真っ二つにしたファングの血が地面に落ちる前に、次のファングへと白刃が襲いかかる。
ぶしゃっ
飛びかかったファングの2匹目は頭から胴まで、真っ直ぐに両断され、重力に従って落ちる。
頭蓋さえも容易く切り裂き、脳漿と血が混じった液体を派手に散らせる。
残ったファングの牙はするりとかわす。
「オイオイオイッ! テメェラの牙はそんなモンかァ!?」
嘲りの声が響く。
仲間を殺されたというのに、ファング達は戦意を失わない。むしろ逆にいきり立っている様でもある。
「まァ、姫サマとその他が待ってるみてェだからな。とっとと片付けさせてもらうぜェ」
両手から右手に楓を持ち替えて、左手をす、と伸ばす。
伸ばした左手に絡みついて伸びる、黒い魔力。それは段々と形を成していき、あの時と同じように黒い刀へと変貌する。
「“協奏曲・千年桜”」
無形の構え。
両手に持った刀をだらりと垂らし、飛びかかるのを待つ。
「来いよォ……」
「ガァァッ」
さっきよりも圧倒的に多い数が飛びかかる。
正面、左右、背後ーーありとあらゆる方向から刀哉を噛み砕こうと襲いかかってきた。
ーー刀哉は動かない。
ファング達の中の一匹の牙が刀哉の喉にえぐり込もうとした瞬間ーー叩きつけるような音が響いた。
それは斬撃の音。体のバネを最大限利用した上に、魔力で強化した肉体で限界以上の速度で斬撃を打ち出した結果。瞬間的に数十の斬撃を繰り出す“協奏曲・千年桜”
一瞬にしてみれば全てを叩き斬る、その技の由来は斬撃を繰り出す際に生まれる刀の煌めきとーー
「次……来いよォ」
ーー遅れて降り注ぐ血の雨によるもの。
刀哉自身には血の一滴も掛かっていないが、足元は肉塊と血だけ。
ファングたちはさすがに恐怖を覚え、後ずさる。
ワームたちは危険を察知したのか、既に逃げ去った後だ。
しかし、ファングたちはそうはいかない。狼型の魔物であるファングはプライドが高い。逃げ出そうものなら他のファングから排斥されるだろう。
故に、負けるのを覚悟で立ち向かってくるのだ。
「ハッハァ! いーい度胸だァ! そうこなくっちゃなァ!」
刀を振り上げ、飛びかかってくるファングに応戦する。
しかし、ただ飛びかかってくるだけのファングでは、刀哉にかすり傷一つ付けることすら叶わない。
刀哉の黒い刀が腹を裂き、首を斬り飛ばし、右手の楓が体を二つに裂いて血飛沫を飛ばし、心臓を貫く。
勝負は、あっと言う間に付いた。
「ま、数が多いだけのことはあったなァ。久々に運動したぜェ」
黒刀を魔力へと戻し霧散させ、楓を血振りしてから鞘へと戻す。
馬車へ戻ると、唖然とした顔が二つ。ラディとセルティだ。
「なンだよ?」
「き、貴様は一体……」
「何者、ですか……?」
二人で一文になっている。割と息のあった二人のようだ。
「あァ? 記憶喪失の旅人だっつってんだろォ?」
「馬鹿な! 旅人があんな戦闘能力をーー」
「あんな膨大な魔力をーー」
「「持ってるわけがない(んです)!」」
息がピッタリだ。まるでコントのよう。
「ンなこと言われてもなァ……知らねェよ。どうせ王都までたァ。気楽に行こうぜェ。気楽によォ」
「むう……」
(ラディ。ここは諦めましょう)
(し、しかし……)
(これだけの力を持っている者を旅人やギルドに入れておくのはもったいないです。わが国が『保護』しなければ)
(……了解しました)
(いくらあなたが気に入らないと言えど、心象を良くすれば篭絡するのが楽になります。そのためには……わかりますね?)
(はっ! 了解しました!)
「取り敢えずよォ、日も暮れちまったし、このあたりで野営しねェか?」
「そうですね! それがいいです!」
「…………」
言われてもなかなか行動に移せない男、ラディ。
こいつも大概プライドが高い。
(ラディ?)
にっこり黒い微笑み、セルティ。ラディは本能的に逆らってはならない相手だと認識。
「そ、そうしよう! いい判断だ!」
「……? あァ、じゃァ、火でも起こさねェとなァ」
そう言って馬車の外へと出て行く刀哉。セルティもそれに続く。
ラディは馬車の中で一人、ため息をついた。
我らの姫は、腹黒い。
うわぁぁんっ
感想が…
感想がこないよう…
元気が無くなっていく…
頑張って更新した僕に救いの手を!