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white:white  作者: もい
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第二章 【都の戦火】 二

大変お待たせしました。

ライブが近いせいであまり筆が進まなくて…


コメントが欲しいよぅ…




 「クッソ……どこに行ったんだァ?」


 伸びる道は一本。しかしその両側には鬱蒼とした森が続いている。まさかこの中に入ったのか……出会ったときの事を思い出した。


 「そォいやァ、あんときも……」


 出会ったのは森の中。その後、村に行くために街道へ出て……


 「……記憶が正しければ、こっちだよなァ」


 侵入者を拒むように生い茂った雑草たち。しかし一部だけ踏み倒されたような跡がある。それも、まだ新しい。恐らくエリーが入っていった跡だろう。

 刀哉はその雑草を更に踏み分けて森の中へと進む。少し進むと雑草たちの背も低くなり、脛より少し下の高さになった。

 それを踏み倒した、跡。


 「村人がこンなトコ通る筈がねェよなァ……間違いねェ。エリーはこっちだ」


 雑草を踏みしめ、進む。しばらく歩いたところで妙な音がしてきた。


 「こいつァ……水の音? 川でも流れてンのかァ?」


 疑問に思いながらも進む。その音の元はすぐに分かった。


 「泉、ッてヤツか?」


 少し高い岩の壁。そこから流れ落ちる水が音の原因だろう。あまり高くないせいで水の勢いもない。滝と呼ぶには規模が小さかった。


 「エリー……」


 泉のすぐそばの樹に体をもたれさせて眠っているエリーがいた。

 ここまで走ってきて疲れたのだろう。やはり、まだ子供だった。


 「オマエを旅には連れてけねェんだよ……危険だからなァ。旅も……俺も。だから待っててくれよ。帰るからよォ……必ず」


 眠っているエリーを起こさないように抱き上げて、元来た道を戻る。

 誰かがこの少女を守ってあげなければならない。しかしそれはーー自分ではない。


 「よっ……とォ。……エリー、聞こえてねェだろうけど、オマエにだけ俺ァ誓う。約束よりも、重い誓いを。オマエがあの村で俺を待っていてくれるなら……必ず帰る。絶対だ」


 馬から必要な物だけを袋に詰めて、エリーを馬に固定する。


 「じゃァな……頼んだぜェ、馬」


 軽く馬を叩いて村の方へと進ませる。後はシラフィがなんとかしてくれるだろう。


 「さァて、まずは次の街、セルだなァ……馬がねェのが少し痛ェが……まァなんとかなるだろォ」


 刀を腰に下げ、袋を担ぐ。

 未だ終わりの見えない道を、刀哉は進み始めた。










◇◇◇










 「平和、だなァ……この雨を除けば、よォ」


 エリーを帰して暫くは晴天が続いていたものの、日が若干傾いて来た頃に曇り始め、すぐに雨が降ってきた。

 シラフィが用意してくれた防水外套が無ければ今頃びしょ濡れになっていたところだ。


 「ったく……先は長げェっつーのに雨ごときに足止めされるなんてよォ」


 刀も袋も外套の中。歩きにくい限りだ。


 「仕方ねェな。どっか寝れるトコ探すかァ」


 目の前に広がる街道には雨宿り出来そうな所など無い。

 残されたのは森の中。あてもなくさまようのは気が引けるが、それ以外道がないのもまた事実。


 「……はァ」


 溜め息一つ。気を取り直して寝床を探そうとした刀哉の耳に、この場に相応しくない音が届いた。


 「足音……? いや、馬車かァ?」


 水を弾く音。それに重なるようにして響く馬のいななき。音からしてーー二台。


 大体状況を把握した所で、破砕音と馬の大きな嘶き。


 「馬車を破壊された、かァ? クク、いーいチャンスじゃねェかァ」


 袋を雨の届かない気の枝に引っ掛けて、腰に下げていた刀を左手に持ち、音のした方へと走る。

 霧で視界が遮られていたせいで、目視する事はできなかったが、案外馬車は近かった。


 近くまで来てみれば状況がよくわかる。

 無傷の馬車と、片方の車輪を破壊された馬車。無傷の馬車付近にいるのは、簡素な鎧に、片手剣を握ったがたいのいい男が二人。

 もう一方の破壊された馬車付近にいるのは、立派な鎧を身に付けて、片手でも両手でも扱えるロングソードを握った金髪の男。


 大方貴族を護衛している兵士が何かだろう。それが道中盗賊に襲われた、と。

 こちらの姿はまだ気付かれていない。


 「貴様らっ! 一体何が目的だっ!」

 「ククク……これから死ぬ奴に教えたって仕方がねぇだろうが!」

 「っ!」


 盗賊の片割れが護衛に襲いかかる。振り上げた片手剣は護衛に防がれる。しかし、その横からもう1人の盗賊が護衛の頭を狙って片手剣を振り落とした。

 「ぐっ……くそっ……」


 間一髪、泥水に構うことなく転がって避けたのだが、額に傷が入った。血が大量に吹き出て護衛の視界を奪う。


 「じゃあな。ご苦労さん」

 「くそぉぉっ!」


 護衛の頭に片手剣が振り落とされる。

 しかし、飛んだのは振り落とされた片手剣の刃。


 「2対1ッつーのは関心しねェなァ……男なら1対1でやったらどうなんだァ?」


 振り落とされた片手剣を斬り飛ばしたのは刀哉の刀。


 「なっ……なんだテメェはっ!」

 「さっきから聞いてりゃァよォ……随分とテンプレなセリフばっか吐くじゃねェか。雑魚丸出しなンだよ。今なら見逃してやるから消えろ。十秒待つ」


 そう言って刀哉は刀を納め、カウントダウンを始める。


 「十……九……」

 「この野郎……ふざけた真似しやがって……殺るぞ!」


 二人のうち、まだ武器を持った方が刀哉に斬りかかる。しかしそれは空を切った。


 「七……六……あァ、面倒だなァ。五四三二一ゼロ。はいカウントダウン終わり。サヨウナラ」


 引き抜き、斬る。

 鎧を纏っているにも関わらず、易々と切り裂かれ絶命。


 「ひっ……うぁぁぁぁっ」


 どちゃりと死体が泥水に落ちたのを見て、もう1人は悲鳴を上げ、逃げようとする。


 「逃がすと思うかァ?」

 「がっ」


 背後から心臓を一突き。

 刀を体から引き抜くと同時に、男は支えを失って泥水の中へ落ちる。流れ出した血が雨と混ざって流れていく。


 「終わりっとォ……よォ、大丈夫かァ?」

 「ああ、すまない……大丈夫だ」

 「嘘吐けェ。血だらけじゃねェか。まァ額っつーのは派手に血が出るモンだけどよォ、さすがに血止めくらいしねェとマズいだろォ?」


 兵士の額からはまだ血が溢れ出てきている。袋は木に引っかけたままなので手当てが出来るような物は持ち合わせていない。


 「馬車ン中に布が血止めはねェのか?」

 「い、いや……無いんだ」


 「ラディ! その怪我は!?」

 「ひ、姫! 出て来てはいけません!」


 馬車から飛び出して来たのは、シンプルだが高貴さを漂わせるドレスを着た美少女。


 「姫ェ? ……まァいいか。ラディとか言ったなァ」

 「あ、ああ」

 「俺の荷物の中に手当てする道具があるからよォ、取ってくる。そこ動くんじゃねェぞ」

 「わ、わかった……」


 返事を聞くや否や、刀哉は走り出した。その姿はすぐに霧と雨で見えなくなる。


 「ラディ……あの方は?」

 「わかりません……突然現れてあの二人を倒し、私を助けたのは事実です……おそらく、あの若さながら相当な実力者かと」


 ラディの言葉からは若干の悔しさが漂っていた。守りきれなかったこと、他人の手を借りてしまったことを情けなく思っているのだ。


 「そうですか……味方だと思いますか?」

 「それも……わかりません。敵ではないように思いますが、味方と呼ぶには少々……」

 「そうですか……では、少し様子を見ましょう」


 ラディが返事を返す前に、刀哉が姿を現した。

 手にはさっきまで持っていなかった袋を携えて。


 「血、まだ止まってねェみてェだな……馬車ン中でやるか。ラディ、入れよ。姫さんも」

 「あ、ああ……」


 ラディは言われるがままに馬車へと入る。続いて姫、最後に刀哉。


 「ラディ、傷見せろ。……あァ、ンな深くはねェみたいだなァ。少し痛ェかもしれねェが耐えろ」


 袋から布と血止め、それと水を取り出し、ラディを寝かせる。

 水で傷口を洗い流し、布で水を拭き取る。そしてすぐに血止めを塗り、布を巻く。


 「よォし、もォいいだろ。どうだァ?」

 「い、痛くない……? すまない、助かった」

 「あァ、気にすんな。変わりと言っちゃァなんだけどよォ、姫ってどういう事だァ」


 助けた事と引き換えだと言わんばかりに刀哉は問いかける。


 「そ、それは……」

 「ラディ。……私から話します。この方になら話しても問題ないでしょう」

 「……わかりました」


 姫が刀哉に向き直る。


 「私は」

 「っと、その前に自己紹介くらいしとこうかァ。俺ァ真田刀哉。刀哉が名前だァ。この先にあるルクの村で世話ンなってた」

 「トーヤさんですね。私はセルティ・ジュレル・カルディナと申します。このジュレルの姫です」

 「へェ……で、その姫サマがこンなトコに何の用だァ?」


 王都から相当離れた辺境に何故。不自然すぎる。


 「隣のザカへ行く為です。戦争が起きそうだと言うことで外交のために」

 「へェ……なるほどなァ。入れ違いだったみてェだな」

 「? 何がですか?」

 「ルクの村はザカ兵に襲われた。四日前に早馬が行ったんだが、姫サマの耳には入らず、そのままこっちに。おそらくザカ兵はルクの村を滅ぼした後、村で姫サマを待ち構えて暗殺でもする算段だったんだろォ」


 セルティの目が驚愕の色に染まる。外交の為だった思っていた旅が、自ら罠に向かっている旅だったのだから。


 「そ、それでルクの村は!?」

 「一人、犠牲が出たが、大半は無事だ。姫サマ、王都に引き返しな。もうすぐザカ兵の本隊が来るし、王都の兵も来る。ここは戦争になるからよォ」

 「そうですね……王都へ行かなくては」


 ニヤリと、刀哉が笑う。


 「ンでよォ、ものは相談なんだが、俺も連れて行ってくれねェか? 歩いて行くのはさすがに辛いんだよ」

 「そんなこと出来るわけがっ……」

 「ラディ。いいのです。……刀哉さん、ではご一緒しましょう」

 「悪ィな。頼むぜェ」


 セルティとラディ、そして刀哉は荷物を盗賊の馬車へと積み替えで、来た道を引き返した。





 (ククク……馬車ゲットォ)



 心の中で刀哉の笑いが響いたのだった。


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