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white:white  作者: もい
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プロローグ


 今、落ちている。










 屋上に呼び出された。

 それはラブレターなんて青春を感じさせるモノなんかじゃなくて、別の意味で青春を感じさせる手紙ーー所謂果たし状だった。

 学校の中でも、外でも、ある程度名の知れた問題児。それが俺。

 売られた喧嘩は買うし、売られなくても買う。

 街の喧嘩・・じゃ負けたことなんてない。


 家が道場だってだけで武術と剣術を叩き込まれた。嫌だったが、使う機会は腐るほどあったから仕方なく習っていただけ。


 使う機会ーー所謂イジメ。


 明らかに日本人離れした容姿のせいで蔑まれた。蔑んだ奴は1人残らずボコボコにしたが。


 色素欠乏症、つまりアルビノ。

 俺の場合肉体にそこまで影響は無いが、白髪と赤い目のせいで異端扱いされた訳だ。

 そのせいか解らないけど性格もねじ曲がった。


 今回の喧嘩をふっかけて来た奴らもそのせいか類だろう。


 結果からいえば、勝った。

 相手は三人。全員何かしら武器を持っていた。俺は鉄パイプを持ってた奴を最初に叩きのめして武器を奪った後、残る二人を死なない程度に殴り倒した。


 ここまでは全く苦労はなかった。問題はここから。




 フェンスの建て付けが悪いのに気付かず、フェンスに寄っ掛かったらどうなるか。

 当然フェンスは壊れて、寄っ掛かった俺は落ちた。

 何かに捕まろうにもフェンスは壊れて落ちた。周りには何もない。突き出した手は虚空を掴んだだけだった。






 ーー落ちる。


 ここは四階。落ちた体勢も悪い。死ぬだろう。


 来世ではもう少しマシな人間になるように願って……意識を手放した。







◇◇◇






 「あァ……? ここ、どこだァ」


 木漏れ日が眩しい。

 どこかの森の中らしいのだが、こんな森は見たことがない。天国にしては……どうもイメージと違う。


 (俺は……死んだんじゃなかったのかァ?)


 死んだんじゃ無いにしても、ここがどこだか解らない。このままでは遭難……最悪野垂れ死にだ。さすがにそれは避けたい。


 起き上がって体を少し動かしてみたが、異常は無いように思う。むしろ以前より軽くて反応も早い気がする。


 (とりあえず歩いてみるかァ……人がいるかもしれねェ)


 歩き出そうとした時、すぐ近くの草むらが揺れた。


 「なんだァ? ウサギかなんかかァ?」


 もう一度激しく揺れて、何故か人が出てきた。

 まだ小学生程度だろうか。幼い女の子だ。こんな所に、こんな幼い女の子がいると言うことは、近くに街があるのだろう。


 「お……手間が省けたなァ」


 女の子はこっちをに気付いて一瞬ビクッとした。女の子に近付くと、ビクビクした目でこちらを見ながら後ずさった。


 「なンだよ、何もしねェよ。道を聞きてェんだけど、ここから一番近い街ってどうやって行けばいいんだ?」


 女の子は尚もビクビクした目で見てくる。恐らくこの容姿が原因なんだろう……?


 (って、なんでコイツの髪、赤いんだァ? ここ……日本だよなァ?)


 今更だが気付いた。明らかに日常見ている日本人とはかけ離れた容姿をしている。


 (とりあえず……意志の疎通図ってみるかァ)


 地面に座ったままの女の子に目線を合わせるようにしてしゃがむ。


 「俺は真田刀哉ッつーんだ。お前に何かする気は全くねェよ。ただ街に出てェんだ」

 「トーヤ……さん?」

 「あァ。街、どこだか知ってっか?」

 「街は……その、遠いです……ここからじゃ大体100キロ近く、あります……」


 女の子から紡がれた言葉に、刀哉は愕然とする。一体どうなっているのか。


 「なンで学校から落ちて街から100キロも離れてンだよ……それじゃ、お前はどうやってここまで来たんだァ?」

 「えと……私、近くに村があるんです……」

 「村ァ? このご時世に? なンつー村だよ?」

 「ルクの村って言います……」


 ルクの村? 全く聞いたことが無い名前だ。外国か? 俺は外国に飛んだのか? いやでも考えて見ろ。日本語が通じてるって事は日本で合ってるんじゃないのか?


 「なァ、一応聞いておくけどココ、日本だよな?」

 「ニホン……? 何でしょうかそれは……?」


 日本を知らない……外国でも知らない人間の方が少ないこの時代に、日本を知らないだと?


 「ちょっと聞いていいかァ? ここはなんて国なのか教えてくれねェか?」

 「は、はい。えと、この国はジュレルの国と言います。緑豊かな国なんですけど……土地を狙ってくる国のせいで戦争が絶えません……」


 いよいよ聞いたことが無い名前が出てきた。まさか……まさかとは思うが……異世界に飛ばされたのか?

 日本を知らない上に、日本人離れした容姿の女の子。極めつけは何故か意志の疎通が出来る事。いったいどうなっているのか理解できない。


 (とりあえずこの女の子に村までつれてってもらうかァ。情報を集める意味でも現地の人間は貴重だ)


 一通り思案をしてから、この先どうするかを決めた。


 「なァ、どうも俺は迷っちまったみてェなんだ。オマエの村まで連れてってくれねェか?」

 「は、はい! えとエリー・ルーフアです!」

 「あ? あァ。よろしく頼むな」


 エリーに連れられて僅かに草が無くなった道を歩く。


















 なんというか、どうやら俺はーー……異世界に迷い込んだらしい。









こっちはゆっくりの更新になります。

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